ティザンヌとは、いわゆるハーブティーのこと。病院に行くまででもないけれど、日常の中で植物の力を借りて身体のケアをしたい。フランスでは古くから、こころや身体の不調を整えるために取り入れてきました。
フランスのハーブ薬局「エリボリストリ」では、たくさんのティザンヌが壁面の棚に並び、喉がイガイガする、風邪を引きそう、なかなか寝付けないなどその時の体調に合わせて選んでくれます。
そんなティザンヌについて知りたくて、東京・原宿神宮前にあるハーブ専門ドラッグストアの『Dgs Phytreat』を訪ねました。
パリの老舗エリボリストリで働いていた店主のガロンカオリさんに、フランスのティザンヌ文化や取り入れ方、楽しみ方を教えていただきます。
ガロンカオリさん
『Dgs Phytreat』店主 薬剤師・フランス植物療法士。
フランス中の方に支持されている、パリの老舗薬草店『Herboristerie du Palais Royal』で実務に携わったのち、東京・表参道にハーブ専門ドラッグストア『Dgs Phytreat』をオープン。本場フランスでの経験をもとに、エルボリストリの機能を継承しながら、well-beingのために薬草、ハーブといった植物を生かす文化を発信している。ハーブ関連商品のブレンド監修なども行う。
Instagram:@dgs.phytreat
ハーブ専門ドラッグストアの『Dgs Phytreat』へ
―フランスではどんな風にティザンヌを取り入れているのでしょうか?
ガロンさん:私が働いていた老舗のエリボリストリでは、毎日たくさんのお客さまが身体の不調や気になることを相談しにいらっしゃっていました。
オーガニックスーパーでもさまざまなティザンヌが並んでいますが、それはどちらかというと、エリボリストリで取り扱うティザンヌは、日本でいう薬草茶〜漢方薬のような立ち位置です。
―不調を相談して、それに合うティザンヌを選んでもらうのですね。
ガロンさん:胃腸の不調や睡眠の悩み、更年期障害など、もう本当にさまざまです。一人ひとりのお話を聞いて、さまざまな不調に合わせて60種類近くのティザンヌブレンドのなかからおすすめしたり、サプリメントを一緒に提案したり。
飲み慣れた方は、シングルのティザンヌを揃えておいて自分で必要に応じてブレンドして飲んでいるという方もいましたね。
フランスでは病院に行く前に薬局に行ってみようという考えが根付いています。病院の予約が取りづらかったり、かかりつけ医の紹介がないと専門医に診てもらえなかったりと、日本より病院に行くまでのハードルが高い。
そういった制度の違いもあると思いますが、日本よりも自然の力で整えたいという考えの方が多いのも事実。ライフスタイルや文化の違いもありますね。
―ガロンさんもよく利用されていましたか?
ガロンさん:働く前から、エリボリストリには助けられていました。渡仏してから、肌荒れや体調不良、気分の落ち込みなど心身の不調の連続で、エリボリストリがあって良かったと感じる場面が何度もあって…。
つわりがひどかった時も、妊婦でも使用できるハーブのタブレットなどを愛飲していました。
日本でも、もっと日常的なハーブでのケアを取り入れてもらいたいと思い、『Dgs Phytreat』をオープンしました。
「Phytreatパーソナル調合相談」では、200種類以上あるシングルのティザンヌからその方の要望や体調に合わせたティザンヌをブレンド調合しています。もっと気軽に試していただける「ブレンドティザンヌ」も。ほかに精油や漢方薬なども取り扱っています。
こころと身体を整えてくれる、ティザンヌの魅力
―ティザンヌの魅力はどんなところでしょうか?
ガロンさん:身体を根本から整えてくれるところでしょうか。個人差はありますが、お客さまからも身体が軽くなったとか、気持ちが元気になったなど、いろいろなお声をいただきます。
味気なく飲み込むのではなくて、色や感触、香りを楽しみながら取り入れることができる過程も、ティザンヌなどハーブの魅力。
だからといって、ハーブだけでとは思いません。漢方薬や一般薬などと上手に使い分けて取り入れてもらいたいですね。
ティザンヌは、食べ物の一環、食事の延長にあるものだと思っています。だから自分の感覚に正直に、飲みたいと思うものを飲んでいます。
―そうやって気軽に飲んでいいのですね!
ガロンさん:だんだんと飲んでいるうちに、自分の好みの味や香りがわかってくるんです。お悩み別で選んでも良いのですが、自分が「好き」と思う味を選ぶ方が、気持ち良くケアできるかなと思います。
注いだお湯に溶け出すハーブの成分が身体に良いアクションを起こしてくれて、味としてそれを感じると考えると、味も大事な要素の1つです。
クラシックなものには、目的を重視したガタガタな味のティザンヌもよくあるんです。
「良薬口に苦し」と言ってしまえばそうですが、「おいしいから飲んでいる」「おいしいから続けられる」というほうが、私は良いなと思います。
ここでは、ブレンドのティザンヌは5〜10種類をブレンドしています。
フランスで培った経験をもとに積み上げてきた独自のブレンド理論をもとに、全体が丸くまとまるような、ハーブ同士のつなぎめがきれいになるようなブレンドを意識しています。
こちらは、ネトル、ペパーミント、ダンデライオンルート、バードックルート、ヤローの5種類をブレンドした「ベーシック メンテナンス」。滞りや不調のもとを排出して内側をメンテナンス。60gあたり3,760円で販売しています。
自分に合ったティザンヌを選んでみよう
―ティザンヌを飲んでみたいと思ったら、まずどうしたら良いでしょうか?
ガロンさん:まずは気軽にお店に来ていただければ大丈夫ですよ!不調がないと飲んではいけないと思われがちですが、そんなことはなくて。
目的やシーンに合わせて、飲み方もさまざまに変容させられるのもハーブの良いところです。
例えば、この1ヶ月はこういうところをケアしたいというのがあれば、集中ケアとして飲むこともできますし、喉の痛みや風邪のひきはじめなど気になる時に飲むなど、お守り的に常備している方もいます。
―フランスでは、自宅に常備しているティザンヌがありますか?
ガロンさん:タイムやレモンバーベナは、常備しているという方は多いですね。冷えが気になる時や、すごく疲れている時、お腹が不安定な時など、ちょっとした不調を感じたらすぐ飲む万能なハーブです。
初心者の方は自分でブレンドするよりも、バランス良く目的に合わせてブレンドされたものから試すとおいしくて続けやすいと思います。
こちらは、ブラックベリーリーフ、カシスリーフ、エリジマム、マロウブルー、レモンタイムをブレンドしたもの。レモンティーのような味わいで、ティザンヌ初心者にも飲みやすくなっています。60gあたり3,760円で販売しています。
ガロンさん:これから寒くなって、イガイガが気になる時におすすめなのが、「Berry sore」。これは気になる時にその都度飲む、喉や声のためのブレンドです。
ローマンカモミール、リンデン、レモンバーベナ、コクリコ、カウスリップをブレンドした「After work」。60gあたり3,760円で販売しています。
ガロンさん:寝る前にぴったりなのが、「After work」。その名の通り、1日の終わりにゆったりとリラックスしてもらいたくて作りました。ここへいらっしゃる方は忙しく働いている方が多くて、頭が休まらなくて寝つけないと悩む方も。
不安や緊張を和らげて眠りを誘うカモミールやリンデン、レモンバーベナに、赤い色がきれいなコクリコというフランスらしいハーブをブレンドしています。
色がすごくきれいなんです。ホットワインのような深い色で、見た目にも温かみを感じますよね。お子さまでも飲めるんですよ。
こちらは、コーラナッツ、レモンバーベナ、オレンジピール、チコリロースト、クローブをブレンドした「Coffeemood」。60gあたり3,240円で販売中です。
ガロンさん:なんとなく、ティザンヌというとリラックスして緩めてくれるものというイメージがあるようですが、ハーブにはさまざまな効能があって、落ち着かせるものと動かすものがあるんです。この「Coffeemood」は朝におすすめ。朝コーヒーを飲むように取り入れてもらえたらと思います。
クラフトコーラに使われるコーラナッツやクローブなど、元気にしてくれるハーブをブレンドしています。カフェインも含まれていますが、緩やかに現れてくるので日中の活動サポートにも良いです。
―目的やシーンに合わせて選ぶのも楽しいですね。飲むタイミングにおすすめがありますか?
ガロンさん:ティザンヌは葉が多いですが、茎や根、ピールなども。硬い部分は抽出されづらいので煮出す場合もありますが、基本的にはお湯を注ぐだけでOKです。
ティーポットにティザンヌを入れたらお湯を注ぎ、蓋をして5〜10分蒸らせば完成です。
ハーブが、ひとつの選択肢になってもらえたら
―冷えや生理痛など、病院へ行くほどではないけれどちょっとケアしたいという時に、こういったブレンドされたティザンヌを常備しておくといいですね。
ガロンさん:本当に辛い時は病院に行って欲しいけれど、ちょっとした不調を見て見ぬフリせず、ハーブに頼るという選択肢があることを知ってもらえたらうれしいですね。
私もコーヒーやお酒も飲みます。それでいいと思うんです。その分、ほかのことでケアできているかどうかが大切かな、と。
―そんな時に気負わず相談できる場所があるというのも心強いです。
ガロンさん:はっきりとした不調を感じなくても、寝不足や食事の偏りが気になるなど、なにかが足りなかったり過剰だったりすることがあると思うんです。
そのバランスをとってくれるのがティザンヌ。この場所を通して、まだハーブを取り入れたことがない方に広めたいと思っています。
いつか、パリのエリボリストリへ行ってみたい!
―噂によると、オンラインのコミュニティでフランス語部があるのだとか?
カオリさん:そうなんです。オンラインで「Phytreatweb」というカルチャーコミュニティも運営しているのですが、そこでフランス語部を開催しています。主に、ハーブ関連のボキャブラリーやハーブティーの飲み方、フランスでの暮らしで使う表現や用語を私が教えるというものです。
―ハーブ薬局に行きたくでもどう説明していいのかわからないし、翻訳アプリを使ってもうまく伝わらなかった経験あります。
カオリさん:そうですよね。不調や身体のことを説明するのは、私も働いているとき苦労しました。例えば、そもそもフランスには「冷え」という概念がないから、言い換えながらなんとか伝えていました。ニュアンスがすごく難しいんです。翻訳アプリでもちゃんと出ないし、コアな部位とか辞書にもない場合も。
目標としては、フランスにいった時にパッケージを見たらなんの商品かわかったり、ハーブ薬局で相談ができたりするようになること。
初心者でも楽しめるようなコミュニティなので、ぜひ興味があったらチェックしてみてくださいね。
***
小さな変化を見逃さず体の声を聴いてあげることは、心地良い暮らしへの大きな一歩。
ティザンヌについて知ったり、選んだりすることは、自分の身体の状態に目を向けることにも繋がるのかもしれません。
ティザンヌを楽しみながら暮らしに取り入れてみてください。
■お店情報
Dgs Phytreat(ドラッグストア フィトリート)
住所:東京都渋谷区神宮前4-26-27ルシード神宮前1F
電話番号:03-6679-2216
営業時間:11:00〜17:00 最終受付
定休日:日・月
Instagram:@ dgs.phytreat
※最新の営業情報などはお店のSNSなどでご確認ください。
ライター:高野瞳
一緒に読みたい記事
パリ在住の自然療法士・栗栖智美さんに聞く。心と体を整える、フランス人の日常に根づくアロマテラピーの魅力
フランスでは洋服のお直し代を国が一部負担!日本でも大切な洋服をお直しするという選択を