食楽web
●この連載は、独断と偏見で「遠くないうちに絶滅してしまうかもしれない」昭和の素晴らしい文化を守るお店を巡り、その魅力を記録するグルメ探検記です。
昭和という時代に根付いた店々は、時の流れに逆らいながら、今なお変わらぬ情景や味わいを大切に守り続けています。そんなお店たちを訪ね、時代を越えて受け継がれているものを書き留めていきます。2025年、昭和100年を迎えます。
足を運んだのは、神奈川県 大口。
焼肉屋さんも大型チェーンや都内のおしゃれなお店は数多いけれど、ここは大口。
そんなお店はありません。創業から26年、つまり私が地元で26年間通い続けている焼肉屋を紹介したいと思います。
知らない町の町角にある赤ちょうちんの焼き肉屋、人情と煙にまみれ、今夜の服への匂いを少しだけ諦めれば、、たどり着ける味がある。最高の和牛上ハラミをご紹介させていただきます。
創業1998年、79才のお父さんと息子さんで営む。
大口駅から徒歩3分、交差点の角に「焼肉」と書かれた赤い提灯に目を惹かれる。日が暮れるとつい引き込まれてしまう赤ちょうちん。
お店のドアをあけると、笑顔で出迎えてくれる、お父さんと息子さん。
今夜も賑わう店内
L字型のカウンターだけの店内は、仕事を終えたビジネスマンや、ご家族が横並びで座っており、屋台のような雰囲気で食べる炭火焼肉は、自然とお隣さん同士での会話が始まっていきます。
カバンや上着に匂いがつかないように、ビニールをもらって準備万端!
焼き肉屋暦50年のお父さんが厳選したお肉
盛り付けにもこだわる牛タン
ふくちゃんの美味しさの秘密は、新宿、銀座と若い頃に焼肉屋で修行された店主のお父さんが、その長い歴史で培った人脈で仕入れる良質なお肉、そしてそれを七輪で焼いて食らうこと。
ガスコンロのお店も多い中、やはり七輪の高熱でうまみを閉じ込めて焼く。
そして、眼の前にある七輪という絵がさらに肉を美味しくしていく。
良い肉かを自らの目でたしかめ仕入れ、美しく出す。というお父さん。
絶品の上ハラミ
和牛の上ハラミ。都内でもなかなかここまでの味を出すところは少ない。
これが食べたくて26年間通っています。
ご家族で来ているお客様へ今日はなぜふくちゃんへ?と聞くと「店員さんの人柄とお肉に惚れて、子どもが小さいときからかよっています」と。
カウンターはテーブル代わり
店主のお父さんは若い頃に有名店で修行したベースの味に、ふくちゃんオリジナルの味を加えています。
「昔の修行は大変だった。先輩が今日の月は四角いと言ったら、四角だと思い込みながら打ち込んだ。腕の悪いやつほど、道具にこだわって言い訳ばかりすると怒られた」
と、昭和感たっぷりのお話を煙越しに聞かせてもらう。
なお、お父さんの若い時の修行仲間は、いまの叙々苑の社長さんとのこと。
肉汁がすごいカルビ
キムチやタレ、コチュジャンも完全手作りのオリジナル。お父さんいわく、焼き肉はそれぞれの地域に合う味がある。
横浜ではこの味!と、こだわりつくったキムチやタレは完全手作りのオリジナル。
ちなみに銀座は薄味の方がうけるとのこと。おもしろい。
にんにくは食べ放題
お父さん80才で引退!?(あと1年?)
賑やかな店内に予約で鳴る黒電話に昭和を感じて
「父は80才になったら引退すると言ってます」と息子さん。
え、それってあと1年しかこのお肉食べれないということ??
「昔は17:00から営業して、朝の05:00までやっていたんだよ。深夜までやると、色々なおかしなお客様も多かったし、体力もきついからね。いまは、11:00まで。長く続けれるようにね、、、80才引退は、、今日撤回!命あるかぎりやるよ」とお父さん。
イルカ好きのお客様にもぜひきてほしい
焼き肉を食べながら、イルカを存分に語れるお店。そんな店を目指したいという未来の2代目
息子さんは人生のA面である焼肉屋さんの他に、B面としてイルカセラピーインストラクター、ドルフィンスイム・インストラクターとイルカに関わる資格を持っています。
「イルカが大好きなので、イルカについて語りたいお客様もぜひ来てほしいですね!」
と笑顔で語る。気持ちのよい接客はこんなところからも来ているんだなぁと。
締めはスープで
絶品出汁の味噌スープ(裏メニュー)
「お客様のリクエストで進化してきたお店なんですよ、飲み物もこれおいてくれとかを採用したりして。最近は、ユッケジャンがよくでます。今日は寒いので味噌スープをつくってみました。メニューにないですけど、これ食べたら風邪なんかひきませんよ」と息子さん。
お酒が苦手な方でもグイグイ飲めちゃうトマトハイ
煙にまみれないと、たどりけない名店が大口にある。
ぜひ、美味しいお肉と親子愛を堪能してみていただきたい。
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●SHOP INFO
ふくちゃん
住:神奈川県横浜市神奈川区大口通り130-10
tel:045-434-4446
営:17:00〜23:00
休:木曜(第1 or 第2水曜日不定休あり)
●著者プロフィール
鈴木英司
某IT企業役員 1977年横浜生まれ。 普段はデジタルを追い、土日は未だドアを開けたことのないお店を訪れ昭和へのタイムリープの扉を探す。好きな場所は路地裏。
(編集◎ヨネダ商店)