相続する土地の一部が崖になっている場合は、がけ地補正率調整によって土地の評価を減少させることができます。今回はがけ地補正率を使った計算方法について相続専門税理士が解説します。
がけ地補正率で覚えておきたい2つのこと
がけ地補正率を使って評価額を調整する土地は、図表1のように1つの区画に平坦な部分とがけ地の部分がある土地です。
がけ地補正率を使って評価額を調整するときは、平坦な土地であると仮定して求めた評価額にがけ地補正率をかけます。がけ地補正率の値が小さいほど、土地の評価額は下がることになります。
がけ地補正率を使った評価では、次の2つのことが影響します。
がけ地になっている方角
全体の地積のうちがけ地部分の地積の占める割合
それぞれについて詳しくみていきます。
補正率はがけ地になっている方角によって異なる
がけ地補正率の値は、がけ地になっている方角によって異なります。図表2のがけ地補正率表で示されているとおり、北が崖になっている場合が最も評価が低くなり、西、東、南の順に評価は高くなります。
補正率は全体の地積のうちがけ地部分の地積の占める割合によって異なる
がけ地補正率の値は、全体の地積のうちがけ地部分の地積の占める割合(がけ地割合)によっても異なります。がけ地部分の割合が多いほど利便性が悪くなると考えられているためです。
図表2のがけ地補正率表で示されているとおり、がけ地割合が全体の10%以上であれば、がけ地補正率による調整の対象になります。がけ地割合が10%増えるごとに評価額は低くなります。
がけ地割合は、次の算式で計算します。
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ステップ別に解説 自分でできるがけ地補正率による計算方法
がけ地補正率を使った土地の評価方法を理解していただくために、例をあげてステップ別に計算方法を説明します。簡単な事例であれば、がけ地補正率を使った評価額の計算は自身でもできます。
【例1】次の図のような土地の評価額を計算します。
【STEP1】がけ地の地積を測る
がけ地の地積を測るには測量を依頼することになりますが、がけ地の測量は費用がかかるためあまり現実的ではありません。
また自分で測ろうとしても崖になっているのではなかなか難しいと思います。
1つの方法として平坦な部分の地積を測り、登記簿の地積からマイナスして残った部分をがけ地の地積とするやり方があります。
そのときに注意しなければならないのは、登記簿の地積が実際の地積と異なる場合(縄伸びなど)があることです。相続税の財産評価では実際の地積で評価することとなっているため、登記簿の地積をそのまま使うと相続税の計算を間違えてしまう可能性もあります。
登記簿の地積が実際の地積と異なる可能性があれば、費用をかけてでも土地全体の測量を依頼することをおすすめします。
【STEP2】がけ地の方角とがけ地割合を求める
・がけ地の方角を確認する
「補正率はがけ地になっている方角によって異なる」でお伝えしたとおり、がけ地補正率はがけ地の方角によって異なります。がけ地の方角を調べるには、地図や公図などの図面を参照するとよいでしょう。
例1では、がけ地は東向きになっていることがわかります。
がけ地の方角が「北西」のように東西南北の4つの方角に一致しない場合は、北向きと西向きのがけ地補正率の平均値を使います。詳しくは、「がけ地の向きが東西南北の方角に一致しない場合」を参照してください。
・がけ地割合を計算する
「補正率は全体の地積のうちがけ地部分の地積の占める割合によって異なる」でお伝えしたとおり、がけ地補正率はがけ地割合によっても異なります。
例1では、総地積が240㎡であるのに対してがけ地の地積が60㎡であることから、がけ地割合は次のとおり計算します。
【STEP3】評価額の計算を行う
がけ地の方角とがけ地割合をもとにがけ地補正率を確認し、がけ地補正率を使って土地の評価額を計算します。
・がけ地補正率を確認する
がけ地補正率表でがけ地補正率を確認します。がけ地割合は0.25であることから、0.20以上の欄を参照します。
がけ地は東向きであることから、がけ地補正率は0.91であることが読み取れます。
・1m2あたりの評価額を計算する
がけ地がある土地の1m2あたりの評価額は、下記の算式のとおり、土地が平坦であると仮定して求めた価額にがけ地補正率をかけて計算します。
例1の場合では、次のとおり計算します。
(奥行価格補正率は例1の図に示したとおり1.00とします。奥行価格補正率についての説明は省略します)
・1m2あたりの評価額に面積をかける
1㎡あたりの評価額に面積をかけて、土地の評価額を計算します。面積はがけ地の部分も含めた総面積を使用します。
以上の結果、例1の土地の評価額は21,840,000円となります。