1.医療事務の離職率の傾向
医療事務の離職率に関する明確なデータは公表されていませんが、関連するデータから離職状況を推測することができます。
令和5年賃金構造基本統計調査によると、医療事務員を含む「その他一般事務従事者*1」の平均勤続年数は11.1年であることがわかります。そのほかの事務職の平均と比べると0.7年ほど短く、事務職の中では離職率がやや高いことがうかがえます。
厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査より作成
*1 その他の一般事務従事者には、広報・法務係事務員、調査票審査・集計事務員、保険契約事務員、クラーク(医療)、医療事務員、通信販売受付事務員(電話以外によるもの)を含む
男性 |
女性 | |
---|---|---|
平均勤続年数 | 15.0年 | 9.3年 |
勤続年数を男女別に比較すると、男性は15.0年、女性は9.3年で女性のほうが平均5.7年短いことがわかりました。この背景には、出産や育児、介護などが影響している可能性があります。これらのライフイベントによる離職の割合が男性よりも高いことが、女性の勤続年数を短くする一因と考えられます。
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2.医療事務の退職理由
ここからは医療事務の離職率が高い理由について、よくある退職理由と併せて解説していきます。
(1)給料
月収 |
賞与 |
年収 |
|
---|---|---|---|
医療事務*1 |
28万1,771円 |
83万8,067円 |
421万9,317円 |
全産業平均*2 |
32万1,667円 |
71万6,000円 |
457万6,000円 |
*1 医療事務の給料には、扶養手当、時間外勤務手当、役付手当、通勤手当などを含む
*2 全産業平均の給料には、各種手当を含むが、通勤手当等の非課税分は含まない
医療事務の平均年収は421.9万円です。全産業の平均年収の457.6万円と比べて、35.7万円低いことがわかります。
ただし、職場によっては役職・資格手当がつく場合や、自由診療の売り上げに応じたインセンティブを用意している場合もあります。そのため、働き方やスキル次第では高収入が狙える可能性もあります。
(2)業務内容
医療事務の仕事内容は、受付対応や診療室への案内などのクラーク業務、患者一人ひとりのレセプト(診療報酬明細書)作成など多岐にわたります。覚えることが多いため、慣れないうちは業務が長引くこともあるでしょう。
しかし、クラーク業務やレセプト作成などの経験は、別の医療現場でも即戦力として評価されやすいスキルです。医療事務の求人は全国にあるため、退職後に復職しやすい点は大きなメリットといえます。
また、日々多くの症例を目にするため、治療方法や医薬品、医療保険制度など、自分や家族が病気やけがをした際に役立つ知識が身につく点も、医療事務ならではの魅力といえるでしょう。
(3)職場環境
医療事務は同じ事務職同士だけでなく、医師や看護師との連携が多い仕事です。そのため人間関係で問題が生じてしまうと、精神的なストレスを感じるだけでなく、仕事の効率にも影響があります。また、職場によっては、医師や看護師などの権限が強く、医療事務の立場が弱いと感じる場合もあるようです。
(4)クレーム対応
医療事務の仕事では受付業務も担当するため、患者からのクレームを受けることがあります。ときには、診療の待ち時間や治療費に対する理不尽なクレームを受けることもあるかもしれません。しかし、クレームだけでなく感謝を伝えられることもあります。この点は病院の窓口ともいえる医療事務ならではのメリットともいえるでしょう。