November.22 – November.28, 2024
Saturday Morning
Title.
君の犬
Artist.
キセル いくつもの喪失が淡々としたメロディの中に歌われているこの曲を聴くと無条件に泣いてしまう。ぽつりぽつりと語られる選ばれた言葉は1番、2番と進むごとにあざやかに思い出を甦らせ日本語っていいなあと思わせてくれる。コロナ禍に同じイベントに出ていたキセルのこの曲を聴いて豚汁をすすりながら泣いた。寒くなってくると一日中パジャマで過ごしたい日もある。布団にくるまってダラダラと携帯を眺めたりしているとカメラロールに大量に収められた写真からiPhoneが勝手に「おすすめの写真」を選んでくることがある。かつて一緒に暮らした猫の写真がふと目に止まり、これは冬の光だなあとか色々思い出すわけで懐かしんだりもうさわれないのか……と涙したりする。この曲は「さよなら」だけど悲しみに蓋をしないで広い海に放って手を振ってるみたいな、丸い心になれる曲。
アルバム『magic hour』収録。
Sunday Night
Title.
Just A Gigolo
Artist.
Louis Prima 昔はしょっちゅうスタジオに入ってはそのあと大して呑めないのに安い居酒屋で遅くまで無駄話する事もあった。その頃メンバーの影響もあってよく聴いてたルイ・プリマのこの曲。悪そうなのがかっこよくて、トランペッターらしい歌い方が気持ちいい。「寂しい! 孤独だ!」と不安な気持ちを情けなく嘆き散らしているような歌詞だけど、どこか他人事みたいにこんな陽気で最高にスウィングしている。全ての楽器が会話してるように絡み合ってどんどん盛り上がる。最近ではすっかり酒を覚えてしまったから夜が長い。さっきゴミ出しに行ったら冷たい風が吹き抜けた。ようやく秋なんだなあ。
アルバム『The Wildest !』収録。
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ
音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。
andpremium.jp/book/music-2020
シンガー・ソングライター 中山うり
埼玉県生まれのシンガー・ソングライター。吹奏楽部出身 。アコーディオンやトランペット、ギターなども演奏。映画やドラマ、CM音楽などでも活躍中。2023年アルバム『tempura』をリリース。