介護サービスを活用して体力的な負担を減らしたくても、今度は「金銭的な負担」が増すため、なかなか利用に踏み切れないという人もいるのではないでしょうか。そこで、介護の金銭的な負担軽減に使える制度を紹介します。芸人の安藤なつ氏と介護ジャーナリスト太田差惠子氏の共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)よりみていきましょう。
〈登場人物紹介〉
●安藤なつ…介護歴約20年。現場のことはある程度わかるけれど、制度やお金のことについて詳しく知りたい。
●太田差惠子…取材歴30年以上の「介護とお金」に詳しい介護ジャーナリスト。費用を抑えるための介護制度や、プロの手の借り方について解説。
安心して!日本では「全員」が医療も介護も公的保険に加入
□病気の費用は「医療保険制度」で負担減
□介護の費用は「介護保険制度」で負担減
安藤:「お金」について気になるので聞いてもいいですか? 身の回りのお世話は、介護サービスを使うということですが、お金ってどのくらいかかるものでしょうか?
太田:介護にかかわるサービスを使うためには、もちろんお金がかかります。でも、日本には、「介護保険制度」というのがあって、介護サービスにかかる費用を補助してくれます。これは、日本に住んでいる40歳以上の人のほぼ全員が使えます。
安藤:そうなんですか!
太田:この制度を使うことで、実際にかかる費用の1割※負担すればOK。たとえば、1万円の介護サービスを使った場合、支払いは1,000円で済みます。
※所得によって、2~3割の場合あり
安藤:ええーーっ! てことは、9,000円もおトクになっちゃうってことですか! おトク感半端ないっす。
太田:もう1つ。これは、「医療保険制度」についても、説明させてください。
高齢になると、当然ながら、病気などで、病院にかかる頻度も高まりますよね。病院にかかったときに、実際に支払う金額は、69歳までは、子ども世代と同じ3割負担ですが、70~74歳は2割、75歳以上になると1割と、負担が軽くなっていきます※。
※所得によって2~3割の場合もあり
安藤:つまり、年齢が上がるほど、費用負担が軽くなるってことか。年を取るほど、費用の負担もきつく感じそうだし、きちんと理解しておくことで、不安が和らぎますね。
太田:さらに、介護費も医療費も人によってそれぞれ、支払い上限額というものが決まっていて、その金額を超えた部分は、戻ってくる制度があります。一定額までは自分で払わなくちゃいけないけど、後は国が何とかしてくれる、ということを覚えておいてください。
安藤:わかりました! ありがとう! 日本という感じですね。
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もう、ムリ…となったあなたを助ける「最後の手段」
□生活保護では「介護費」「医療費」も援助
□親子共倒れにならないために、きちんと助けを求める
安藤:かかるお金は公的な保険でなんとかなるということですが、それでも、介護費用が足りなくなっちゃうってこともありえますよね。
太田:子どものその後の人生を守るためにも、介護費用は親本人のお金でまかなうことが前提とお話ししました。ただ、親のお金で足りないなら、もちろん子どもが出すという方法もありえます。
でも、まだ自分の子どもがいて、教育費が、がっつりかかっているタイミングだとしたら、とてもじゃないけど、援助する余裕はないでしょう。住宅ローンに追われている人もいます。
子どもに援助する経済的ゆとりがない場合、親に「生活保護」の申請をすることも検討しましょう。生活保護は、生活に困窮している人に対し、必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
相談や申請は、親の住む自治体の福祉事務所で行います。本人か家族が申請手続きをします。
安藤:生活保護ですか? ちょっと、後ろめたい感じが……。
太田:確かに、子どもには親に対して扶養義務があります。ですがそれは、あくまでも「自分たちの生活を維持したうえで、かつ親の面倒を見るだけのゆとりがある場合に生じるもの」とされています。自分たちの生活を犠牲にしてまで、親の経済支援をすることは法的に求められていません。
私は実際に、生活保護を申請して親の介護をされている人に何人も会っています。その方たちの親はお金の心配をすることなく、きちんと生活を送られています。家計が苦しいのに資金を援助したり、サービスにかかるお金を節約するために、子どもが仕事を辞めて介護をすれば、今度は、間違いなく子どもの人生が破綻します。
安藤:親も自分のために、子どもが犠牲になったら悲しむかもしれないですよね。
太田:そうです。罪悪感を抱く必要はまったくないです。生活保護を申請することで、医療費や介護サービス費用の負担はなくなるので、子どものこれからの人生を守ることができます。子どもは金銭援助以外の自分にできる方法で、親を支えましょう。
安藤:できることは自分たちで行い、でも家族だけで抱え込まずに、助けを求めることが大切ということですね。
安藤 なつ
メイプル超合金
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト