お金は問題なかったはずが…入居から1年で発覚した思わぬ事実
AさんとBさんは入居前、施設での利用料金の目安額をAさんの公的年金額を目安に20万円として考えていました。Aさんが入居した施設は以下のとおり、入居一時金を支払った上で、月額費用15万円をベースとした料金体系でしたので、十分足りるだろうと考えていたそうです。
・月額費用:15万円(食費・管理費・光熱水費・特定施設入居者介護に対する自己負担額)
・家賃は入居一時金にて13年分の前払い/電気、通信費は別途個人契約により直接支払い
・別途介護保険サービスの自己負担額や個別的な選択によるサービス利用料、そのほかのサービス利用料が利用に応じて必要
しかし、Aさんの銀行口座の残高は入居後わずか1年で100万円減少することに。もともと施設入居時に一時金を支払ったあと、600万円しか残っていなかった残高は500万円を切ってしまいました。自宅は売りに出していましたが、なかなか買い手が見つかりません。
このままのペースではあと5年しかもたないなか、Bさんは危機感を抱いたそうです。もし今後、入院などをした場合には足りなくなるのではないか。まだまだ子どもの教育費もかかるなか、もしこちらの手出しが必要になれば厳しい。そこで、BさんはAさんの預金残高が1年間で残高が100万円も減少してしまった原因を突き止めようと、引き落とし内容を確認しました。施設入居後、Aさんの銀行口座から引き落としされていたお金は以下の3つでした。
・施設からの引き落とし
・本人による引出
・電気代/通信費の引き落とし
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老人ホームの落とし穴
想定外だったのは、施設料金の値上げと本人によるレジャー的支出です。施設からの引き落としは当初月18万円程度でしたが、4ヵ月目以降、食費と管理費の2度にわたる値上げにより、請求額は20万円を超えるのが通常となっていました。
月によっては22万円程度の引き落としがある月もあり、どうやらレクリエーションと支援サービスの利用料がかさんでいたようでした。Aさんは入居後、さまざまなレクリエーションに積極的に参加していました。
また、持病があったため、週に1回程度かかりつけ医のもとに通院しており、その都度付き添い費用やタクシー代などがかかっていたのでした。Aさん自身が引き出している金額もありました。月2〜3万円程度の定期的な引き出しです。
Aさんに尋ねると、通院時の交通費のほか、入居後、施設で菜園を借りて家庭菜園を始めており、菜園を利用する際に必要となる道具や苗、肥料などの材料を購入するために使っていたとのことでした。
あわせて電気代や通信費などの費用は別途個人で契約となっており、これらの金額を合わせると、毎月の支出額の水準は約27万円であることがわかりました。入居前の自宅での生活では年金で暮らせて毎月数万円の黒字がある状態でしたから、生活費が約10万円上がった計算でした。
一方、現在の施設の契約内容を確認したところ、途中で退去した場合は入居一時金として支払った家賃のうち、15%は初期償却され返金されないものの、1,500万円返金を受けることができることがわかりました。とはいえ返金されない金額は約1,100万円。大きな金額に迷われましたが、このまま日がたてば、預金残高とともに返金額もさらに減少することが見込まれます。自宅を不動産会社に買い取ってもらうことも検討しましたが、買取価格は安く、今後の見通しを変えられる金額ではありませんでした。
「ごめんお母さん、やっぱり引っ越してほしい」Bさんは楽しそうな母親に、仕方なく頼み込みました。結局、Aさんはわずか1年で老人ホームを退去することになったのです。