「今さら一人に落ち着くとは…」家政婦も驚いた“紀州のドン・ファン”電撃結婚…元妻との出会いは札束の力だった?

「紀州のドン・ファン」として知られた和歌山県の資産家・野崎幸助氏。その突然の死をめぐっては殺人の疑いももたれ、現在、元妻の裁判が行われている。本記事では、外から見えるドン・ファンと元妻の華やかな結婚生活の裏で何が起きていたのか、野崎家の元家政婦が回想する。

今回は、野崎氏がなぜ突然“55歳差の結婚”に至ったのか、生前の野崎氏を長年近くで見ていた家政婦の証言から迫る(第1回/全5回)。

※ この記事は「紀州のドン・ファン」の家政婦・木下純代氏による著作『家政婦は見た! 紀州のドン・ファンと妻と7人のパパ活女子』(双葉社、2021年)より一部抜粋・構成。

76歳のドン・ファンと21歳女性の電撃結婚

「今日、入籍届を提出しました」

2018年2月8日、ドン・ファンからそう結婚報告を受けたときは、ひっくり返るほどビックリしました。計4000人もの女性と、毎日3回セックスをしてきたあの人が、今さら特定の一人に落ち着くとは、とても思えなかったからです。

「僕は今まで2回結婚に失敗してきました。76歳の後期高齢者である僕にとって、結婚のチャンスは、あと1回しかありません。お願いです。サエさん(仮名)、僕にとって、人生最後の女性になってくれませんか? あなたの人生を必ず素敵なものにしますから」

そんなストレートなプロポーズによって、結婚のOKをもらったそうです。

彼にはこれまで2回の離婚歴があります。2人目の奥さんと離婚してからというもの、女性に懲りるどころか、好色ぶりはどんどんエスカレートしていきました。

「あなたは素晴らしい! ビューティフォー!」

「僕と結婚しましょう!」

会う人会う人に、こう連発するドン・ファンですから、女性だってその言葉を誰も本気で受け止めていなかったはずです。

そんな4000人斬りの性豪ドン・ファンを射止めたのは、当時、弱冠21歳のサエちゃんでした。ドン・ファンは当時76歳でしたから、なんと55歳差の超年の差婚です。ドン・ファンは彼女のどこに惚れこんだのでしょう。

サエちゃんに初めて会ったとき、55歳差婚が成立したことに納得しました。身長は167センチあり、ヒールを履くと180センチの長身に見えます。身長160センチのドン・ファンと並ぶと、まさしく凸凹コンビです。

色白で黒髪がサラッと長く、上から下までシックなコーディネートで、21歳とは思えない大人の雰囲気を醸し出していました。腕にかかえた高価なセリーヌのバッグを、弱冠21歳の彼女が持っていることに、少し違和感があったのは事実です。物静かで余計なことは何一つ言わず、どちらかと言えば、銀座のクラブでホステスとして働いていそうなクールビューティです。

「このコ、オッパイがDカップあるんですよ。すごいんですよ。ムフフフフ」

巨乳好きのドン・ファンが、欲情丸出しで、私に自慢げに言いました。若くて美人、ボディはピチピチでハリがあって、しかも身長が高い。ドン・ファン好みの条件が、全部揃っていました。イメージどおりの理想の女性と、ようやく結婚できるチャンスが訪れたのです。もっとも、理想だったはずの夢の結婚生活は、それからほどなくして、ガラガラと音を立てて崩れていくのですが……。

羽田空港で「ヘイ! カノジョ!」とナンパしまくるドン・ファン

サエちゃんが初めて和歌山県田辺のドン・ファン宅へやってきたのは、2017年12月のことです。その直前に知り合ったと聞きました。

ドン・ファンの説明によると、出会いのきっかけは以下のとおりです。

「羽田空港で滑って転んだとき、サエさんが慌てて駆け寄ってきて、僕のことを助けてくれたんです。こんな優しい女性がどこにいますか? 『大丈夫ですか?』と声をかけてくれた女性の顔を見たら、体中にビリビリと電流が走りました。美しい。素晴らしい。僕はこの人と結婚したい。いや、必ず結婚する。一目惚れでした」

「『助けてくれて、本当にありがとうございます。この御礼に、あなたを食事にお誘いしたいのですが、今日はこれから、お忙しく予定が入っていらっしゃいますか?』。そんなふうに声をかけたのをきっかけに、僕とサエさんのお付き合いが始まりました」

羽田空港での運命の出会いをきっかけに交際が始まり、東京や和歌山でデートを重ねて、スピード婚に至った――というのです。おそらく、この話はドン・ファンの作り話でしょう。

事実があるとすれば、サエさんに限らずドン・ファンは女性の名前を呼ぶときに大抵「さん」づけをします。女性を尊重しているのか、呼び捨てで呼んだり、愛称、ニックネームをつけたりすることなく、きちんと若い女性にでもさんづけをしていました。30年一緒にいた私も「木下さん」と呼ばれ、また常に敬語を使うよう心がけていたのか、東京弁を話そうとすると自然に敬語になるのか、怒っているとき以外はとても丁寧な話し方をする方でした。

とにかく、空港で誰かれかまわず「ヘイ! カノジョ!」と声をかけまくってナンパするのは、ドン・ファンの常套手段でした。サエちゃん以外にも「僕が転んだら、優しく声をかけて、助けてくれたんですよ」と紹介する女性が、かつていました。

ドン・ファンとその女性が空港で出会ったことは事実のようです。彼女は九州から、東京まで整形しに来たと言っていました。

「空港で社長に優しくしてくださったそうですね。ありがとうございます」

そう私が御礼を言うと、「いえ、違います。『あなたかわいいですね。お食事しませんか』と声をかけられたんで」と否定されました。まったく面識がない若い女性をいきなりナンパして、そこから交際にまでこぎつけてしまう。おそらく札束の力による豪腕です。

一方、ドン・ファンとサエちゃんは、空港でのロマンチックな出会いからは程遠く、報道がもし事実であったとすれば、パパ活斡旋業者に高額な紹介料を払い、パパ活で手っ取り早くお金を稼ぎたい……サエちゃんを紹介してもらったのではないかと思います。