クロージング・オークションの導入
また東証は今回の時間延長に合わせて、「クロージング・オークション」と終値を決める仕組みを新たに導入します。この仕組みは取引終了の5分前(15時25分)からは投資家の注文は受けるものの、売買は成立させず、午後3時半に買い注文と売り注文を一斉に突き合わせて終値を決める、というものです。
終値は翌日の寄付き(取引の開始)までその会社の「現在の株価」として扱われることもあり、取引終了の間際に注文が集中したり、注文の取り消しがあったりすることがありました。東証によると仕組みの導入によって注文動向が可視化され、価格決定の透明性が高まるとされています。
東証は投資家にとって株式を購入できる場所であることに加え、海外の投資家などから見て「日本の株式相場を代表する存在」でもあります。各株式銘柄は対象企業の経営に大きく影響するばかりではなく、集合値として日本の経済を代表する指標になります。2020年のトラブルを受けて、日本株市場の信頼度が毀損されることのないよう、対策を加えていることが、新たな仕組みの導入からもわかります。
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延長されることによる個人投資家のメリットとデメリット
メリットとデメリット
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では30分延長することで、個人投資家にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
今回拡大する午後3時から3時半は、多くの投資家にとって活動的な時間です。遅めの昼食を取りながら、ネット証券にログインする人も多いでしょう。必然的に投資家の取引機会が増え、市場の利便性が高まることが期待されます。
影響を受けるのが各企業の適時開示です。これまで後場が終わってから適時開示をする企業も多かったのですが、今後は後場が開いている時間に開示をするケースも増えるでしょう。ポジティブな情報開示であれば急伸に繋がる一方、逆にネガティブな適時開示は売却の進む失望売りの懸念があります。
取引時間の延長は70年振りですが、後場の終わりにおける終了時間の変更は初めてです。少しずつ各企業の対応体制も整備されていくことでしょう。