「美味しいものが食べたい」と常日頃から考えている方、朗報です。2024年10月16日、京橋駅から歩いて10分ほどの場所に、お菓子と料理とワインを提供するビストロ「㐂楽(きらく)」がオープンしました。

ここは国内有名ホテルやフランスの星付き名店など、数々の場所で「なんでもやってきた」という経歴を持つ山田泰司シェフが店主を務めるお店です。お菓子でも料理でも、出てくるものはとにかくなんでも美味しい。そんな理想の場所ができたんです。詳しく紹介します!

パティシエにパン職人にフレンチに…様々な経験を積んだ山田泰司シェフの「㐂楽(きらく)」とは?

場所は、JR環状線「京橋」駅から高架沿いに歩いて約10分。大きな交差点の角に見えたのが「㐂楽(きらく)」です。もう少し南へ歩けば大阪城公園。ビジネス街も近いですが、少し外れに位置する穴場スポットと言えます。


入り口の奥に見えるのは信楽焼…?ビストロなのに…?

恐る恐る中へ入ると、山田シェフが登場。「入るまでは『何屋さん?』って警戒されてるんですけど、いつでもウェルカムです!」と明るく出迎えてくれました。

L字型の立派な一枚木のカウンター8席と、奥にテーブル席が1卓。こぢんまりとしていますが、上品でシックな印象のお店です。ビストロですが、どこか日本らしい和のテイストも感じます。

「実は焼き鳥屋さんの居抜き物件なんです。カウンターも椅子もそのまま譲り受けて、おかげで厨房機器に予算を使えました」


シェフの後ろ棚に並ぶ和食器も焼き鳥屋で使っていた器だそうです

山田シェフは調理師学校を卒業した後、名古屋マリオットアソシアホテルに就職。当時、洋菓子の世界大会にも出場するパティシエを擁していた名古屋の名門で、パティシエとしてのキャリアが華々しくスタート!という訳ではなく、配属されたのはベーカリー部門だったのだとか。

「4年くらい経って、豊橋の系列ホテルに異動になりまして。そこでようやくケーキを作れるようになりました。名古屋から合わせて6年くらいホテルで働いて、20代後半でフランスで勉強したいと、単身フランスへ渡りました」


話しながらアフタヌーンティーセットを準備してもらっています

人づてで、南フランスにある星付きレストランに入ることができ、シェフからフレンチのイロハを学んだそうです。帰国後は大阪の「株式会社カフェ」へ入社。中之島のフレンチレストラン「BOOCHiC(ブーチック)」やベーカリーカフェ「ブラウンベーカリー」などで、これまでに学んだ製菓・製パン、そしてフレンチの腕をふるってきたのだとか。

そして現在の「株式会社a bond’s cafe project」へ転職。街の洋菓子店のシェフを業務委託で行ったり、マルシェ・イベント開催をしたりなど、自分の個人活動も並行しながら「㐂楽(きらく)」を立ち上げました。「㐂楽」とは、山田シェフの生家に伝わってきた商売屋号だそう。

「いつかは自分の店を。とずっと目標にやってきたのですが、『それなら会社でバックアップするから』と代表に言ってもらって、店を出すことができました。お客様の目の前で、楽しく話しながら美味しいものを作って出す。目指していたスタイルです」

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オール自家製!セイボリーもしっかり美味しい超満足のアフタヌーンティーセット

こちらが【要予約】のアフタヌーンティーセット(税込5,800円)です。ボタニカルな器に盛られた個性的なメニューがずらり!オープン第一弾目とあって、シェフのアイデアが詰まりに詰まっています。

写真奥から、プラリネのパリブレスト。隣に洋梨と栗のマカロン。その隣のきのこのような形をしたスイーツは、コーヒーとキャラメルのムースで、中にはオレンジのジュレが入っています。土台は米粉で焼いたサクサクのクッキーです。一番手前に見えるのは紅玉で作ったりんごのタルト。中央のジュレにはりんごのコンポートも入っています。どれも“ミニ”スイーツなのですが、構成を聞くとパティスリーで作られるプティガトーのように凝った作りです。

「味に変化が作れるギリギリの大きさにしています。今(取材日は11月上旬)は秋なので、秋の素材を使おうとすると栗がメインになります。栗メインだと重い構成になりがちなので、できるだけ酸味と合わせるようにしました」

一際存在感を放つ無花果のショートケーキ。こちらも“ミニ”スイーツとしてメニューに書かれています。ミニとは…?ぼんやりとした味になりがちな無花果は、カシスで味の輪郭を補っているのだとか。甘さ控えめで、満足感のあるケーキです!

こちらに並ぶのがセイボリー3種。カリカリに焼き上げた自家製のベーコンを乗せた栗のパイにナッツも合わさって、甘じょっぱさと食感が楽しめます。薄めに焼いたパリパリのタルトに入っているのは海老のタイ風マリネ。手前には鶏レバーペーストが添えられています。

「鶏レバーが苦手な人って多いですよね。でもこの鶏レバーは相当研究して、ほぼ完成しています。苦手な人にも『後悔させないから』と食べてもらってるんです。食を提供するものとして、出したものは『美味しい』と思ってもらう責任を勝手に背負ってるんで(笑)」

鶏レバーが苦手な筆者ですが、そのイメージが180度変わるほど美味しいレバーです。苦手なレバー独特の臭みのようなものはありつつも、逆にその臭みが癖になってしまうような、不思議な食体験でした。鶏レバーが苦手な方、ぜひ確かめに行ってみてほしいです!

ちなみにドリンクはメニューから3種類までオーダー可能。船場のコーヒーロースター「aoma coffee」のブレンドコーヒーや、「amsu tea」が㐂楽のために作ったオリジナルブレンドティー、日本茶にワイン、ハイボールまで多種多様です。最後の1杯はテイクアウトもできるのは嬉しいポイント!

そして、山田シェフのアフタヌーンティーセットで「スペシャリテ」と位置づけられるのが、テリーヌ・フロマージュ&パン・ド・カンパーニュ。ホテルや「ブラウンベーカリー」でパンを焼いていた山田シェフ自家製のパン・ド・カンパーニュに、チーズケーキや鶏レバーを塗って食べることで完成するそうです。

チーズケーキはこの一切れでも強く印象に残る濃厚な味わい。黒胡椒とオリーブオイルで仕上げています。ゆくゆく、オンラインショップでの展開も考えているのだとか。お取り寄せが始まるのが楽しみです!

山田シェフのアフタヌーンティーはまだ終わりません!メインプレートを楽しんでいると、追加でパスタが登場します。こちらは無花果の冷製フェデリーニ。フェデリーニというのはカッペリーニよりも少し太いパスタのことで、コシが持続するとのことなので、時間が経っても美味しく食べられます。

さらに、ミニサイズの肉まんも登場。肉まんって、あの肉まんですか?

「コロナの休業期間中、すごく暇だったんです。外出もできないので、家に篭ってうどんをうったり、肉まんを作ったりして遊んでいたんです(笑)。小麦粉で遊んでましたね。何回か試作したら、意外とクオリティの高い肉まんができてしまって、今回ようやく日の目を見ることに」

秋のセットなので、たねにはポルチーニ茸を混ぜているとのこと、旨味120%の肉まんです。間違いなく㐂楽でしか食べられない個性派!

最後に「栗とラムレーズンのモンブランパフェ」で〆。これまた自家製のラムレーズンアイスにマロンクリームを絞り、フレンチなどでも使用される「カダイフ麺」を乗せ、焼き栗を削って完成。

「アイスの下にカカオのクランチを敷いています。そのクランチは一度凍らせているんです。それなら上に乗せたアイスは溶けにくい。アフタヌーンティーセットって、写真を撮る楽しみもありますよね。撮ってる間に溶けてしまわないように」

とのことで、本当に溶けておらず、時間が経ったパフェも美味しく食べられました。「溶けるので早めに食べてください」と言うこともできるところ、お客様の楽しみを優先できるアイデア力はさすがだと感じました。