クレーム対応の際、「自分のせいではない」という気持ちから、誠意を込めて謝罪できなかったり、焦ってパニックになってしまったりした経験はないでしょうか。そのような態度は、クライアントや顧客に誤解を与え、かえって相手をさらに怒らせる原因となります。本稿では、研修講師として25万人以上にアンガーマネジメントを指導してきた戸田久実氏の著書『アンガーマネジメント大全』(日経ビジネス人文庫)から、意外と多くの人がやってしまう、クレーム対応時に絶対避けたい「火に油を注ぐ」対応例や、怒りを鎮めるための具体的な方法について解説します。

お客様との関係が“余計に”こじれてしまうケース

Q:クレーム対応で余計に相手を怒らせてしまいました

A:最初に誠意ある謝り方をしよう

クレーム対応の際には、まずは気持ちを込めて謝罪すること。そのうえで、お客様の気持ちに共感しながら事実を確認し、今後についての提案をしていきましょう。

クレームを言うとき、顧客側は応対する人に対して「あなたの会社の製品やサービスに問題があった」「あなたはこの組織の人間でしょ」と、会社の代表としての対応を求めています。そのクレームに対して、担当者がきちんと謝罪ができなければ、お客様も、振り上げたこぶしを下げられなくなってしまいます。

そこで謝らない担当者の多くは、心のなかで「わたしの失敗ではない」「わたしの責任ではない」などと思っています。そのため、「担当者から他人事のような対応をされた」「誠意が伝わってこない」と二次クレームになり、揉め事がさらに大きくなってしまうのです。

わたしのもとにも、クレーム対応の相談が数多く寄せられますが、実際に、お客様との関係が大きくこじれてしまったケースとなると、責任者の謝罪では足りず、最終的に役員の人が出るということも少なくありません。クレームが大きくなってしまうときには、図1のようなことをしてしまいがちです。このような対応は、火に油を注いでしまうので、絶対に避けましょう。



図1

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クレーム対応の「流れ」

クレームを受けたときには、まず相手の怒りに振りまわされずに適切な対応をしたいものです。

面と向かっているのであれば、頭を下げて表情や声でも謝罪の気持ちを伝えます。電話であれば「このたびは申し訳ありませんでした」と気持ちを込めて謝りましょう。このとき、何について謝っているのかを明確にしておいてください。そして、謝罪をしたあとに、今後の提案をしていくようにしましょう。

「このたび、○○の不手際でお客様にご迷惑をおかけしてしまいました。大変申し訳ありません」「従業員の対応でご不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」そのあとに、「今後はこのように対応させていただきます」と提案をしていきます。