日本には、相続登記せずに放置された土地が多数存在します。それらは代替わりするごとに相続人が増え、いざ相続登記しようと思っても、収拾がつかないケースが多々あります。そういった事態を回避するため、2024年から相続登記が義務化されましたが、実際に相続人が増えてしまった場合、乗り切る方法はあるのでしょうか。

全く知らない「いとこ」から、突然の連絡

筆者の事務所で、土地の相続について相談がありました。

相談者の大山さんは40代女性で、2人姉妹の長女です。幼い頃に母親を亡くしています。

祖父母も大山さんが生まれる前に亡くなっていたために、これまで母方の親戚付き合いは皆無でした。しかし大山さんと妹のもとに、母の弟の長男、つまり「いとこ」にあたるという人から突然連絡があったそうです。

「相続書類への署名と押印をしてほしい」との依頼で、いとこだという方の話によると、母の祖母、つまり大山さんにとっての曾祖母名義の土地があるそうで、その土地を相続するための手続きを進めたいようです。

大山さんは、できるだけ面倒ごとにならないように、穏便にすませたいと考えており、いとこの希望通り、相続放棄しようと考えているものの、問題がないかどうか、アドバイスがほしいとのことでした。

おそらく大山さんのいとこは、自力で相続人全員の戸籍謄本をすべて集め、戸籍の附票から大山さんと妹さんの住所を調べたのでしょう。そして、いとこ1人で土地相続する旨を記載した遺産分割協議書にそれぞれ署名と押印をするよう連絡してきたものと思われます。

 大山さんの元には、その後、司法書士の事務所から相続関連の書類も送られてきており、それも持参していました。

筆者が書類を確認すると、土地は5坪ほどしかなく、添付されていた写真を見ても、住宅の建築はおろか、駐車場にも使えそうにない、狭すぎてとても役には立たないと思われる形状でした。

ところが土地の住所を確認したところ、港区麻布十番駅の駅から徒歩1分の立地です。実勢価格は坪単価1,000万円程度。5坪でも5,000万円ほどの価格になるのではないかと思われました。

面倒ごとには関わり合いになりたくないといっていた大山さんですが、筆者が出した5,000万円という数字を聞くと、考え込んでしまいました。

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いとこは土地をひとり占めしたいが…

「先生、やっぱり私も、相続分相当の代金を分けてもらいたいです」

詳しく遺産分割協議の内容を確認すると、曾祖母名義の土地は相続登記が行われておらず、今回、いとこはその登記を行おうとしているようでした。

書類と一緒に送られてきた家系図を確認したところ、大山さんの母親が土地の名義人である曾祖母の孫のうちの1人で、孫世代の4人は全員がすでに他界していました。そのため、曾孫世代が代襲相続人となり、大山さんとその妹、いとこ、そのほか5人の合計8人が相続人になっています。



[図表1]相談者の家系図

いとこは自分1人で土地を取得しようとしていますが、相続不動産を登記するとなると、相続人8人全員が遺産分割協議書に署名と押印する必要があります。

いとこが提示する内容に納得がいかない場合は、署名と押印を拒否すれば、いとこの希望は実現しません。しかし、それでは単なる問題の先送りにしかならず、解決には至りません。

しかし、大山さんがいうように、ほぼ他人ともいえる相続人で集まり、遺産分割協議の話し合いのテーブルに着くというのは、あまり現実的な方法ではありません。