インターネットを利用してよく学習する子どもほど、情報を活用する能力が高くなることが、NTTドコモのモバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年11月21日に発表した調査「インターネット利用の学習時間と情報活用能力」でわかった。

「収集力」「表現力」「処理力」には差が出るが、「判断力」「創造力」「発信・伝達力」にはとく差が出ないという。

いったいなぜ能力に差が出るのか。また、インターネットをどう活用すればよいのか。調査担当者に聞いた。

インターネット利用の学習で伸びる能力、変わらない能力

モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、関東1都6県の小学生および中学生とその親600人が対象。

インターネットを利用して学習している子は、利用していない子と比較して、情報を活用する能力にどのような差が生じているのか。まず、インターネットを利用した学習時間(学校・家庭問わず)を聞くと、結果は【図表1】となった。

小学生低学年では、3人に2人は30分より少なかったが、学年が上がるにつれ利用時間も増え、中学生になると3人に1人が1時間以上だった。

次に、インターネット利用の学習時間を3つのグループに分けた。「利用なし」「1時間未満」「1時間以上」である。その学習時間と情報を活用する6つの能力に差があるかを比較したのが【図表2】だ。

それによると、「収集力」「表現力」「処理力」には差が見られたが、「判断力」「創造力」「発信・伝達力」には差がなかった。

興味深いことに、この傾向は学年別(小学生低学年・高学年、中学生)に分けても同様に確認できた。

なお、それぞれの能力について、どのような質問で聞いたかを示したのが【図表3】だ。

それぞれ2問ずつ4件法で聞き、あてはまるは4点、ややあてはまるは3点、あまり当てはまらないは2点、あてはまらないは1点に点数化した(それぞれの能力の得点は、2つの設問の合計点になるが、図表3の(※)の質問では得点化する時に反転して利用した)。

(広告の後にも続きます)

ネット利用の多寡ではなく、どう理由するかという意識を持たせよう

さて、今回の結果をどう見るか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたモバイル社会研究所の水野一成さん(子ども・防災・シニア調査担当)に話を聞いた。

――ネットを利用して学習している子が情報を活用する能力が高いという調査結果、それぞれの能力によって差が出るところ、出ないところがある点が非常に興味深いです。
「収集力」と「表現力」と「処理力」が伸びて、「判断力」と「創造力」と「発信・伝達力」がほとんど変わらない理由は、ズバリ何でしょうか。それぞれの能力ごとに説明してください。

水野一成さん これらの情報活用能力は、たとえば「収集力」は「インターネットでの収集力」というようにネットに限ってはいませんが、多くの子はネットで検索を行っていることが多いと思われ、そのためネットの利用時間が、「収集力」にはより強く影響を受けたと思われます。

「表現力」は、求める回答を正しくネットから返してもらうために適切に検索するための「表現力」が伸びており、「処理力」は、多くの情報がアウトプットされてくる内容を取捨選択することにより伸びているのかもしれません。

その他の能力はネットの多寡で差が付かなかった、ということかと思います。ネットをたくさん使わせれば能力が上がる、ということではなく、どのように利用することが適切か、どのようなアウトプットが求められているか、という意識を持たせる教育などが、ネット利用の有無にかかわらず重要と思われます。