東京23区の中でも大学進学率には大きな差があります。また、大卒者が暮らす割合が多い区・少ない区の間にも大きな差があり、その差が「所得の差」になって表れているといいます。本稿では、不動産ジャーナリストである榊淳司氏が監修を務めた、東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会による著書『東京23区 中古マンション 格差の地図帳』(宝島社)から一部抜粋し、23区の大学進学や大卒者にまつわる実態をご紹介します。

23区の大学進学率ランキング1位は「渋谷区」

大学進学率とは、いわゆる4年制大学のみならず、短期大学、大学・短期大学の通信教育部、放送大学なども含めたものだが、その数値は23区内でかなりの開きがある。

東京都人口統計課による『令和5年度学校基本統計(学校基本調査報告)』によれば、まず2023年度の23区全体の大学進学率は73.3%となっている。高校を卒業した者の約7割が大学に進学しているのだ。

そして、もっとも大学進学率の高い区は、渋谷区で82.1%となっている。23区の平均よりも、1割近く進学率が高い。

この統計は在住者の大学進学率ではなく、所在する高校の大学進学率を表しているため、名門校の割合が高ければ大学進学率も上がる。とはいえ、教育水準に関するひとつの指標にはなるだろう。

次いで2位は目黒区の81.8%、3位は文京区の81.1%となっている。この渋谷区、目黒区、文京区が、23区における大学進学率トップ3である。進学率が8割を超えている区としては、ほかにも千代田区と港区があり、上記2区を入れて5強といってもいいだろう。

ちなみに、23区外の都下も含めれば、断トツの1位は国分寺市である。その割合は、なんと9割超えの91.2%。東京で大学進学率が9割を超えているのは、国分寺市以外にない。

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23区の大学進学率最下位は「荒川区」

一方、大学進学率が低い区は、最下位が49.7%の荒川区、微差で下から2番目が49.8%の葛飾区、下から3番目が52.3%の足立区となっている。6割以下なのは、この3区だけであり、ワースト4位の台東区も60.8%と足立区よりも10%近く高いため、荒川区、葛飾区、足立区の3区は、とくに大学進学率が低い区といえる。

大学に進学するだけが人生の選択ではないが、大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る大学全入時代において、進学率が5割前後というのは、かなり目立つ。

大学進学率が高い区というのは、それだけ教育熱が高いエリアということだ。さらに、進学率上位の区は、平均所得においても高い区ばかりである。反対に、進学率が低い区は、平均所得も低い。

1位の渋谷区には、渋谷教育学園渋谷高等学校、都立青山高等学校や都立広尾高等学校、青山学院高等部、國學院高等学校、実践女子学園高等学校などがあり、2位の目黒区には都立駒場高等学校や都立国際高等学校などがある。また、3位の文京区にも、駒込高等学校、郁文館高等学校、桜蔭高等学校、東洋女子高等学校など、高い大学進学率を誇る高校が多い。

ちなみに、全国的に公立高校よりも私立高校のほうが大学進学率は高い傾向にあるが、目黒区は公立高校のほうが進学率が高い。それだけ、目黒区は公立高校が充実しているということである。