自分の「強み」や「スキル」を、最初から無理に探してはダメ

――企業側の意識と同時に、女性側の意識も変化しているのでしょうか。よりキャリア志向が強まったとか、家事育児に専念する期間をブランクと感じなくなったとか。

熊本優子さん まだまだ、正社員以外の経験はブランクだと思われている方が多く、むしろ、自分に自信がなく企業への応募も躊躇される方が多い印象です。

ご自身なりに「頑張ってきたこと」をうかがっていき、我々から「こういう強みがあるのではないでしょうか」とご提案することで、少しずつ自信を付けていただいて転職活動を前向きにしていただけるようになっていくように思います。

――「自分なりに頑張ったことを棚卸しして、言語化する」ことの大切さを強調していますが、具体的にはどう「言語化」して企業にアピールすればいいのでしょうか。

熊本優子さん 「言語化」とは求職者自身が気づき、言葉にできる状態と考えております。たとえば、自分が頑張ってこられた動機は「人の役に立ちたいから」とか、求職者自身が自分らしい言葉で実感を得られる状態です。

その際、いくつか気を付けるといいことがあります。

まず、「強み」や「スキル」を最初から無理に探そうとしないこと。「強み」を探そうとすると「他人よりできること」を考えてしまいがちです。自信を持って言えることが出てこなくなり、結局詰まってしまうことが多いです。

「強み」からいきなり考えるのではなく、日常の仕事や経験で「自分なりに頑張っていること」は何か? その中で自分なりに工夫していることや意識していることは何か? その工夫や頑張りが生きた場面やエピソードがあるか? …と考えていくといいでしょう。

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家事育児の中で、頑張って乗り越えたことを記録しておこう

――なるほど。たしかに自分の「強み」を考えると、力んでしまいますね。

熊本優子さん このプロセスがあれば、ブランクを感じていたり、パートを自分なりに頑張ってきたけど自信のなかったりという方からも、ポータブルスキルが見えてきます。

また、自分ひとりでやるよりも、身近な同僚や友人など第三者と一緒に考えると、より出てきやすいです。対話の中で気づくことが非常に多く、我々がサポートさせていただいた方からは、「育児や家事で経験したことも書類に書けると聞いて、心が軽くなった」とか「自分を肯定できるようになり、未経験チャレンジの励みとなった」という声もいただいております。

――それは、応募書類に書くのですか。

熊本優子さん 職務経歴書はもちろん、面接でも伝えていくことが大切です。その際、単に「コミュニケーション力があります」というだけではなく、そのスキルを身に着けたエピソードや事例、それを仕事の中でどう生かせるかといったところまで伝える必要があります。

――そうすると、現在家事育児で忙しい女性は、将来の転職、再就職に備えて普段から何に気を付けていればよいでしょうか。

熊本優子さん 現状育児をされている方は、日々本当に忙しいと思います。そんな中でも、今頑張っていることで壁になったこと、それをどう乗り越えたかを、少しでも記録しておくといいでしょう。そういったエピソードの積み上げが、アピールできることにつながります。無理に何か新しいことをする必要はありませんが、世の中で求められそうなスキルを身に着けられそうな時間やタイミングがあれば、少しでもやってみることが大事です。「学んでいる、学ぶ姿勢がある」ということだけでも、ポジティブな印象でプラスの評価になります。興味があることで、かつ仕事にも役に立ちそうな学びがあれば挑戦してみてはいかがでしょうか。