ウォーレン・バフェットは決めたルールは、決して破りません。そこには少年期の苦い思い出による後悔がありました。今回は、桑原晃弥氏の著書『ウォーレンバフェットに学ぶ ゆっくりと着実にお金持ちになる56のルール』(ビジネス教育出版社)より一部抜粋・再編集して、「ルールを決め、守る」というテーマについて解説します。

16歳で競馬場に出入りし「勝ち馬を予想する能力」を磨く

ウォーレン・バフェットの投資原則は難しいものではありません。

自分が経験したことや、ベンジャミン・グレアムの本を読んで学んだことから自分なりの「ルール」をつくるわけですが、バフェットがすごいのは一旦、これだと決めたルールに関してはとことん守り抜くところにあります。

そこには少年時代の苦い経験があります。

バフェットは幼い頃から小さなビジネスを行っていましたが、16歳の頃には競馬場にも出入りするようになります。年齢的に馬券を買うことはできませんでしたが、競馬場の床に落ちている馬券を漁って、当たり馬券を見つけ出すこともあれば、「厩務員特選馬」という予想紙を自分でつくって販売することまでしていました。

競馬場の許可を得ないものだけにたちまち売ることは禁止されますが、バフェットは予想紙をつくるために、連邦議会議員の父親に頼んで議会図書館から勝ち馬予想に関する本を何百冊も借りてきてもらい、徹底的に読み込んだほか、何ヶ月分もの古い予想紙を入手、自分の予想と結果を比較することで「勝ち馬を予想する能力」を磨きぬいています。

たくさんの情報を読み込み、数字を分析するという点ではバフェットが株式投資で大切にしていることですが、その能力を競馬予想でもいかんなく発揮します。

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バフェットが犯した「最悪の過ち」から学ぶべきこと

こうした経験を通してバフェットは「競馬場の原則」を発見します。

それは「1、1レースだけで帰る者はいない。2、損するレースに賭けなくてもいい」というものであり、同時に「きちんと分析して賭けていない人間が多い集団に加わるほどいい」ことも学んでいます。

ところが、これだけのことを学び、予想能力も高めたはずが、ある日、バフェットは1人で競馬場に行き、最初のレースではずしたことで冷静さを失ったのか、損した分を取り返そうと、そのあとのレースにも次々と賭け続け、175ドル以上を失います。

それはバフェットにとって1週間分の新聞配達で得られる金額でしたが、金額以上にショックだったのは「損するレースに賭けなくていい」という原則を忘れ、損失を失敗したのと同じギャンブルで取り返そうとしたことでした。

バフェットは「私は最悪の過ちをした。当たり前のことだったのに。胸がむかむかした。そういうことをやったのはそれが最後だ」と振り返っています。

投資などで人が失敗をする理由の一つが「感情」や「欲望」を抑えられないことですが、だからこそバフェットの「損は出さない」「ルールを忘れない」はとても大切な原則なのです。

バフェットのルール

ルールを決め、ルールを守ることで冷静さを維持しよう。

桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト