都市部に実家がある方の場合、不動産の評価が高額となりがちなため、相続税に頭を悩ませることも多々あります。こんなときに「小規模宅地等の特例」を利用するという方法があります。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説します。
「小規模宅地等の特例」の適用で、相続税の課税額を大幅圧縮
都心の実家を相続し、高額の相続税額に驚かれる人々をよく見かけます。実家の土地の相続税を安くする方法に「小規模宅地等の特例」があります。
「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった方が住んでいた家の敷地や、事業を営んでいた土地などを相続した場合、相続税が減額される制度です。
自宅の相続に多額の相続税がかかるとなると、納税資金を用意するために自宅を売却し、相続人が住む場所を失いかねません。そのような事態を防止し、相続人が住む土地や事業を失わないようにするために「小規模宅地等の特例」は用意されています。
この制度は、相続人が別居している場合でも活用することができますが、限度面積が330㎡となっています。
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「家なき子特例」の適用に必要な〈4つの要件〉とは?
独立して長らく実家から離れていた相続人もいるのではないでしょうか。
「小規模宅地等の特例」は配偶者や同居していた親族などへ適用が原則ですが、同居していなくても一定の要件を満たすことで制度が適用される場合があります。それが「家なき子特例」です。「家なき子特例」を適用するためには、4つの要件を満たす必要があります。
1つ目は、亡くなった方に配偶者や同居の相続人がいないこと、つまり被相続人が相続人となる親族の誰とも一緒に暮らしていない必要があります。
例を挙げると、父・母・子どもの3人家族で、父はすでに他界し、1人で家に住んでいた母が亡くなったが、子どもは他県で独立している、といった状況は、この要件に該当しているといえます。
2つ目は、相続開始前の3年間、持ち家に住んだことがない、ということです。
これは、賃貸物件などに住んでいた方が対象となるという意味です。ここでいう「持ち家」とは、相続人本人の持ち家だけでなく、相続人本人の配偶者の持ち家、相続人の3親等以内の親族の持ち家なども含まれるため、注意が必要です。
3つ目は、相続した宅地を、相続開始から10ヵ月間所有し続けていることです。もし売却を考えている場合でも、要件を満たすために、すぐには売却せず所有し続ける必要があります。
4つ目は、相続開始時に相続人が居住している家屋を、これまで1度も所有したことがないことです。
これらの条件を満たせば、家なき子の特例が適用されます。
しかし、もし、相続が発生する前に実家に移り住んでいた場合は、相続人が親名義の家に住んでいた場合、持ち家を持っていることと同じ取り扱いになるため、家なき子の特例は適用されなくなってしまいます。