早稲田大学教育・総合科学学術院の教授でジャーナリストの澤康臣氏が、2024年11月25日にXで、兵庫県知事選挙における齋藤元彦氏の公職選挙法違反疑惑問題について、各新聞社が報道で、斎藤氏のSNS戦略を担当したとするPR会社「merchu(メルチュ)」の代表・折田楓氏の名前を出さないことに「何のため?」と疑問を呈した。
主な新聞、テレビ局が名前出さず「PR会社社長」などと報道
問題となっているのは、折田氏が20日に公開したnote記事だ。メルチュが斎藤氏のSNS運用など任されたとして、その手法の詳細を記載した。これに有償であれば公職選挙法違反だとの指摘が相次いだ。斎藤氏は、依頼をしたのはあくまでポスター制作等だとして、公職選挙法違反ではないと主張。ポスター等の制作費として「70万円ほど」を支払ったという。
SNS新聞社やテレビ局の多くはこの疑惑について報じる際、折田氏の名前を出していない。
日本経済新聞と読売新聞は、記事中で折田氏を「県内のPR会社の経営者」と記載。朝日新聞は「PR会社の社長」、毎日新聞は「PR会社社長」、産経新聞は「PR会社の経営者」「企業代表の女性」としている。
テレビ局の報道では、フジテレビ系の報道をまとめた「FNNプライムオンライン」では「兵庫県内のPR会社の代表を務める女性」、日本テレビ系の「日テレNEWS」では「PR会社の代表」、テレビ朝日系の「テレ朝news」は「兵庫県内のPR会社社長」としている。
いずれも、note記事のトップに使われた斎藤氏と折田氏のツーショット写真を掲載しているが、折田氏の顔は隠されている。
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折田氏の名前は「二重三重に公共公開情報」
こうした折田氏の名前を伏せた報道に、澤氏はXで疑問を呈した。
報道による折田氏の名前の公表は「政治につながり公共性はひときわ重大、本人の発信が発端、など二重三重に公共公開情報」だとし、名前を伏せることは「市民に検証可能・克明な情報を伝えるという報道倫理上、深刻な疑問」と指摘した。
続く投稿では、「『議論・検証のための具体データ』がないスカスカ報道になってしまったら、いくら玉石混淆といってもネットSNS情報に皆が『具体情報』を求め、重点を置くようになる。それでは現場の真面目な取材が無に…」と警鐘を鳴らし、「選挙時の過度な『中立』同様、有害な『差し控え』ではないだろうか」とした。