40歳以降、“死ぬまで”支払い義務がある介護保険料。既存の保険料への上乗せや天引きにより、ほとんどの人は自動的に支払っているため、介護保険料を納めているという自覚がない人も少なくないかもしれません。超高齢化社会の日本で必要不可欠な「介護保険制度」について、芸人の安藤なつ氏と介護ジャーナリストの太田差惠子氏による共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。

〈登場人物紹介〉

●安藤なつ…介護歴約20年。現場のことはある程度わかるけれど、制度やお金のことについて詳しく知りたい。

●太田差惠子…取材歴30年以上の「介護とお金」に詳しい介護ジャーナリスト。費用を抑えるための介護制度や、プロの手の借り方について解説。

「介護保険制度」はかなり使える!

CHECK!

□介護保険でサービス利用料が1割負担で済むのはなぜ?

□介護保険はみんなが支える制度です

太田:介護で最も重要な「介護保険制度」について解説していきますね。

安藤:介護サービスのお金が9割も安くなっちゃうアレですね。

太田:そもそも、介護保険制度というのは、介護を必要とする人をその家族だけでなく、社会全体で支えることを目的とした制度です。

国民のすべてに、40歳になった月から、介護保険料納付の義務が発生します。この支払いは、一生涯続いていきます。「私は介護サービスを使わないから保険料は、払わない!」ということは許されませんし、要介護状態になったからといって、保険料を払わないわけにもいきません

この保険料を支払うことで、要介護状態になったときに、介護サービスの費用が1割負担で済むようになります。残りの9割は、自治体がサービス事業者に支払ってくれます。ただし、所得が多い親は、2割、3割負担です。

この9割の財源は、40歳以上の人が支払っている介護保険料が半分、残りの半分を国・都道府県・市区町村がそれぞれの割合で、負担しています。

安藤:介護保険料の支払いって、40歳からなんですね。ということは、私、支払い義務発生していましたね。払っている認識がないですけど……

太田:その点は大丈夫! 介護保険料の支払いは、自分で支払いをしたり、特別な手続きをしたりする必要はありません

40歳以上64歳以下の人は、健康保険料に上乗せして徴収され、65歳以上の人は、年金から天引きされる仕組みとなっているので、ほとんどの人がほったらかしで、支払いが済んでいます

安藤:いつの間に。それって意外とみんな知らない話かもしれませんね。



[図表1]介護保険制度の仕組み 出所:『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より抜粋

太田:介護保険料を支払っている人は、介護サービスを使うことができます。65歳以上の人は、第1号被保険者となり、病気の有無や種類とは関係なく、介護が必要と認定されれば、誰でも使えるようになります。40~64歳の人は、第2号被保険者と呼び、「特定の16疾病」が原因での介護が必要になったときのみ使えます。

安藤:介護が必要と認定って? どういうことですか?

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「保険料を払う」「認定を受ける」で、「7〜9割安くなる」

太田:介護が必要かどうかを決めることを、「要介護認定」といいます。介護が必要であると認定する仕組みのことで、この認定をもらうと、介護サービスが1~3割負担で使えるようになります。



[図表2]「要介護認定」を受けた場合出所:『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より抜粋

安藤:ムムム……「要介護認定」。突然出てきて意味がわからない。

太田:「介護保険料を支払う」「要介護認定を受ける」この2つで、介護保険サービスが1~3割負担で使えるようになると覚えてもらえば大丈夫です。

安藤:わかりました! 「保険料を払う」「認定を受ける」で、「7〜9割安くなる」ですね。

太田:はい。先ほど言ったように、所得の高い人は、介護保険が適用になっても、自己負担が2割か3割となります。目安は、単身で、年金収入が280万円以上の人は2割、340万円の人は3割です。

自分の親は1割と決めつけていると、実は2割負担で費用が想定の倍だったということもあります。新しく認定を受けると結果と一緒に「介護保険負担割合証」が送られてくるので、負担割合を確認することができます。

介護保険料の払い忘れに注意しましょう!

介護保険料の支払いは、40歳から生涯続きます。65歳以上の場合、原則、年金から天引きされる「特別徴収」です(1年間に受け取る年金額が18万円未満の人などは、「普通徴収」)。

ただし、「特別徴収」であっても、75歳で後期高齢者医療制度へ移行する場合や年度の途中で他の市区町村から転入した際には、一定期間は「普通徴収」となるので注意が必要です

。納付期限までに納めないと、延滞金が加算されたり、介護サービスの負担額がアップしたりとペナルティを課されます。救済措置もあるので、もし、親が払い忘れていることに気づいたら早めに市区町村へ相談しましょう。



[図表3]65歳以上の介護保険料支払い方法は2つ出所:『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より抜粋

安藤 なつ
メイプル超合金
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)

太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト