「このままでは医療崩壊が再び現実に」看護職員らの“過酷な夜勤実態”巡り、労組が調査結果発表 状況改善訴える

医療従事者らによる労働組合、日本医療労働組合連合会(医労連、加入人員数約16万人)は12月12日、都内で会見を開き、「2024年度夜勤実態調査」の結果を発表した。

医労連の佐々木悦子中央執行委員長は、「長時間の夜勤により、少なくない看護職員が疲れ果て、職場を去り、人員不足に拍車がかかっている」として、看護職員の増員と働き方の改善を訴えた。

「日本医療連が今年の春に実施した、看護職員の入退職に関する調査でも、回答した医療機関のうち約7割が『必要な看護師を確保できていない』と答えていました。

看護師の不足から、病棟を閉鎖したり、病床を減らしている病院も少なくありません。

このまま夜勤体制の状況改善がなければ、コロナ禍で経験した医療崩壊が再び現実になってしまいます」

「2交代」病棟の割合、過去最多を更新

この調査は、医療機関で働く看護職員等の夜勤状況を全国的規模で把握するため、毎年実施しているもの。2024年6月の勤務実績について、350施設、2594職場、看護職員9万6583人、看護要員12万203人が回答した。

調査結果によると、8時間以上の長時間勤務となる「2交代」病棟の割合は50.7%で昨年より増加し過去最多を更新。また、「2交代」の職場の半数近くで、16時間以上の長時間夜勤が行われている実態が明らかになった。

「人手不足が解消しなければ、状況改善しない」

医労連の松田加寿美書記次長は「夜間労働、特に長時間夜勤は人間の生体リズムに反していて、心身に与える有害性が科学的にも明らかになっているが、医療機関では夜勤や交代制の勤務を避けることはできない」としたうえで、次のようにコメント。

「人事院は1965年、看護師の夜勤制限の必要性を認め、『夜勤は月平均8日以内』『1人夜勤禁止』などの『判定』を出しました。

看護師確保法の基本方針でも、看護師の離職防止対策として夜勤負担軽減のため、『複数・月8日以内の夜勤体制の構築』が掲げられましたが、現場では慢性的な人手不足のため順守されていません。

実際、今回の調査では「3交代」の職場で3割弱の看護職員が月9日以上の夜勤を行っており、「2交代」の場合でも約4割の看護職員が月4.5回以上の夜勤に従事していることがわかりました。

特に重篤・重症の急性期患者を担当する、ICU(集中治療室)・CCU(冠疾患集中治療室)等の職場では夜勤回数オーバーが突出していて、『3交代で9日以上』が約4割、『2交代で4.5回以上』は5割以上という数字になっています。

また、夜勤専門で働く看護師の割合は17.8%と増加傾向が続いていて、人員が不足する中で、夜勤を専門に働いてくれる看護師に頼らなければ、夜勤体制を維持できないという状況が推察されます。

やはり、人数の少ないままで勤務シフトを調整するなどしても、根本的な人手不足を解消させない限り、状況の改善にはつながりません。

看護職員の増員や、実効性のある夜勤規制など、抜本的な改善を図るよう国に求めていきたいと思います」

現場からも「過酷な状況」改善訴える声

この日の会見には、日本医労連に加盟する全医労(全日本国立医療労働組合)中央執行委員の岩谷香寿美氏と、全日赤(全日本赤十字労働組合連合会)中央執行委員長の五十嵐真理子氏も出席。それぞれ、現場の状況について語った。

岩谷氏は「年々、夜勤の過酷さが増している」として以下のようにコメントした。

「2人で夜勤を回しているところでは、1人が休憩に行ってしまうと、残った1人ですべて対応しなければならない、といったことが起きています。

また、育児で時短勤務中の方に対しても、『土日だけでも夜勤できないか』『1回でもいいから夜勤に入ってくれないか』とお願いすることが横行しています。

長く働いていくうえで、環境を改善することが重要だと思いますから、是正を訴えていくとともに、国民の皆さんにも、この状況を知ってほしいです」(岩谷氏)

続いて、五十嵐氏も「赤十字の病院など、日赤の施設の場合、他の病院に比べれば人員も多く配置されているが、それでもすでに過酷な状況がある」と訴えた。

「今の1年目、2年目の新人看護職員の中には、コロナ禍で学生時代に夜勤実習を十分に積むことができなかった人たちも含まれています。

そうした若い人たちが、なかなか職場で夜勤として独り立ちをすることができない中で、ベテラン層が踏ん張っているという実態があります。

やはり、夜勤をする人を増やしたり、今いる人たちが安全に働き続けていくためにも、国に夜勤の制限を作ってほしいです」(五十嵐氏)