「結婚したい」と願っていた32歳女。しかし、年収1,200万男子のプロポーズを拒否したワケ

今週のテーマは「女が3年の交際後、婚約破棄を決めた本当の理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:交際3年、32歳の結婚願望強めの彼女にプロポーズをしたのに、男が振られたワケとは

気がつけば、隆史と交際して3年が経っていた。

そんな隆史から先日「結婚する?」と言われ、本来ならば天にも昇るくらい嬉しいはず。

でも今の私は、そんな気持ちとは真逆の境地にいた。

そして結果として、私は隆史と別れる決意をした。

今年で32歳になる。このタイミングで隆史からのプロポーズを断るなんて、バカみたいかもしれない。はたから見ると、「なんで?」と思うだろう。

33歳、年収1,200万の優しい婚約者。

でもそんな彼を振ったのには、実は私なりの事情があった。



A1:恋愛初期の甘酸っぱさは、続かない。



隆史と出会ったのは、マッチングアプリだった。自粛モードで、出会いなんて皆無だったあの頃。当時私は29歳で、どうしても結婚がしたかったので、アプリに縋った。

そこで出会えた隆史は一つ上の30歳で、身長も高くて独身。

実際に会うと、隆史は、顔もかっこよくて性格も素敵で、会えば会うほど私は彼に惹かれていく。

「百合、好きだよ」

「私も。隆史と、ずっと一緒にいたい」

無事に交際が始まり、IT会社に勤める隆史と、同じくIT関連のスタートアップに勤める私は、どちらかの家で、リモートワークをすることも多かった。

ずっと一緒にいたら、嫌な部分も見えてくるもの。でも隆史は、嫌な部分が何も見えてこなかった。

「なんかさ…百合とはずっと前から知り合いだった感じがする」

仕事の合間にコーヒーを渡すと、隆史が真顔で、私と思っていたことを口にしたので、思わず深く頷く。

「わかる。隆史といると、ノーストレスなんだよね。とにかく居心地が良いし、一緒にいるのが自然というか」

「そうそう。まるで家族みたい」

「本当だね。不思議だよね」

居心地も良いし、ずっと一緒にいても嫌にならない。何よりもお互い大切に思い合って、好き同士でいる。

― これは結婚まで早そうだな…。

そう思っていた。しかし世の中が動き始め、リモートも減って出社回数が増えてきたタイミングくらいで、私はまず一度、「あれ?」となる。

気がつけば、交際期間は1年になっていた。

それでも、何も言ってこない隆史。一緒にいると楽しいし、平和だ。ケンカもなく、お互い楽しく過ごせる。

でも、そうじゃない。もっと必要なことがある。

耐えきれなくなり、私は隆史にプレッシャーをかけてみることにした。

「隆史。この先のこと、どう考えているの?」

「どうって?」

「結婚とか、ちゃんと考えてる?」

すると、豆鉄砲を食ったような顔になった隆史。

― え…。まさかとは思うけど、考えていなかったの?

アラサーの貴重な時間を、なんだと思っているのだろうか。腹立たしさとともに若干の怒りも湧いてきたけれど、残念ながら、何も考えていないのも隆史っぽかった。

しかし何かを察したのか、急に真顔になった隆史。

「もちろん。もう少し待っていて。ちゃんとするから」

「本当に?嬉しい。絶対、ちゃんと考えてよ?」

「もちろん」

― もう少しだけ待てば良いんだね?

そう思った。しかし私たちの状況は、ここから大きく変わっていってしまった。



A2:長すぎた春。待ちきれず、他の人を好きになったから



男の言葉なんて適当なもので、「ちゃんとする」と隆史から言われたものの、気がつけばそこからさらに1年が経った。

もちろん、その間に隆史が何もしていなかったわけではない。ちょうど転職のタイミングが重なり、忙しかったのも重々承知している。

「ごめん百合。僕今転職を考えていて。ステップアップにもなるし、何より給料も上がるし…。落ち着いてから、百合と結婚したいと思っている」

「そうだよね。それは理解できる」

「だからもう少し、待っていてほしい」

「わかった」

さらにこの転職によって、隆史の年収が800万から1,200万に変わったのも知っている。

「すごいね隆史。応援する!」

「ありがとう」

そう言ったものの、私の中では違う感情が芽生え始めていた。

― この人とこの先一緒にいたところで、結婚できるの…?

物事を先延ばしにしたり、決断ができない人は、永遠に決断できないと思う。それは仕事においてもプライベートにおいても同じで、決められる人はすぐに決められる。

でも隆史はどちらかというと優柔不断なタイプで、この先があるのかどうか、わからない。

― もう32歳なのに…。このまま一緒にいてもいいのかな。

そんな不安が、毎日頭をよぎる。そしてそんなタイミングで、私は別の人と出会ってしまった。

出会いは仕事だった。同じようなスタートアップでCFOをしている彼は、決断が早い。そして男らしくて、頼り甲斐があった。

ちょうど隆史が忙しくて、まったく会えなかった時期と被っていたこともあり、私は彼に強く惹かれていってしまった。

最初は、遊びのつもりだった。でも会う回数が増えれば増えるほど、私の気持ちはCFOの彼のほうに傾いていく。

そして久しぶりに隆史と会って目黒川沿いを散歩している最中、急に隆史がこんなことを言ってきた。

「百合ってさ、“寂しい”とか言ってこないよね」

「え?言っていいの?」

そういえば、私は隆史に「寂しい」と言ったことがない。それは隆史の負担になりたくなかったし、重い女だと思われたくなかったから。

「ん?どういう意味?」

「そういうことを言うと、隆史は嫌がるかなと思って」

「まぁ…そうだね。ビックリはするかも」

3年経っても、私たちは他人だ。

お互いのことなんて、一生分かりあえない。

そう思うと急に切なく、そして悲しくなってきた。

そしてそんなタイミングで、隆史からのプロポーズがきてしまった。

隆史の家でご飯を食べ、食器を洗って帰ろうと思っていた。そろそろ、別れないといけないものわかっている。でも隆史はもう長いし家族のようなもの。

隆史の存在が、自分の中でどれほど大きいものだったかも知っている。だからなかなか言い出せない…。

そんなことを考えていると、本当に急に、その時はやってきた。

「百合、そろそろ結婚しない?」

長年待ち侘びていたはずの、この言葉。隆史から、一番欲しかったはずのこの言葉。

でも私が真っ先に思ったのは、嬉しいとかでもなく、「なんで今?」ということだった。

人生は、タイミングがすべて。

特に結婚においては、タイミングしかない。

相当悩んだけれど、結局私と隆史は間が合わないのだと思う。そう悟り、私は隆史との交際に終止符を打つ決意をした。

そしてもう一人の彼氏と、結婚を前提に交際を進めている。



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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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クリスマス前の憂鬱