脱毛サロンなどエステ業の倒産ラッシュが過去最多に達する勢いだ。
東京商工リサーチが2024年11月26日に発表した「2024年1~10月『脱毛サロンなどエステティック業』倒産状況」によると、2024年は10月までに87件発生、過去最多の2023年の年間88件を上回ることは確実で、100件を超える見込みだ。
エステ業では多額の前払い金システムが横行、破産すると返金してもらえない被害者が数万人出るケースもある。調査担当者に聞いた。
有名人を広告塔に使い、若者をひきつける
東京商工リサーチは2024年1月~10月の脱毛、痩身、美肌などを含む「エステティック業」の倒産(負債1000万円以上)を集計、分析した【図表】。
経済産業省によると、2023年の脱毛サロンを含むエステティック業者の売上は、2833億円に達した。安価なサービスや通い放題などで若者を引き付ける一方、客から多額の前払い金を集めて運転資金に充てる手法で事業を拡大してきた。だが、経営が悪化した時に返金できないケースが多発している。
他業種からの参入が増えた2019年は、倒産が73件発生。コロナ禍の2021年は関連支援の効果で42件に減少した。だが、前受金商法の行き詰まりが目立ち始めた2022年から再び増勢に転じ、2024年は競合に加え、深刻なコスト上昇や人手不足が影響し、10月までに87件に急上昇している。
負債額上位5件のうち、3件がこの3年間で発生している。最大は「全身脱毛サロンC3」運営のビューティースリー(2023年9月破産、負債80億円)。被害者(債権者)は約4万6000人。
次いで、「脱毛ラボ」運営のセドナエンタープライズ(2022年8月破産、負債60億円)は約3万人。「女性専用全身脱毛サロン 銀座カラー」運営のエム・シーネットワークスジャパン(2023年12月破産、負債58億円)は約10万人に及んだ。大半の被害者が泣き寝入りだ。
国民生活センターが2021年12月に、「脱毛エステの長期間にわたる契約は『解約しなければならないとき』も想定して慎重に」と警鐘を鳴らしたが、その後も被害者はふくれあがっている。
東京商工リサーチは、
「有名人を広告塔に使い、契約時に多額の前受金を集め、倒産すると個人客が被害を受ける。前払金システムの脱毛サロンやエステ事業者は、決算内容を公開し、債務超過の場合は一定の前払い金を規制するなどの仕組み作りを検討すべきだ。
『前受金保全措置』をしているのかなど、若者でもわかりやすく、安全な契約方法を構築し、業界全体で信用回復に努めることが必要だ」
と指摘している。
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自転車操業の前金ビジネスは、集客が止まった時点でアウト
J‐CASTニュースBiz編集部は、東京商工リサーチ情報部の調査担当者に話を聞いた。
――ここにきて脱毛サロンなどの倒産が急に増えた背景には、ズバリ何があるのでしょうか。
調査担当者 人手不足や光熱費など、物価高に伴う運営コストの上昇、そして何よりも競争激化が背景にあります。もともとエステ業界は金融機関からの資金調達が難しい業種です。
急成長した後に倒産したサロンの多くが、著名タレントを使ったりする積極的な宣伝広告で集客します。数十万円を支払えば一定期間施術を何度も受けられる「通い放題プラン」などを掲げ、長期間の契約を結んで将来利用されるコストを先食いする形で、さらなる宣伝や出店費用に充てるパターンが多くみられます。
こうした自転車操業の前金ビジネスでは、集客が止まった時点で資金繰りが破綻してしまいます。
――そうした背景には、男性を含めてエステに通う若者が増えたことや、業界全体の過当競争があるのでしょうか。
調査担当者 男性の美意識が高まっていることもあるのかもしれません。エステサロンは特別な資格や免許がなくとも開業できるため、比較的新規参入の障壁が低く、店舗数は年々増加しています。大手や成長企業、地場に根付いた個人サロンの小規模事業者などと競合店が多く、飽和状態と言えるでしょう。
「脱毛」「フェイシャル」「痩身」…と、どのサービスでいくのかとか、特徴を打ち出すために多様なサービスを提供する店舗が増えてきましたが、結局はコストに見合う価格設定が難しく収益確保が厳しくなっているようです。