ステアアップサンデーの伝統
クリスマスプディングは人気のクリスマスモチーフ(中央)。
私が初めて、スチームして作るクリスマスプディングのことを知ったのは、イギリスのホテルで働くようになってからのことでした。写真のマグカップに描かれているプディングは丸い形をしていますが、これは、昔は生地を布に包んで、茹で蒸していたから。今は〈プディングベイスン〉という型を使うので、上が平らな形が一般的です。
クリスマスプディングは家庭で作る場合、〈ステアアップサンデー(Stir up Sunday、混ぜる日曜日)〉に家族揃って作るのが伝統です。12月25日から遡って4週間前の日曜日からがアドベント期間になるのですが、その1週間前の日曜日がステアアップサンデーになります。
私の働いていたホテルではクリスマスプディングを11月から作り始めて熟成させていましたが、私はいつも、クリスマスプディングは11月中には作っておく! と頭に入れています。ステアアップサンデーの日にちを割り出すのはややこしいですし、夫がアメリカ人なので、この時期はサンクスギビング(感謝祭)のために七面鳥も焼かなくてはならず、少々忙しいからです。
でも、クリスマスプディングを12月に入ってから作ったこともあるので、それはそれで大丈夫です。ちなみに、クリスマスが終わったらすぐに次の年のプディングを作って、1年熟成させる人もいるそうですよ!
では、そのステアアップサンデーに家族揃ってどうするのか? もちろんクリスマスプディングを作るのですが、すべての材料をボウルに入れたら、一人ひとり、願い事をしながら、ぐるぐる、ぐるぐると混ぜます。
昔は、指輪や指貫、ボタンや6ペンス銀貨を中に入れて、食べた時に出てきたもので来年の運勢を占ったりもしていたそうです。英国の児童書のクマのパディントンでも、パディントンが銀貨を飲んでしまった! とみんなが大騒ぎをしたクリスマスのエピソードがありました。結局、飲み込んでなかったのですけれどね。
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気長にゆっくり蒸すプディング
スチームするのがクリスマスプディングの特徴。
さて、クリスマスプディングはたくさんの材料が必要ですが、作り方は至って簡単です。どっさりと大量のドライフルーツに、オレンジピール、ブラムリーアップル、砂糖、パン粉、卵、ブランデーやラムなどのお酒、そして、スパイスに、スエット(牛脂)。それらをボウルに入れて混ぜるだけです。
材料も家庭によってそれぞれで、バリエーションがあります。お酒はブランデーだけなのか、ビールも入れるのか。ニンジンは、アーモンドは、ドライイチジクはどうするか、などなど。私は、アーモンドとイチジクを入れると、美味しくなる気がします。
ただ、型の大きさによりますが、それを3〜10時間蒸します。10時間︎ びっくりですよね。今回のレシピでは、蒸す時間は3時間ですが、私が働いていたホテルで作っていたプディングはとても大きかったので、やはり合計10時間ほどは蒸していたと思います。11月に作って熟成させたら、食べる当日に、もう一度蒸します。
私のプディングベイスン。ホーロー、プラスチック、陶器、大きさもさまざま。
また、材料のスエット(牛脂)ですが、イギリスでは、細かくサラサラの状態のものが箱に入って売られていますが、あいにく日本では販売されていません。生の牛脂をその状態にするのも難しいし……ということで、今回はバターをチーズおろし器で削って代用する方法で作ります。冷凍したバターを削るという方法がよくありますが、冷凍したバターを削るのはかなり大変なので、私は今回、キンキンに冷やしたバターを使っています。それでも全く問題なく美味しくできるので、大丈夫です。
最後に、食べるときはブランデーバターかブランデーソースをかけていただきます。私は、ホテルで出していたのがブランデーソースだったので、いつもブランデーソースを作ります。これまで仕事場でも、帰国してから家で作るときも、いつも目分量で作っていたのですが(それがイギリス流!)今回、ソースのレシピを初めて作りました。目分量でも大丈夫、皆さんもそのくらいの大らかな気持ちで作っていただければと思います。
早めに作って熟成させるなど、手間は少しかかりますが、食べてみると本当に美味しいので、ぜひ作ってイギリスを感じていただきたいです! 我が家の娘たちも大好きで、このサイズがあっという間になくなってしまうほどです。日本のデパートで売られている煌びやかなクリスマスケーキに比べたら、何これ︎ という見た目ですが、ずっしりとした重さの中に、美味しさも、ぎゅぎゅっと詰まっています。あ〜、香りだけでも伝わればいいのにな!
町のギフトショップもクリスマス一色。可愛い!