現在、世界からもっとも期待と注目を集めている俳優と言っても過言ではないアンナ・サワイ。大ヒットドラマ「SHOGUN 将軍」ではヒロインを演じ、“米国テレビ界の最高峰”とされるエミー賞において、アジア人初となる主演女優賞を受賞する快挙を成し遂げた。12歳で舞台『アニー』の主演に抜擢されたのち、2009年に『ニンジャ・アサシン』でハリウッドデビュー。その後も、映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』などの話題作に出演を果たす。作品の舞台裏や役から受けた影響、そして新たに芽生えた思いについて語る。
photo: ©Elisabeth Caren/AUGUST/amanaimages
エミー賞の歴史において史上最多となる18部門で受賞に輝き、2024年のエンターテインメント業界に衝撃を与えたドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」。真田広之演じる主人公・吉井虎永のもとで英国人航海士の通詞(つうじ)を務め、戦乱の世を強く生き抜いた戸田鞠子役として白羽の矢が立ったのがアンナ・サワイだ。演じるうえで、ステレオタイプではない女性の描き方に感銘を受けたと『マリ・クレール』米国版のインタビューで話す。
photo: ©Elisabeth Caren/AUGUST/amanaimages
「これまでの作品では、女性は脇役で、男性の恋愛対象として語られるだけということも多くありました。そんななか、『SHOGUN 将軍』に登場する女性たちは、それぞれの物語を持っている。彼女たちが何を経験し、どれだけの力があるのかを本作では描いているのです。だからこそ、鞠子には親近感が湧きました」
ハリウッドで着実にキャリアを積み重ねるだけでなく、世界的なフランスのハイジュエリーメゾン「カルティエ」のアンバサダーにも就任するなど、ファッションアイコンとしても注目が高まっているアンナ。ニュージーランドで生まれ、香港やフィリピンで幼少期を過ごしたのち、10歳で日本に移住した経験を持っているため、土台にあるのは国際的な感覚。それだけに、日本に対しても多角的な視点からとらえることができる。
第76回エミー賞の授賞式では、アンバサダーを務める「カルティエ」のハイジュエリーイヤリングと「リフレクション ドゥ カルティエ」のリングを着用して出席した
©Andie Jane
「鞠子は16世紀の日本に実在した細川ガラシャをモデルにしていますが、この作品で描かれる彼女の静かな強さには感動を覚えました。日本人女性というのは、『とてもかわいらしくて、従順で、オタクっぽい』というようなイメージを持たれがちです。でも、それはとても一面的なものだと思っています。日本人女性に関する描写において、実際の姿を映し出しているようには到底感じられないことが過去にたくさんありました。そんななか、鞠子に出会って『このキャラクターはリアルだ』とようやく感じられたのです」
エグゼクティブ・プロデューサーのジャスティン・マークスとレイチェル・コンドウが日本人を正しく描くことに心を砕き、演者たちに敬意を払ってくれたことにも感謝の気持ちを打ち明ける。撮影を終えて現実世界に戻った際、自身の中に新たな発見もあったと教えてくれた。
「本作での経験が『私たち日本人がなぜこのように考えて生きるのか』ということについて、より深く理解するきっかけとなりました。第8話で鞠子と夫の文太郎がお茶を飲む場面がありますが、2人の間で言葉は交わされていません。ただ、完成したシーンを観たとき、日本人はそのような“間”を大切にし、沈黙の中で観察することに時間を割いているのだと感じました。そういった感覚を知ったこともあって、今では人々があまり話さないときに『この瞬間は感謝すべき時間なのだ』と考えるようになりました」
「SHOGUN 将軍」は人生においても、キャリアにおいても、自分を見つめ直すきっかけになった作品だが、観客にも感じてほしいことがあると付け加える。
「この物語は昔の女性たちが経験したことを描いたものではありますが、現代の日本にもまだその歴史の影はあると痛感することがあります。ただ、『SHOGUN 将軍』では、日本の女性たちの内面の強さや感情の豊かさを伝えているので、本作を通して日本の女性たちに対するリスペクトがもっと高まっていったらいいなと。観てくださる方々が自分の人生を振り返り、これから先どう生きたいかを考えるようになってくれたらと願っています」
アンナには俳優として観る者をひきつける魅力があるが、世界を股にかけてパワフルな生き方をする彼女自身もまた、私たちに力を与えてくれる存在となっているのだ。
「SHOGUN 将軍」
ディズニープラス「スター」にて独占配信
©2024 Disney and its related entities Courtesy of FX Networks
徳川家康ら、歴史上の人物にインスパイアされた物語の舞台は「関ヶ原の戦い」前夜。窮地に立たされた戦国一の武将・虎永(真田広之)と、その家臣となった英国人航海士・按針ことジョン・ブラックソーン(コスモ・ジャーヴィス)、二人の運命の鍵を握る謎多きキリシタン・鞠子(アンナ・サワイ)らが、歴史の裏側の壮大な“謀(はかりごと)”に巻きこまれていく。SHOGUNの座をかけた陰謀と策略が渦巻く。
・アンナ・サワイが『SHOGUN将軍』でアジア人初! エミー賞主演女優賞受賞の快挙。“夢のドレス”をまといトロフィーを手にする