新聞離れが加速するなか、新聞販売店の倒産が過去最多に達していることが、東京商工リサーチの2024年11月10日に発表した「2024年1-10月『新聞販売店』倒産状況」でわかった。
新聞発行部数の大幅減少に加え、折り込み広告減、配達員の人手不足とトリプルパンチ。新聞販売店に生き残る道はあるのか。調査担当者に聞いた。
毎年、山形県や宮崎県の人口に匹敵する読者が消えていく
東京商工リサーチによると、新聞販売店の倒産(負債総額1000万円以上)が2024年1~10月で40件(前年同期22件)発生した。6月だけで30件あり、年間最多だった2014年と2019年の29件を抜いたばかりか、8月以降も増勢が続き最多件数を更新中だ【図表】。
新聞の発行部数激減が響いている。日本新聞協会によると2023年(10月時点)は全国の新聞の総発行部数は約2859万部で、2000年(約5370万部)に比べ半減した。いかにすさまじい減少ぶりか、都道府県別の人口と比較するとわかりやすい。
この23年間で約2511万部減ったが、平均すると毎年109万部ずつ読者が消えている。この数字は山形県(2020年国勢調査で人口106万人)や宮崎県(同106万人)の人口に匹敵する。毎年1つの県が消滅していくような計算だ。
2024年10月から毎日新聞と産経新聞が富山県での配送を休止。また、北海道新聞スポーツが2022年11月末、西日本新聞スポーツが2023年3月末に紙媒体の発行を休止し、電子新聞のみに移行。さらに、東京中日スポーツも2025年1月末から電子新聞のみに移行、夕刊フジは同1月末をもって紙媒体・電子新聞を含めて休刊する。
東京商工リサーチでは、
「各販売店は、特定新聞を宅配する『専売店』から他紙も扱う『複合店』、すべての新聞を扱う『合売店』など効率経営を模索している。重要な収入源の折込み広告収入も落ち込んでいる。販売から配達まで人海戦術の労働集約型で、人手不足や配達コストの高騰が経営を直撃している。
地域密着の強みを活かし、商品販売や高齢者住宅の見回り、配送サービスなど、事業転換を図る動きもあるが、どこまで本業不振をカバーできるか注目される」
と分析している。
(広告の後にも続きます)
発行部数が減ればチラシ広告収入も減り、経営悪化の悪循環
J‐CASTニュースBiz編集部は、東京商工リサーチ情報部の調査担当者の話を聞いた。
――新聞販売店が倒産ラッシュに追い込まれる理由は、何が一番大きいと思いますか。
調査担当者 配達員の人手不足とか、配達コストの上昇とか、いろいろな要因がありますが、何より発行部数の減少が大きいです。経営に直結する購読料収入の減少だけでなく、チラシなどの広告募集数も減少するし、広告料の単価の低下にも影響を及ぼし、経営悪化の最たる要因と考えます。
――もう新聞メディアそのものが国民から受け入れられていないのでしょうか。
調査担当者 速報性や新聞紙の印刷、輸送、配達といったコスト面の負担を考えても、また読者人口の減少などさまざまな観点からも、紙媒体としての新聞の発行部数減少は避けられないと思います。
一方で、デジタル媒体では読者の増加を狙える可能性を残しているのではないでしょうか。
――全国紙の地方からの撤退が相次いでいます。日本経済新聞が福岡県や山口県などで、また朝日新聞が北海道や東海3県などで夕刊を休止しました。そこに毎日新聞と産経新聞が富山県での配送そのものを休止するニュースが入ってきたわけですが、大手紙と地方紙の販売店の関係はどうなっているのでしょうか。
調査担当者 地方紙に押されて全国紙がシェアを伸ばせない地域では、販売店の倒産や廃業も追い打ちをかけて配送網の維持が困難となり、富山県における毎日新聞や産経新聞のように配送中止にまで追い込まれています。
一方、地方紙も部数減の打撃は受けていますから、「複合店」や「合売店」への転換が新聞販売店の生き残り策として選択されているようです。