1.健康保険証の新規発行が12月に終了
マイナンバーカードを健康保険証として使うマイナ保険証への一本化に伴い、2024年12月2日以降、健康保険証の新規発行が終了します。
tips|そもそもマイナ保険証とは?
マイナ保険証は、健康保険証の機能を持ったマイナンバーカードのことです。医療のデジタル化・効率化を目的として2021年より運用が始まり、カード保有者の81.2%にあたる7,143万人が登録しています(2024年9月末時点)。
従来の保険証はいつまで使える?
従来の保険証の利用期限は2025年12月1日です。ただし、2025年12月1日以前に有効期限が切れる場合や、引越し・転職によって保険資格が変わった場合は、その日をもって利用できなくなります。
国民健康保険(国保)や後期高齢者医療制度の有効期限は保険者(都道府県や市区町村)によって異なり、その多くは2025年7月〜8月までとなっています。また、有効期限内に70歳、75歳の誕生日を迎える人や、外国籍の人も有効期限が異なる場合があるため、詳しくは発行元の自治体のホームページをご確認ください。
健康保険(健保)に加入している人で、カードに有効期限の記載がない場合は、2025年12月1日まで利用可能です。
マイナ保険証へ切り替えないとどうなる?
従来の保険証の有効期限が切れても、資格確認書を提示することで引き続き保険診療を受けられます。資格確認書は、マイナ保険証の登録が済んでいない人と、後期高齢者医療制度の被保険者を対象として、保険証の有効期限内に交付されます。なお、交付を受けるための申請は必要ありません。
また、マイナ保険証を持っていても、高齢や障がいなどによりマイナ保険証での受診が困難な人や、マイナンバーカードを紛失・更新中の人は、保険者に申請することで資格確認書を受け取ることができます。
資格確認書の有効期限は最長5年で保険者が個別に設定します。資格確認書の有効期間が終了した際は自動更新されるため、再申請の必要はありません。
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2.マイナ保険証のメリット・デメリット
ここからは、マイナ保険証の主なメリット・デメリットを紹介します。
マイナ保険証のメリット
(1)過去の医療記録を医師や薬剤師と共有できる
マイナ保険証を医療機関で利用する際、「医療情報の提供」に同意すると、過去の医療記録を医師や薬剤師に共有できます。口頭で伝えることが難しい薬剤情報や、過去の手術実績、受診歴などを正確に共有できるため、的確な診断や処方判断につながります。
(2)高額療養費制度がより使いやすく
※参考:厚生労働省保険局|高額療養費制度を利用される皆さまへ
※100万円の医療費で、窓口の負担(3割)が30万円かかる場合の一例
※高額療養費の支給額、および自己負担の上限額は、年齢や所得によって異なります
高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費の自己負担額が高額となった場合に、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が後日払い戻される制度です。
従来の保険証では、高額療養費制度を利用する場合、一時的に窓口で自己負担額の全額を支払うか、限度額適用認定証を窓口に提示する必要がありました。しかし、マイナ保険証では、受付時に「限度額情報の表示」に同意すると、窓口での支払いがはじめから自己負担限度額までになり、高額な費用を一時的に負担する必要がなくなります。
(3)医療費控除の確定申告が簡単に
マイナ保険証を使えば確定申告の際、医療費の控除申告が簡単になります。従来の保険証で医療費控除を受けるには、確定申告の際に医療費を入力し、5年間は領収証を保管する必要がありました。しかし、マイナ保険証では、医療費の領収証を管理・保管しなくても医療費通知情報がマイナポータルで管理できるため、e-Taxと連携することでデータが自動的に入力されるようになります。
(4)医療機関の業務が効率的に
従来の保険証では、保険資格をリアルタイムで確認できません。そのため、患者の保険資格の変更に気づかないまま医療機関を受診し、後日保険請求が差し戻されるケースが年間500万件以上発生していました。マイナ保険証であれば、保険資格の情報をリアルタイムで確認できるため、診療報酬の請求を正確におこなうことが可能になります。
マイナ保険証のデメリット
(1) システム不具合が頻発している
マイナ保険証を取り扱うシステムやカードリーダーに不具合が生じた場合、マイナ保険証だけでは保険診療を受けられません。全国保険医団体連合会の調査によると、2024年5月以降、7,134の医療機関でマイナ保険証に関するトラブルが発生しています(2024年9月19日時点)。不具合等でマイナ保険証が使えない場合、利用者は従来の保険証を提示するか、各家庭に届く「資格情報のお知らせ」とマイナ保険証を併せて提示する必要があります。
なお、2024年12月2日以降は、マイナポータルアプリの資格情報画面とマイナ保険証を併せて提示する方法でも対応可能になります。
(2)暗証番号を管理する必要がある
マイナ保険証で受診する際、カードリーダーの顔認証に複数回失敗すると、事前に設定した4桁の暗証番号を入力する必要があります。顔認証が通らず、さらに暗証番号を忘れたり、3回入力を間違えたりすると、受診できない場合があるため注意が必要です。
暗証番号の管理や機械の操作が難しい場合は、暗証番号を設定せずに利用できる「顔認証マイナンバーカード」の発行をおすすめします。このカードでは、本人確認として機械による顔認証だけでなく、受付で目視による顔確認もおこなえます。
tips|保険証廃止で高齢者施設の負担が増加?
特別養護老人ホームなどの高齢者施設では、入所者が医療サービスを利用しやすくするため、施設内で保険証を預かることが一般的です。しかし、マイナ保険証の場合、暗証番号と併せて管理する必要があるため、従来の保険証よりも紛失や盗難が発生した際のリスクが高く、預かりが難しいという課題があります。
さらに、マイナ保険証の発行や登録・更新ができない入所者に対しての代理申請などをおこなうことで、施設側の負担が増えることが懸念されています。