紀州のドン・ファンから“お小遣い月100万円”も夫婦の営みを拒否…家政婦が見た元妻の「非常識」な振る舞い

「紀州のドン・ファン」として知られた和歌山県の資産家・野崎幸助氏。その突然の死をめぐっては殺人の疑いももたれ、元妻の裁判が行われていたが、今月12日和歌山地裁は無罪判決を言い渡した。本記事では、外から見えていたドン・ファンと元妻の華やかな結婚生活の裏で何が起きていたのか、野崎家の元家政婦が回想する。

今回は、元妻がなぜ21歳の若さで76歳の資産家との結婚を決めたのか、家政婦が推察する(第3回/全5回)。

※ この記事は「紀州のドン・ファン」の家政婦・木下純代氏による著作『家政婦は見た! 紀州のドン・ファンと妻と7人のパパ活女子』(双葉社、2021年)より一部抜粋・構成。

1か月100万円のお小遣い

紀州のドン・ファンとサエちゃん(仮名) が電撃入籍したのは2018年2月8日のことです。前年12月にドン・ファンと知り合ってから結婚するまでの間は、基本的にはパパ活を1回するたび10万円のお小遣いをもらっていました。

入籍してからのサエちゃんは、最初の1か月〜2か月100万円もの巨額のお小遣いをもらっていたとされています。

一度目は目の前で現金をボンと渡し、3月と4月は経理の女性社員が預金通帳に100万円ずつ振りこんでいたとも聞きます。もちろん、私が目の前で現金の受け渡しや預金通帳を見たわけではないので、真偽のほどは定かではありませんが……。女性社員と私の2人で、いつもブツブツ愚痴を言ったものです。

「お小遣いをこんなにもらって、冗談じゃないわよねえ。私たちはずっと働いてるのに、こんなにすごいボーナスなんて一度ももらったことないのに……」

パパ活で月収100万円を稼ごうと思ったら、1回10万円×10日間もドン・ファンに尽くさなければなりません。泊まりがけで東京から和歌山まで通えば、拘束時間はいっそう長くなります。これではほかの仕事なんてほとんどできません。

もしかしたらサエちゃんは、あくまで私の推察にすぎませんが「いちいちパパ活するよりも、結婚しちゃったほうがコスパはよっぽどいい」「結婚なんて紙ペラ1枚でできる。ただの儀式だ」と割りきっていたのかもしれません。

月収100万円が保証される結婚生活が始まった瞬間、サエちゃんの態度は急に豹変したように思えました。1日3回のロングセックスに献身的に付き合うどころか、ドン・ファンの唯一の楽しみである性生活にまったく付き合わず、セックスの誘いから逃げ回るようになってしまったのです。

破綻した新婚生活

脳梗塞を患ってからのドン・ファンは、ろれつがうまく回らなくなってしまいました。口が半開きになっているため、いつもヨダレをダラダラ垂らしている状態です。

末端まで血液がきちんと回っていないのか、晩年は足が真っ黒でした。あの足を見たとき「社長、大丈夫ですか!?」とビックリして一生懸命足をさすってあげたものです。なのにサエちゃんは、「大丈夫?」といった素振りをあまり見せることもなく、見て見ぬふりをしているようにも見受けられるところがあったように思えました。

ただ、サエちゃんに同情をする気持ちもあります。ドン・ファンは大人用オムツをつけており、排泄もうまくできなくなっていました。ウンチがお風呂にプカプカ浮かび、セックスのときも粗相をして、床やベッドをしょっちゅう汚してしまいます。排泄物を掃除したり、不潔な環境で毎日セックスを迫られたりするのが堪えられなかったのでしょう。

結婚してからというもの、サエちゃんとドン・ファンはあまり一緒には寝てはいなかったように思えます。そしてセックスをしないだけでなく、ついに2人は別々の部屋で寝るようになったのです。

ドン・ファンの部屋は自宅の2階にあります。家政婦の私は1階の部屋で寝泊まりしていたのですが、その部屋にサエちゃんがやって来るようになりました。キングサイズのベッドに、気づくとサエちゃんが寝ているのです。

「社長が寂しがるから、上に行ったほうがいいんじゃない?」そう促しても、彼女は「大丈夫」の一言。ドン・ファンと同じベッドで寝たくないものだから、サエちゃんは私の寝室で寝るのです。

新婚の新妻とセックスできないどころか、別々の部屋で寝るとなると、ドン・ファンの怒りはたちまち爆発します。

「あのバカ女め。セックスどころか一緒に寝ないんだったら、いる意味が何もない。もう別れるぞ!」

ドン・ファンが怒り始めました。

「サエちゃん、社長怒ってるから、ちゃんと一緒の部屋で寝なきゃ駄目よ。何のために結婚して夫婦になったのよ。高いお小遣いだってもらってるんでしょ。このまま私の部屋で寝ていたら、じきに離婚されちゃうわよ。社長も、一緒に寝ないならもう別れたいって言ってるんだから、悪いけど、上で寝てよ」

そう言って説得したところ、彼女はしぶしぶドン・ファンの部屋で休むようになりました。しかし、夫婦の営みが復活したわけではありません。

「眠い。今日はクタクタに疲れた」
「生理だから無理……」

そんな言い訳をしながら、サエちゃんはドン・ファンとのセックスから巧妙に逃げ続けました。結婚してからの3か月間のうち、もちろん本当のところは2人にしか分かりませんが、2人が体を重ねたのは1回か2回くらいではないでしょうか? あるいは完全にセックスレスだったかもしれません。

まだ若く、ドン・ファンの排泄物のこともあったので致し方ないところもありますが、お世辞の一つも言えず、無表情でツッケンドンな受け答えしかせず、夜はセックスに応じようともしない。ドン・ファンが誘っても寝たふりをし、朝になっても起きてこない。お昼までグーグー惰眠を貪る。

「お前、まだ寝てるのか。よく寝るなあ。とっくに12時の針を回ってるぞ!」

普段「サエさん」と「さん」づけで呼ぶドン・ファンも、さすがに機嫌を損ねて「お前」呼ばわりして怒ったものです。

私と2人きりのときには、「もう、あいつとは別れたい。ワタシの考えていたのと違った」と、よく愚痴をこぼしていました。誰の目から見ても、サエちゃんの非常識とも言える振る舞いは日増しに増え、とても新妻とは言えないものにも見えました。