定年後、“1億円以上”を投資で運用する父に大きな不安…忠告したら「一銭も財産を残さない」とブチ切れ

2024年1月に、個人投資に関して税制優遇制度NISAの仕組みが変わったことで、「貯蓄から投資」を合言葉として多くの人が投資をはじめることになった。「2024ユーキャン新語・流行語大賞」でも「新NISA」がノミネートするなど、空前の投資ブームが起こっている。ただ、家族間で投資に関するトラブルが起きるケースもあるようだ。父親と関係性が悪くなってしまったのが、埼玉県在住の高梨啓吾さん(仮名・35歳)。高梨さんの父親は大阪に住んでいるそうだが、最近では家族に内緒で意外な趣味にドハマリしているのだとか。

◆父がデイトレーダーのようになっていた

「父は、すでに定年退職を迎えた元公務員です。かなりの退職金をもらったことで悠々自適の老後を過ごしています。母は5年前に亡くなり父は一人暮らしなのですが、Uber Eatsを頼んだりして食事にも困っていない様子でした。安心して様子を見に行くことが少なくなり、またコロナ禍や仕事がいそがしかったことで3年間も実家に帰っていなくて。ただ、子どもが生まれ、顔を見せに今年久しぶりに帰ったんです。そうしたら、父の部屋がテレビなどで見るデイトレーダーのように変貌していました……。父の書斎だった部屋には、何台もの画面に高性能なPCがつながれ株の取引を行っていました」

◆取引額が1億円をこえていた

株の取引を時間ができた定年後に行っていても不思議ではないはず。しかし、かつて父親は株取引に関して、否定的な意見を語っていたというのだ。

「父は堅実に貯金する性格で、株取引で財を成したような人たちをギャンブラーだとバカにしていた。それだけに、退職後にまさか株取引をしているとは思わなかった。父に聞けば、友人にすすめられ、興味本位で買った会社の株で収益がでたそうなんです。それから楽しくなり、株取引ができる環境を整えて運用をしているというのです」

とはいえ、もともと堅実な父親の性格だけに無理な投資はしていないだろうと、気にもとめていなかった高梨さん。しかし、取引を行っているPCの画面を見ると、そこには驚愕の事実が隠されていたそうだ。

「自分も株の取引は行っているので、どのくらい運用しているのか気になったんです。興味本位で父のPCの画面を見たら、取引している額が1億円をこえていて……。驚いて話を聞くと、ここ最近の株の乱高下でかなり儲けたと話すんです。確かに、公務員時代から勉強家で経済の知識も豊富だった父なら、株で収益を上げるのもできるような気が。しかし、退職金は全額投資に回していると話していて、かなりハイリスクな取引を行っていることが解った。あんなに堅実だった父とは思えず、絶句したのを覚えています」

◆FXや仮想通貨にも手を出していた

かつては株で収益をあげる人をバカにしていた父親は、いつの間にかその魅力に取り憑かれてしまったようだ。しかも、株の売買だけでなく、高梨さんの父親はさまざまな投資に手を出していたのだとか。

「退職して時間に余裕があるからなのか、FXや暗号資産(仮想通貨)など株以外の商品にも投資していた。株の取引が終了してからも、FXや仮想通貨は時間を気にしないで売買できるので暇な自分にはぴったりだと言うんです。しかも、最近ではかなりの収益を仮想通貨であげたと父は自慢げに話す。さすがにマズイんじゃないかと意見すると、自分の金だしどう使おうが勝手だろうと怒り始めた。確かにその通りなのですが、離れて暮らしていますし家族としては心配です」

◆睡眠時間は毎日3時間、食事はほとんど配達

息子である高梨さんの心配をよそに、1億円以上を運用してさまざまな投資を行っている父親。いわゆる「億り人」となったわけだが、父親の目線の先にはさらに儲けている個人投資家たちがいるそうだ。

「聞けば、有名な個人投資家の勉強会に参加したり、SNSをフォローするなどして目標にしているそうです。1億円でもまだ足りないと火が付いてしまい、FXや暗号資産など大きく儲けられる投資商品に手を出したそうです。しかも、常に市場が気になるのか睡眠時間は毎日3時間ほどで、食事もほとんどを配達で済ませているとか。体を壊す心配もあり、そんなに頑張らなくて良いのではないかと電話で伝えても、大きなお世話だとガチャ切りされてしまう。もう、やっていることがギャンブラーのようで、自分が知っている父ではなくなってしまった」

◆忠告したら逆鱗に触れてしまった

とはいえ、1億円を超える資産を持っているのならば老後の資金は安泰のような気もするが、高梨さんの父親は危険な兆候が見え隠れしているという。

「つい先日電話したら、暗号資産の取引において1日で1000万円を損したと普通に話しているんです。金銭感覚が狂っているのは間違いなく、そんなに無理しないで商品を全部売って不自由ない暮らしをしたほうが良いんじゃないかと忠告しました。そうしたら逆鱗に触れたようで、『お前には一銭も財産を残さないで全部投資で使い切って死ぬ』とブチ切れてしまったんです。そこから大喧嘩をして音信不通になった。もう、やっていることがギャンブラーと同じで、このままトレードしながら部屋で孤独死するのではないかと心配しています」

真面目だった人が、とあることをキッカケに趣味にのめり込んでしまうことは良くあるが、高梨さんの父親はそれが投資だったようだ。心配してくれる息子を無視してまで危険な取引を行うことに、幸せや意味はあるのだろうか?

<TEXT/高橋マナブ>

【高橋マナブ】

1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている