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●全国各地の知られざる名産品をイラストレーター・ワタナベマキコさんがイラストと共に紹介する企画。今回は熊本県の絶品極上海苔のふりかけです。

 料理家の友人に誘われて向かった美食の宝庫・九州の熊本県のウマいものを探す旅。前回は南関あげを堪能しましたが、次の目的は「海苔」です。

 友人によれば、『佐田海苔店』というすごい海苔屋があるのだとか。なんでも「佐田海苔店の海苔を知ったらほかの海苔が食べられなくなる」とのこと。料理家がそこまで言ってるんですから、これは行ってみたくなりますよね。しかも、どうやらその店の「パラちゃん」と呼ばれる海苔のふりかけが尋常ではなく美味しいとの噂。


熊本県の海沿いへ「海苔」を探しに出発

 有明海の海苔は全国的に有名ですが、今回、熊本を旅するまで「熊本イコール海苔」というイメージが私にはまったくありませんでした。調べてみると、熊本県宇土市は海苔の漁場が多く、海苔の生産量は全国でもトップクラス。実際に海沿いの国道を車で走っているときに、車窓からは海苔棚の風景が続き、海苔直売所の看板が続々と現れる風景を見て、ようやくそのことを実感しました。

インスタ映えスポットで海苔をいただく


「長部田海床路(ながべたかいしょうろ)」

 まず向かったのは、海の中へと続く道が絶景ポイントの「長部田海床路(ながべたかいしょうろ)」。海の中へ続く道と海中から電信柱が突き出ている姿が不思議な絶景を生み出しています。

 有明海というのは、日本一干満差があります。画像のように、満潮時には海ですが、干潮になると沖に向けコンクリートの長い道(約1km)が出現するのです。何のための道かというと、漁場へと続く道。港と、干潮時に沖に停泊する船との間を車で往来するんだそうです。遠浅の海だからこその風景。夜は船舶の航行のために建てられた電柱の明かりが海に浮かび上がり、とても幻想的になります。

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海苔クラムチャウダーと“ばら海苔”の旨さに開眼

 この素敵な映えスポットを望む場所になんともかわいらしい四角い建物を発見。そこには「OKAGESAMA MOBA」というロゴが。中に入ると雑貨屋さんのようなオシャレな雰囲気ですが、売ってあるのは海苔、もずく、わかめ、ひじき……といったシブいラインナップ。そう、MOBAとは「藻場」のこと。ここは海藻のセレクトショップなのです。

 もずくの量り売りやソフトクリーム海ぶどうトッピングなど面白い商品がたくさん。でも今回の目的は海苔ということでばら干し海苔が入ったクラムチャウダーをいただきました。ばら干し海苔は海苔の原藻をバラバラにほぐし、乾燥させたもの。これがやたらと美味しかった。

 ミルクに海苔がめちゃくちゃ合うんです。海苔が濃厚なクラムチャウダーのスープを吸って柔らかく拡散し、海苔の風味と相まって非常に美味しくなる! すっかり気に入って緑が鮮やかな一番摘みの新物の“ばら海苔”をショップで購入。屋上テラスから海の道の絶景を眺めながらこの遠浅の海が美味しい海苔を生むんだなぁ、と感慨深くスープを堪能しました。


海苔の直売所『住吉海苔本舗』の駐車場にあるおにぎりキッチンカー

 次に立ち寄ったのが海苔の直売所『住吉海苔本舗』。店内には有明海の一番摘みを使用した高級海苔のほか魅力的な味付けのりがたくさん。梅、わさび、唐辛子など試食ができるのですがこれがまた絶妙にウマい。8切カットのアルミパックはかさばらずお土産にも最適。

 お店を出ると駐車場の入り口におにぎり屋さんのキッチンカーが停まっているのを発見。見ると看板には「海苔屋さんのにぎりめし」。これは食べないわけにはいきません。ツヤツヤでパリパリの香り高い上品なのりをまとったおにぎりはじっくり噛みしめたくなる味わい。親切な店員さんにばら海苔がたっぷり入ったお味噌汁もサービスしてもらったのですが、これまた最高。汁物×ばら海苔って本当に最高ですね。