58歳で早期退職して始めた“第2の人生”「ここ半年は会社員時代より収入は多いです」娘の反応は

移住、開業、趣味……各分野で老後を狂ったように充実して楽しむクレイジー老人たち。彼らの清々しいほどに振り切った生きざまには、人生100年時代を後悔なく生きるための秘訣が隠されている?

◆定年後再雇用が始まる前に会社を退職

「還暦が迫って定年後再雇用が始まる前に58歳で会社を退職。女装子バーを開業しました」と、妖艶な笑みで語ってくれたのは、東京の下町・三ノ輪で、2年前に女装子バー「ブルーベルベット」を開店した青江亜希さん(60歳)。

「会社員時代は店舗開発に携わり、数人の店長を指導する立場でした。24歳で結婚し、愛娘も授かり、マイホームパパを目指したけど私も嫁も若く、結婚生活への期待が大きすぎて……ほどなく夫婦関係は破綻し、34歳で離婚。やっぱり無理はいけないですね」

◆移り住んだ街で女装して夜の街を徘徊

自身の性的指向は男性。42歳で移り住んだ三ノ輪でも女装して夜の街を徘徊。飲み屋コミュニティで知られた存在となる。

「52歳のとき、飲み友達のオーセンティックバーのオーナーから誘われて、日曜だけママをやることになって。当初は常連さんが私を見るなり、外に出て看板を確かめてました(苦笑)。6年半ほどママの修業を積んで、お客さんがある程度ついたので店をやる算段ができた。女装趣味のための開店じゃないんです。再雇用で会社にしがみつく選択肢もあったけど、65歳以降の人生は白紙。でも、水商売は気力と体力さえあれば続けられるし、定年もないですからね」

◆ディープな三ノ輪の地縁が後押し

ただ、女装という趣味、ディープな三ノ輪との地縁が後押ししたのも事実だろう。

「近隣の上野や浅草には昔からゲイカルチャーがあり、地元の人は子供の頃から女装子には見慣れている。すんなり私を受け入れてくれました。20年飲み歩くことで友達も増えましたし、店をやるならここしかない!って思ったんです」

こうして’22年12月、開店にこぎ着けた。開業資金の400万円は日本政策金融公庫からの融資で賄ったという。

「申請書のセールスポイント欄には『スナック密集地区への出店ですが、当方、女装者のため差別化が図れます』と書きました(笑)」

◆人生後半を楽しむ秘訣は?

クレイジーに振り切った人生後半を楽しむ秘訣を青江さんは、こう話す。

「開店7か月前、妹ががんで亡くなって……人間、何があるかわからないし、やりたいことはやっておかないと。深く考えていたら尻込みしてたし、エイ、ヤー!で決めてよかった。おかげさまで、ここ半年は会社員時代より収入は多いです」

ためらいなんてお構いなしの姿勢こそが、豊かな人生を送るヒントだ。

◆青江亜希さんの歩み

6歳  セクシュアリティを自覚

13歳 セクシュアリティを封印

24歳 普通に生きようと結婚

34歳 離婚

42歳 三ノ輪に転居

43歳 女装して夜の街を徘徊

52歳 日曜のみママを始める

58歳 女装子バーを開店

【金言】少数派であることを強みにせよ!

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[クレイジー老後]のススメ]―