会社員の毎月のお給料から差し引かれる税金といえば「所得税」と「住民税」の2つであることはみなさんご存じだと思います。「手取り額」ばかり気にしてしまい、差し引かれた金額にあまり目がいかない人も多いのではないでしょうか?
差し引かれているのは税金だけでなく、健康保険料や厚生年金保険料もあります。各種制度が複雑で難しそうに感じることも、関心を持てない要因になっていそうです。しかし一生付き合っていく税金や社会保険制度。それら1つ1つを理解しておくことはとっても大切です。
今回は住民税について取り上げます。年収によって住民税の額が異なることはご存じでしょうか?これから転職やスキルアップによる収入増を考えている人は特に、目指す年収によってどのくらい住民税が差し引かれるのか認識しておくことも大切です。年収ごとの例を挙げていきますので、参考にしてください。
住民税の仕組み
住民税は基本的に所得税と同様に計算します。以下3つに分けて会社員の方の課税の流れを紹介します。
〇STEP1 所得を算出
住民税は「給与所得」に対して課税されます。この給与所得を算出してから住民税の計算がスタートします。会社から支給される金額は「給与収入」であり「給与所得」ではありません。以下の表から「給与所得控除」を差し引いた額が「給与所得」となります。表から分かるように少なくとも55万円は控除することができるのです。
<給与所得控除>
この給与所得を算出してから住民税の計算がスタートします。
〇STEP2 他の所得と合算、損益通算
給与以外にも所得がある場合は原則1つの所得として合算します(合算しない分離課税のものもあります)。また不動産所得などで赤字が生じた場合は給与の黒字と通算することで所得を小さくすることができます。これを損益通算といいます。
ただ、給与所得のみという人が圧倒的に多いと思いますので、その場合、STEP2は省略してSTEP3へ進みましょう。
〇STEP3 所得控除後、税率を乗じる
社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除など、納税者それぞれの状況を考慮した所得控除がある場合は、それらを所得から差し引くことができます。そしてその所得控除後に税率を乗じ、税額を算出します。税率は一律10%です(都道府県民税率6%+市区町村民税率4%)。税率の内訳は自治体によって異なる場合があります。
<住民税計算イメージ>
ちなみに、所得税はその年の所得に応じて税金を納めるのに対し、住民税は前年の所得金額に応じて課税されます。以上のステップで所得金額に応じて課税される部分の住民税が計算されます。
しかし、住民税を構成しているのはこれだけではありません。
住民税には、所得金額に応じて課税される「所得割」と所得金額に関わらず定額で課税される「均等割」があります。つまり、「住民税=所得割+均等割」のイメージとなります。所得割は所得が多くなるほど税額が大きくなるもので、所得税とほぼ同様の計算方法となっています。では、所得税にはない「均等割」とはどのようなものなのでしょうか?
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「均等割」とは?住民税が非課税になる目安は?
お金に関する疑問点
【画像出典元】「stock.adobe.com/naka」
均等割は、一定の所得がある人全員が均等に支払う税金です。原則、道府県民税1000円(年額)、市町村民税3000円で合わせて年間4000円となります。なお復興増税により、2023年度まで1000円加算され年額5000円となっています。また自治体によっては、別途森林環境税などが加算されます(所得税における復興特別所得税は2037年まで課税対象となります)。
住民税はその年の1月1日に住民登録をしていた市区町村が課税することとなっているため、国内に居住地があり一定の所得がある人は均等割を負担することになります。ただし、前年の所得額が一定以下など条件によっては均等割が非課税になる場合もあります。
<均等割の対象になる所得基準 >
(1)控除対象配偶者及び扶養親族がいない人・・・45万円
(2)控除対象配偶者または扶養親族がいる人・・・35万円×家族数(本人+控除対象配偶者+扶養親族数)+31万円
※自治体によって異なる場合があります
つまり、単身世帯だと前年の給与所得が45万円以下の人は均等割が非課税となります。例えば、パート・アルバイトをしている人の場合、100万円が目安となります。
次に、所得に応じて課税される所得割は一般的に以下のようになっています。
<所得割の対象になる所得基準 >
前年中の総所得金額等の合計額が次の式で求めた額以下の人
(1)控除対象配偶者及び扶養親族がいない人・・・45万円
(2)控除対象配偶者または扶養親族がいる人・・・35万円×家族数(本人+控除対象
配偶者+扶養親族数)+42万円
概ね均等割の基準と同じです。よって年収が100万円を超えてくると住民税を納めることになるという1つの目安になるでしょう。