リアルとエンタメの狭間に描く看護現場の真実
──ドラマの現場でリアルを追求しすぎるとエンタメ性が薄まり、エンタメに傾倒すると現実離れしてしまうのではないかと感じています。そのバランスはどのように調整しているのでしょうか。
大垣さん:制作側としては、出演者のキャラクターを尊重しながらも、時にはハチャメチャな演出も加えたいという思いがあります。例えば、病室でお酒を飲むのは絶対にタブーですが、キャラクターの個性を表現するために、こっそりとお酒を飲む設定にすることもありますね。そういった演出は伊東さんの提案を踏まえて、最終的に監督が判断しています。
伊東さん:シーズン1で認知症の患者さんをテーマにした物語があり、病院内のシーンで裸足で歩く設定を提案しました。視聴者にとっては少し意外に感じるかもしれませんが、実際の病院でもそのような光景が見られるんです。看護師がスリッパを持ちながら側に付いていて、落ち着いたところで履かせるようにしています。この提案を受け入れていただき、実際のシーンでも看護師が側に付いてスリッパを持つ様子が描かれました。
ただ、実際に医療現場でおこなわれていることでも、今の世の中に受け入れられるかは考慮する必要がありますので、きちんと根拠を持ってご提案し、視聴者にとっても違和感がないよう意識しています。
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ドラマが医療業界に与える影響
──大垣さんはドクターXの制作に12年携わってこられました。これまでの経験をザ・トラベルナースにはどのように活かされていますか?
大垣さん:これまでたくさんの症例や治療法を調べてきたので、作品に反映することでどのような反響があるのか、ある程度想像できるようになりました。ただ、新たな手術や治療法が常に生み出されるので、「前と同じでいいや」ということは何ひとつありません。学び続けることが大事だと思います。
ドクターXでは視聴者はもちろん、医師の方々にも「こんな治療法もあるのか」と、知っていただけたらいいなと思っていました。ザ・トラベルナースは若い人にも観ていただいて、男女問わず看護師になりたいという人が増えたらと願っています。
──以前岡田将生さんに話を聞いたところ、「看護師になりたいという男性が増えている」とおっしゃっていました。実際に男性看護師は増えてきているのでしょうか?
伊東さん:私の勤務する病院は男性看護師の割合が増えてきていますし、男性からの応募も増えています。看護学校や看護大学に進学する男性が増えているのかもしれません。
今年の新卒の採用面接では、「いずれはナースプラクティショナーとして働きたい」という人がいました。学校でさまざまな知識を身につけたと思いますが、おそらくザ・トラベルナースを観て、「こんなこともできるんだ!」と知ったのではないかなと思います。
──ザ・トラベルナースがなかったら、ナースプラクティショナーの仕事はもちろん、資格の存在すら知られていなかったかもしれませんね。
伊東さん:私が世の中に向けて「看護師は楽しく、やりがいのある仕事ですよ」と訴えても、振り向いてくれる人はごく少数でしょう。しかし、ドラマとして描かれることでこんなに大きな反響があるんだと驚きました。
静さんがよく言う「人を見て人を治す」という言葉には深く共感します。劇中で医師たちが「この患者に施す治療はない」と匙を投げても、静さんは違うんです。対話を通して患者さんの生きる力を引き出したり、落ち込む人に寄り添ったり。どんな状況でもできることがあるんだと、監修を通じて改めて感じさせられます。
──では最後に、ザ・トラベルナースの今後の見どころを教えてください。
大垣さん:歩さんと静さんのコンビのスタイルですね。歩さんが静さんに引っ張られるなかで、どのように感化され、成長していくのかを見ていただきたいです。
また、今作から加わった出演者もたくさんいますので、院長との関係性や、若手看護師の成長物語も楽しんでいただけると思います。伊東さんの視点からはいかがでしょう?
伊東さん:看護師役の方々の視線や所作にぜひとも注目していただきたいです。とくに視線 ですね。患者さんと目を合わせることはとても大切で、声かけをするときは必ず目を見てくださいとお伝えしています。そこに看護師の優しさや、患者さんを気にかける思いが現れますので、視聴者のみなさんにもその思いがうまく伝わればいいなと思っています。
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画像提供:テレビ朝日