今から25年ほど前、私がまだ会社員だったころの話です。隣の課の課長が持ち込んだ名酒を発端に、ある事件が起こりました。
会社でまとめて注文することに
ある日、うれしそうに事務所へやって来た課長が、「京都の有名な濁り酒をケース買いするんだけど、誰か欲しい人いる? 少し高いけど、すごくおいしいお酒だよ!」と呼びかけました。お酒好きの先輩方はもちろん、普段あまり飲まない方まで興味津々。あっという間に2ケース(12本くらい)の注文が集まりました。日本酒、特に濁り酒にはあまり興味のなかった私は、「高いなぁ」とも思い、その輪には加わりませんでした。
数カ月後の12月ごろ、事務所に大きな木箱が届きました。注文した皆さんは、うれしそうに自分の分を受け取っていきます。その中に、たまたま受け取りに来られなかった方が1人いて、木箱の中にぽつんと一升瓶が一本残されていました。「Aさんの机のところに置いておいたらわかるかな?」ということで、その日は事務所のフロアに置かれたままになりました。
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そして事件は起こった…
翌日、Aさんが出社。「あ、届いたんですね」とうれしそうにしながらも、「今日は持って帰れないから、明日かな」と少し残念そう。「このまま、ここに置いておいても良いですか?」と尋ねられ、引き続きフロアに置かれることになりました。
そして、次の日。「今日こそ、持って帰りますね」とAさん。夕方、間もなく定時というときでした。Aさんが一升瓶を少し動かした、まさにその瞬間……! 「パンッ!!」と、ものすごい破裂音とともに、天井付近まで濁り酒が噴き出したのです。
「キャーッ!」という悲鳴とともに、なんとも言えないお酒のにおいが瞬く間にフロア全体に充満しました。お酒に弱い人は気分が悪くなりそうなほどの強烈な香り。迷惑そうな顔をする人、そして「もったいない……」とつぶやく人。事務所は騒然となりました。