関西で秋を楽しみたいなら、やっぱり京都。春夏秋冬、いつ訪れても美しい街並み・風景を見せてくれる京都ですが、山が真っ赤に色づく紅葉シーズンは別格です。また、歴史を感じる寺社だけでなくカフェや甘味処も充実しています!今回は、京都で220年以上前からある老舗和菓子店の本店を取材しました。
創業は享和3年(1803年)の和菓子屋「鶴屋吉信」
今回訪れた「鶴屋吉信」は、「虎屋」「両口屋是清」と並んで“御三家和菓子”とも呼ばれる超有名店。日本各地の百貨店にも店を構え、「柚餅(ゆうもち)」「京観世(きょうかんぜ)」などの銘菓で知られています。
その本店は、「西陣織」でも有名な西陣エリアにあります。創業は1803年。220年以上もの間、京都の和菓子文化を支えてきました。
本店の入り口には季節によって移り変わるディスプレイが。そのディスプレイはすべて工芸菓子と呼ばれる和菓子で作られているそうです。秋には紅葉、冬になるとクリスマスツリーなど、和洋にこだわらず、通りすがる人に「季節の移ろいを感じてもらうこと」を大切にしているのだとか。
暖簾をくぐり、店舗に入ります。1階が通常の店舗、その奥に2階へ上がるエレベーターがあります。今回の目的は2階にある「菓遊茶屋(かゆうぢゃや)」。めったに見られない和菓子職人の実演が見られるという和菓子カウンターです。
エレベーターで2階に上がると、待ち合いエリアが。こちらのすぐ右手に見えるのが「菓遊茶屋(かゆうぢゃや)」で、半個室のカウンターになっています。風情がありすぎる…!
奥に広がるのが茶寮「お休み処」。「菓遊茶屋(かゆうぢゃや)」で作ってもらった和菓子を茶寮「お休み処」に運び、出来立てで味わえます。
2階にあるのですが、京都らしい中庭をどこからでも眺められます。春夏秋冬、自然の景色や音を感じながら、職人さん手作りの和菓子をいただく…。そんな贅沢な時間が過ごせる空間です。一番奥には茶室もあり、以前はお茶会イベントなどが催されていたようです。
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「菓遊茶屋(かゆうぢゃや)」は、職人さんの技術が間近でみられるライブキッチン!
それでは早速「菓遊茶屋(かゆうぢゃや)」で和菓子を作ってもらいます!
作ってくれるのは、この道43年目という和菓子職人・水江さん。メニューは「お煎茶セット」「お抹茶セット」の2つがあり、セット内容の和菓子は2種類のどちらかを選びます。
ちなみに取材した11月上旬は朱色や黄色のきんとんを紅葉した山に見立てた「綾錦(あやにしき)」と、桃色の菊を表現した「御園菊(みそのぎく)」。和菓子の種類は季節によって異なります。まずは「御園菊(みそのぎく)」から作ってもらいます。
白いこしあんを「こなし」と言われる生地で包みます。
「こなしは、白のこしあんをすごく硬く炊いて、小麦ともち粉をほんの少し入れて、それを蒸して揉んで練り上げたものです。その語源は『作業をこなす』『仕事をこなす』とか…そういうとこからです」
と、2色のこなしを重ねながら和菓子に関する豆知識を流暢に解説する水江さん。
あっという間に綺麗な丸になっていました。今の時代、包あん作業も機械で可能になりましたが、色の異なる生地を重ねて包あんするのは、やはり職人の手作業でしかできません。途中で生地が破れてしまったり、表面にしわができてしまったりするからだそうです。
では、そもそも白と赤を混ぜて桃色の生地を作ればいいのでは…?と思いましたが、重ねてうっすらと桃色にする理由がちゃんとあるんです。それは後々分かるのでお楽しみに!
次の工程が最大の見せ場!真ん中を凹ませたら、ヘラを巧みに操り、菊の花模様を描いていきます。なんと一筆書き。12〜16枚の花を描いていくそうです。何枚にするにしても、花の幅は均一に保つ必要があります。
静止画ではなかなか伝わらない凄さでした
続いて小さな棒を取り出し、花を開いていく作業。そうすることによって重ねた赤と白の生地がグラデーションになり、より自然に近い色合いになるんだとか。わざわざ生地を重ねるのは、和菓子に大切な「自然を表現する」のに必要なんですね。
最後に、黄色の餡を網で押し込みます。
指でギュ。一瞬です
箸でそっと飾ります
これで「御園菊(みそのぎく)」の完成です。「御園」とは京都御所のこと。そこに咲く高貴な菊を模して作られているのだとか。京都御所にも近いこの「鶴屋吉信」本店でぜひ食べてほしい逸品です。できたては「こなし」の生地がよりもっちりしています!