全国のイトーヨーカドーの閉店が相次ぐ2024年。11月24日には、春日部店(埼玉県春日部市)が最後の営業日となった。

同店は、人気アニメ「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパー「サトーココノカドー」のモデルとして知られる。象徴的な店舗までも閉鎖に踏み切った親会社のセブン&アイ・ホールディングス(HD)は、海外企業からの買収提案に揺れている。

看板を一時「サトーココノカドー」に変更

閉店時間となったイトーヨーカドー春日部店。入り口前には多くの人が詰めかけ、記念にとスマートフォンで写真や動画を撮っていた。その様子をSNSに投稿している人もいる。

春日部市のXアカウントは閉店日の11月24日、「開店以来50年以上、市民の生活を支えていただき、そして、たくさんの思い出をありがとうございました」とポストしていた。

同店は1972年に開業し、96年に場所を移して営業を続けてきた。2017年には、屋上の看板を一時「サトーココノカドー」に変更し、話題になった。閉店するまでの最後の5日間は、特設コーナーで「クレヨンしんちゃんフェア」を開催。「サトーココノカドー」のロゴがプリントされた法被やクッキーを販売していた。

長年、地元で親しまれたイトーヨーカドーの店舗は、次々と姿を消している。イトーヨーカドーは26年3月までに、33店舗の閉鎖が決まっているのだ。また25年2月12日には、イトーヨーカドーネットスーパーも営業を終了する。

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創業家も「参戦」

イトーヨーカドーの閉店ラッシュは、セブン&アイHDの事業再編によるものだ。同社は10月の決算発表時、主力のコンビニ事業に注力する方針を明らかにした。

これより前の8月、同社はカナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」から買収を提案されていた。7兆円規模とも言われるその巨額の申し出をめぐり、その後さまざまな動きが出ている。

11月に入ると、セブン&アイHDの創業家が自主買収(MBO)を検討していると複数のメディアが報じた。大手金融機関や投資ファンドから資金を調達し、株式の非公開化を目指すという。

一方のクシュタール側はNHKなどの日本メディアのインタビューで、敵対的買収を否定し、友好的買収を主張。買収提案そのものを引っ込めたわけではなく、今後も駆け引きが続きそうだ。