2009年よりセクシー女優としての活動をスタートさせた、かさいあみ(@andu072)。2019年12月31日に引退した彼女は、その時点ですでに未婚の母として生きる決意を固めていた。現在は地元である福岡県で子育てをしているシングルマザーだが、BL映像作品の脚本・監修・プロデュース、フリー女優連盟発起人、今年6月に立ち上がった映像実演者協議会の理事など、多忙な日々を送っている。
現役時代から精力的に多様な活動をしてきたかさいあみ。想像を超えて「色々あった」彼女の話から、元セクシー女優であり一人の母親でもある女性の“生き方”が見えてくるかもしれない。
◆シングルマザーになる決意をした先にあったもの
――セクシー女優は2019年12月31日をもって引退されています。これはやはり妊娠がきっかけだったのでしょうか。
かさいあみ(以下、かさい):実はその前から「2020年5月に辞めまーす!」と、すでに宣言はしてあったんです。でも宣言の後になって妊娠がわかって……急に未婚の母になって、いきなり休業するのはどうなのかな?と。私はこれまで、女優の仕事を一切休んだことがなかったんですよ。肋骨が折れていてもイベントに出演していたくらい。だからこそ、正直にファンに伝えたうえで12月末をもって引退という形をとらせてもらいました。
――なかなか勇気のいる告白だったのでは?
かさい:でも、私のファンにはガチ恋勢がぜんぜんいなかったので、一切騒がれませんでしたね(笑)。
――出産前からシングルマザーになることを決意していたのですか?
かさい:はい。子どもの父親と結婚は……したかったんですけど、どうにもその人とだと幸せになれなそうだなって(笑)。一人で育てたほうがハッピーな家庭になりそうな気がしたんですよね。産もうと決めたのは、ピルを飲んでいたのにデキたことがわかったから。この子がそこまでして生まれてきたいのなら……という気持ちで覚悟を決めました。
◆SNSが闇に…ツラい時期に寄り添ってくれた人たち
――ピルを服用していても妊娠することってあるんですね。
かさい:年間1000人くらいいるって言われました。意外とある例みたいですよ。それでも、妊娠途中は情緒不安定になることもありました。母から「都心は産むところではないから、帰っておいで」と言われ、妊娠発覚から3か月で地元の福岡に戻ったのですが、10年続けた仕事を辞めたことが、思いのほか自分の中で大きかったんでしょうね。SNSが闇になったりしていました(笑)。
――慌ただしい環境の変化を考えれば、仕方がないと思いますよ。
かさい:そんな中で、心に寄り添ってくれた人たちがいっぱいいたんですよ。三代目葵マリーさん、佐倉絆、阿部乃みく、向理来……その他大勢の女優、男優さんたち。距離は遠く離れていても、みんなで私を励まして助けてくれました。
◆「元セクシー女優のシンママ」で誹謗中傷も
――素晴らしき業界の絆ですね。
かさい:あとは、ファンの皆さんです。その当時、SNSのフォロワーさんたちからDMがめちゃくちゃ来て、たくさんのアドバイスをいただきました。本当に凄かったですよ。私のファンの方たちは子どもを育てた経験のある世代が多くて、すごく支えになりました。同時に「私もシングルマザーになります。あみちゃんに力をもらっています」なんて言葉もいただいたりして。
――かさいさんの周囲の人たち、みんなが温かい! 優しい世界!
かさい:そう。みんなあったかくて前向きで……。ちょっとだけ、元セクシー女優のシンママってことに誹謗中傷もありましたが、傷つくことは全くありませんでしたね。
◆シンママでも…私には9万人の「パパ」が!
――かさいさんのSNSではファンの方たちのことを「パパ」と呼んでいますね。
かさい:はい。ファン=パパです。パパ、9万人います(笑)。地元に戻る直前のイベントに来てくれた人たちには「I am DADDY」みたいなことを書いたパパカードを渡したんですよ。ちょうど昨日開催したイベントにも、みんな持ってきてくれていました。でも、これって今思えばシンママになる自分を鼓舞するための言動だったと思います。一人で産むプレッシャーはありましたから。
――とはいえ、9万人のパパは多すぎる(笑)。
かさい:でも、みんな安産のお守りもめちゃくちゃくれたし、妊娠からの十月十日をずっと見守ってくれていたんですよ。これってパパじゃないですか。何なら、本当のパパよりも楽しみにしていてくれていましたもん(笑)。
――そして2019年の年末、男の子を出産されました。
かさい:難産で予定日を10日も超過したんです。促進剤を5日間入れられてもなかなか出てこなくて、病院では「産まない重鎮」になっていましたね(笑)。
◆「帝王切開に切り替えた」出産を実況中継
――その様子を、ずっとSNSで実況されていたとか。
かさい:実際に産まれたのは12月28日。ちょうどコスホリの日でした。そこに出展していた友達が母とLINEで繋がっていたので「まだ頑張ってる」「今、帝王切開に切り替えた」と逐一報告をしていたらしいんです。なので、産まれた瞬間にイベント会場に伝わって、友達もお客さんも一緒になって「うわー!産まれたー!」って……。
――全員で感動を分かち合ったわけですね。これは確かにみんな息子さんのパパだ(笑)。
かさい:だから私、シングルで寂しいと思ったことがないんですよ。今振り返っても、妊娠中からハッピーなことばかりだった。産んだ直後からコロナ禍に入りましたけど、周りの人たちはどうにか私に仕事を渡そうと画策していました。お世話になっていたイベント会場が遠隔リモートでイベントができるようにしてくれたり、渋谷果歩ちゃんが私のLINEスタンプを作ってくれたり。なんとしてでも私がこの業界から去らないように、頑張ってくれたんでしょうね。
――それだけ、かさいさんが業界から愛され、頼りにされている存在だということですよね。フリー女優連盟の立ち上げ、映像実演者協議会の理事などの実績からも伝わってきます。
かさい:出産した後は不思議と、出役としての感覚がなくなってきたんですよ。なんだか、この業界の全ての女の子たちが自分の子どものように思えてしまって、みんなを輝かせたい、幸せにしたいって気持ちが沸き上がってきたんです。
◆出産後から溢れ出した母性……「セクシー女優みんな幸せになって欲しい!」
――女優さんたちに対しても、母性が溢れ出ている状態なんですね。
かさい:何より、セクシー女優の子たちを悪い人たちから遠ざける地固めをしたかったんです。フリー女優連盟の発起人となったのは、まさにその一環なんですよ。
――悩める女優さんたちの相談に乗ることも多そうですね。
かさい:たまに病んでいる女の子に、私が病んだ話を聞かせることがあります。私は過去に無修正動画に出演したことで、2016年にわいせつ電磁的記録頒布幇助罪に問われて逮捕(不起訴)されたんですよ。拘留されて畳の目を数えるしか楽しみがなかったっていうのが、私の人生のどん底なので「君はここまでの経験はしたことないだろ?」って(笑)。
――さすがにそれは、滅多なことではできない経験!
かさい:女の子がマインドを変えるのって大変だからこそ、私自身の生きた体験談を伝えたいんです。反面、楽しいことをいっぱい知っているのも私の長所だと思いますし、私自身はプラスの気持ちを発信し続けていきたいですね。
◆ママ友に仕事は隠していない「芸能系の裏方をしてる」
――息子さんは現在5歳だそうですね。どんなお子さんなのですか?
かさい:ひと言でいうと、ひょうきん者ですね。最近は『クレヨンしんちゃん』の見すぎでお尻や下半身ばかり見せたがるんですよ。まさに私が産んだサラブレッドって感じです(笑)。
――一人で子育てをしている中で、悩みなどはありませんか?
かさい:プールのレッスンでまだ3歳クラスにいるとか、まだ平仮名が書けないとか、気になることはたくさんありますよ。でも、SNSのサブアカウントのママ垢で、いろんな人が相談に乗ってくれているんです。ご飯作りたくない~なんて書いたら「私もそういう時ある。こうしてみたら?」とか、保育園の持ち物への名前つけが大変って書いたら「こういうスタンプがあるので使ってみたら?」とか……ほんと、フォロワーさんからのフィードバックで育てているような感じです(笑)。
――SNSをフルに活用。これぞ現代にマッチした子育て法かもしれない。
かさい:子育ての終わったパパママは励ましてくれるし、同世代からも共感をもらっています。フォロワーからは元セクシー女優だってことはすっかり忘れられている気がしますね。質問や相談には答えてくれるのに、たまに酔っ払った時に胸を寄せた写真をアップしても何の反応もありません(笑)。
――地元のママ友さんたちには、元セクシー女優であることは伝えているのでしょうか?
かさい:隠しているわけではないのですが、自分から進んでは言っていません。何の仕事をしているのかと聞かれたら「芸能系の裏方をしてる」って答えています。これならしょっちゅう上京していることも不審がられないし、別に嘘ではないので。
◆仕事は「楽しいかどうか」で決めている
――確かに、最近ではBL映像作品のプロデュースをしたり、出産後はさらに活動が多岐に渡っていますよね。
かさい:女性用風俗関連のこともやっていますよ。でも、受ける仕事は基本的にはすべて「楽しいかどうか」で決めていますね。子育てにしても同じこと。楽しいから、本当に今は子どもに夢中なんです。
――新しく恋愛したいという気持ちはありませんか?
かさい:忙しすぎて、そんな暇はないっていうのが本音です。正直、男と会う時間はムダでしかないとすら感じています。
――そこまで達観してしまうとは……。
かさい:周りの女の子の影響もあって、「パートナーがいるのもいいかもしれない」と思った時期もあったんです。マッチングアプリをつかって2か月くらい頑張ったのですが……難しかったんですよね。条件が厳しすぎたかもしれません。
◆今は恋愛よりも、仕事と子育てに夢中!
――そんなにハードルが高い希望があったのですか?
かさい:まず第一に、私にも子どもにも手をあげない人っていうのがありました。
――それは普通のことというか、最低条件ですよね。暴力ダメ、絶対。
かさい:でも、もう一つの条件が「私より面白い人」だったんですよ……。
――すいません、それは無理かもしれない(笑)。激高ハードルだ!
かさい:ある程度の妥協はしたんですけど、デートでも私一人の漫談になっちゃって、私はぜんぜん面白くない(笑)。だったらその時間を使って仕事をしたほうが楽しいし、有意義だという結論に達しました。
――では、かさいさんの今後の人生の目標を教えてください。
かさい:今は子どもが主軸なので、子離れしなきゃいけなくなる未来のことを考えたくないんです(笑)。それでも、いつかその日はやってくるとは思うので、その時は婚活してみようかな……。でも、もしかしたら恋愛より高齢ライバー、高齢Vtuberなんかに挑戦しているかもしれません。その方が楽しそうな気がするんですよね。
――ありがとうございました!
<取材・文・撮影/もちづき千代子>
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