◆パチンコ業界で景気がいいのは来店演者のみ?
筆者はパチンコ・パチスロ業界の関係者とお話をさせていただく機会が多々ありますが、とにかく景気のいい話題はほとんどありません。現時点で景気がいいのは、今年再改正されたホールを対象とした広告宣伝ガイドラインにまつわる人たち。実質解禁された「来店イベント」で稼いでいる演者さんだけ、みたいな感じにもなっています。
有名な人(※あくまでもこの業界界隈で)はもちろん、そうでない人もホール側がとにかく賑やかしで来店してもらいたいということで、一般の人からしたら「誰、それ?」みたいな人も引っ張りだこの状態です。ちょっと打とうかなと思って入ったホールが来店イベントをしていたら、つい回れ右をしてしまう筆者としては、なんだかなと思う次第。
ただほとんどのファンは、何かしらやっていたら期待してしまうからこそ、ホール側は来店イベントでもやらないといけない……なんていう半ば強迫観念的なものがあるのかと思わざるをえない今日この頃。
ただ、そんなホール側の思惑に対して素直に騙されてくれるファンも、どんどん減っているようです。この時期に業界関係者の間で話題になりがちなものに、レジャー白書で発表されるファン人口があります。
◆パチンコファン人口は660万人に…
レジャー白書とは公益財団法人日本生産性本部が毎年発行している、日本の余暇娯楽活動における統計的かつ継続性のある資料。その数字が正確に状況を反映しているかどうかはさておき、それでも継続性があるだけに数字の推移は実勢に即したものだと思います。
白書に記載された数字によると、30年ほど前の一大パチンコブームの際は、パチンコファン人口は3千万人という、国民の3人に1人、いや18歳以上だと考えれば2人に1人はそれなりにパチンコを楽しんでいたのかな……という数字。
そんな、かつては間違いなく国民的娯楽であったパチンコが、白書によると1990年代後半には2千万人を割り、2013年には970万と、1000万人を下回ってしまいます。2013年当時は1000万人ショックだなんて業界激震となりました。その後に1000万人の「大台」を回復したこともありましたが、この10月末に発行された2024年版の白書によると、660万人にまで落ち込んでいます。
◆新規ファン獲得に向けて努力しているが…
もちろん業界はこの状況をなんとかしようと、遊技機におけるスペック面での緩和を筆頭に、ファン向けイベントを積極的に行ったり、東日本大震災以降自粛されていたテレビCMを再開したりと、あの手この手の施策を行っています。
ただそれがファン人口の回復につながっているのかというと、筆者は率直に頑張っているなあ〜とは思いますが、少なくとも白書に掲載される数字が表すように「効果はイマイチ」というのが現実です。
◆ホール軒数も右肩下がりに…
ファン人口が減れば当然ながらホール軒数も右肩下がりで減っていきます。現時点で6千軒をなんとかキープしている状況ですが、不思議なことに市場規模はおよそ15兆円と、前年比で約1兆円増えているのです。これはスマパチやスマスロ、さらには新紙幣対応への設備投資が影響していることが考えられます。
パチンコ業界において、その原資となっているのは「ファンが負けたお金」というのは間違いありません。しかし、その人口が減っているのに市場規模が増えているのは、実におかしなことですが、それはつまり、ファンの投資額が大きくなっていることとイコールです。
◆「今のファンから絞り取ること」が鮮明に
しかし、ホールにお金を落としてもらわなければ新機種も導入できませんし、新たな設備投資もできません。そのために来店イベントをしてお金を落としてくれるファンを呼び込んでいるんだと思いますが、そこら辺も白書には「年間平均費用」として掲載されておりまして、ひとり当たりの費用は前年比約2万円増ということに。スペック面の緩和で荒い機種ばかりになり、たくさん出るようになった反面、吸い込みもキツくなってしまったということなのです。
結果、少なくなった客からたくさん取るという方向へのシフトが鮮明になったともいえますが、それで先があるのかどうか。ファンを増やすためによかれと思ってやっていることが、逆に自分の首を絞めているのではないか……。そう思わざるを得ない現在の状況ですが、業界がファンを増やすために取り組んでいる施策が正しいのかどうかは、また来年の白書の数字に表れるのではないかなと。さて、来年はどんな数字になっているんでしょうか。
文/キム・ラモーン
【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。