朝、寒い浴室で震えながら着替えを済ませ、結露で濡れた窓をふき取る。リビングでは窓際に座るのを避け、エアコンをつけても部屋の温度がなかなか上がらない・・・。

築年数の経った家で暮らす方なら、こんな経験をお持ちではないでしょうか。

こうした住まいの悩みを解決する方法として注目されているのが「断熱リフォーム」です。

今回は、快適な住まいづくりのカギとなる断熱リフォームについて、種類や費用、利用できる補助金制度まで、分かりやすく解説していきます。

1.断熱リフォームでこんな悩みが解決できる

冬場の浴室やトイレ、廊下が寒い

窓際や足元が冷える

窓や壁が結露してカビが生えている

冷暖房が効きにくく電気代が気になる

夏場の2階の部屋が暑い

このような住まいの悩みは、断熱リフォームで解決できます。具体的にどのような効果が期待できるのか、3つのポイントから説明していきましょう。

1-1.断熱リフォームで家の中が快適に

住まいの暑さや寒さの大きな原因が、断熱不足。最近新築された住宅は断熱性が向上していますが、古い家では断熱不足のことが多く、なかには一切断熱について考えられていない「無断熱」の家も少なくありません。

家全体の断熱性能を高めれば、リビングと廊下、浴室やトイレとの温度差が少なくなり快適になります。窓や天井の断熱を行えば、夏場の2階の部屋の暑さも緩和されます。窓の断熱性を上げることで結露しにくくなり、カビの発生が抑えられるのもメリットです。

1-2.断熱リフォームで光熱費も節約できる

断熱性能を高めることで、冷暖房が効きやすくなり、光熱費の節約にもつながります。

東京23区の気候を想定したシミュレーションでは、平成4年の省エネ基準で建てられた一般住宅と、ZEH水準(※)の高度な省エネ住宅で、年間光熱費が約12万円もの差がありました。

【住宅の省エネ性能による年間光熱費の比較】

札幌などの寒冷地(2地域)
東京などの温暖地(6地域)

一般住宅(H4年省エネ基準)

一般的な省エネ住宅(H28年省エネ基準)

高度な省エネ住宅(ZEH基準相当)

約39万円 約28万円
約33万円 約22万円
約21万円 約16万円

※光熱費単価は、電気:26 円 /kWh、ガス:180 円 /㎥、灯油:100 円 /ℓにて計算。太陽光発電による売電は含みません。各数値はシミュレーション用で、実際の光熱費を保証するものではありません。

参考/一般社団法人 住宅生産団体連合会

※ZEH:Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、断熱+省エネ+創エネで住まいで使うエネルギーをゼロ以下にした家を示す。ただし「ZEH水準」の場合、創エネ設備は必要なく、断熱等性能等級5+一次エネルギ消費量等級6の性能を示す。

1-3.断熱リフォームで家族の健康を守る

断熱リフォームは、快適性や経済性だけでなく、健康面でも大きなメリットがあります。

・ヒートショック対策

家の中に温度差があると、「暖かいリビングから廊下に出たとき」「寒い脱衣所で服を脱ぎ、熱い湯船につかったとき」などに急激に血圧が変動。ヒートショックにより、心臓や血管の疾患を引き起こすことがあります。特に高齢者の血圧変動による事故を防ぐためにも、温度差を解消する断熱リフォームは有効です。

ヒートショックとは温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動する等によって起こる健康被害ととらえる事ができます。失神したり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こす事があり、特に冬場に多く見られます。また、高齢者に多いのが特徴です。高齢者の事故に関するデータとアドバイス等 – 消費者庁

・アレルギー対策

アレルギーの原因の一つが、住まいのカビ。断熱リフォームで外気温との差を少なくすれば、結露が抑えられてカビが発生しにくくなり、アレルギー予防になります。

WHOでは冬の室温18℃以上を推奨

世界保険機関(WHO)のガイドラインでは、呼吸器系疾患や心血管疾患のリスクを低減するため、室温を18℃以上に保つことが強く勧告されています。

しかし、日本にはこの世界基準を満たしていない家が多く、朝起きたときの寝室が10℃を下回る家も珍しくありません。

参考/住まいと健康に関するガイドライン – 国土交通省

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2.断熱リフォームの種類と工期

最も効果が高いのは、家全体を対象とした断熱リフォームですが、大掛かりな工事になりコストもかかります。予算の都合で難しい場合は、優先的に改善したい部分をリフォームするとよいでしょう。

築年数が経過した家では、断熱の他にも古さや不具合が気になっている箇所が多いもの。たとえば外壁や室内の壁など補修を検討している箇所があれば、同時に断熱リフォームを行うと効率的です。

2-1.窓の断熱リフォーム

最優先で実施したいのが、窓の断熱リフォームです。家の中で最も暑さや寒さが伝わりやすい部分であり、低コストで大きな効果を期待できます。

築年数の古い住宅では、断熱性の低い単板ガラスやアルミサッシが使われていることがほとんど。その内側にもう一枚のサッシ「内窓」をつけることで、2枚のガラスの間に空気層ができて断熱性が向上します。既存の窓を壊す必要がないため、マンションでも実施しやすいリフォームです。

ただし、二重窓にすると、開閉の手間が2倍になり面倒に感じてしまうことも。掃き出し窓のような開閉頻度の高い窓の場合は、断熱性の高い窓への交換も検討されます。この場合、今ある窓枠を丸ごと壁から撤去すると大掛かりな工事になってしまうので、今ある窓枠の上から新しいサッシをかぶせるカバー工法が一般的です。

内容
工期
内窓の設置 1窓あたり約1時間
断熱性の高い窓に交換(カバー工法) 1窓あたり約1時間

窓リフォームの方法・費用を10の目的別に解説【補助金情報も】

2-2.床の断熱リフォーム

床の断熱リフォームを行えば、冬場、足元から伝わる冷気を抑えることができます。

床下に潜りこめる場合は、床の解体が不要なため、短い工期で済むでしょう。既存の床板を外して断熱材を入れる場合は、床材の解体や再仕上げ工事も必要なため、工期が長くなります。

内容
工期
床下に断熱材を入れる 1~2日
床をはがして断熱材を入れる

+床材の張り替え 
3~6日

床下断熱リフォームの効果は?費用や方法、注意点、補助金情報を解説

2-3.天井の断熱リフォーム

屋根や天井の断熱性能が低いと、夏場に太陽が照りつけ、2階の部屋がサウナのように暑くなりがち。マンションでも最上階の場合、屋上に当たる直射日光で室内が暑くなることがあります。

小屋裏に入れる場合は、そのまま天井の裏側に断熱材を施工できます。天井を剥がして断熱材を施工する場合はコストが高くなってしまうため、内装リフォームやスケルトンリフォームなどのタイミングで行うのがおすすめです。

内容
工期
天井に断熱材を入れる 2〜3日
天井をはがして断熱材を入れる

+天井の張り替え
3~4日

2-4.外壁・屋根の断熱リフォーム

外壁の断熱性が低いと、屋外の暑さや寒さがダイレクトに伝わり、温度差による結露やカビの原因にもなります。外壁材を張り替えるタイミングなら、同時にボード状の断熱材を外張りするリフォームが選択肢の一つとなります。家の外側からの施工になるので、住みながらの工事をしやすいのも特徴です。

また、遮熱塗料・断熱塗料を外壁や屋根に塗ることで、室温を上がりにくくする方法もあります。効果は限定的ですが、塗装のタイミングを迎えている場合は、実施しやすいでしょう。

内容
工期
外壁に断熱材を貼る 2週間~1ヶ月
外壁の断熱塗装 1〜2週間
屋根の断熱塗装 1〜2週間

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2-5.内壁の断熱リフォーム

内壁の断熱リフォームでは、室内の壁の下地をはがして断熱材を入れます。冷暖房の効きの悪さを改善し、すきま風の吹き込みを防止するのに効果的です。

外壁の張り替えと同時に行う断熱リフォームに比べるとコストを抑えられる傾向にありますが、室内側からの施工なので工事範囲によっては仮住まいが必要です。また、断熱材を入れる際に、壁を一度はがしたり、水回り設備を脱着したりする必要があるため、内装リフォームと同時に行うのがよいでしょう。

内容
工期
室内側から断熱材を入れる  2~4日

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