保護者が子どもの頃にした「体験」は、自分の子どもにも影響します。自身もひとり親家庭で育ったシングルマザーの菊池さん(仮名)へのインタビューを通じて、ひとり親世帯の厳しい現実をみていきましょう。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より紹介します。

地域のクラブ活動は子どもたちの貴重な居場所

菊池彩さん……長男(小学生)・長女(小学生)

菊池彩さんは二人の子どもを育てながらパートで働いている。昨年から社会保険労務士の取得を目指して勉強を始めたという。現在の収入はパート代が月収8万から10万円、そのほか、離婚した元夫からの養育費と児童手当、児童扶養手当、自治体からの手当を受給している。

―お子さんは習い事等をされていますか。

息子はスポーツ教室と、町会主催のクラブ活動と、その二つをやっています。娘もスポーツ教室に。とある団体から費用の支援を受けて通えるようになりました。スポーツ教室は日曜日に行っていて、子どもたちに居場所ができたなと思います。生活の一部になったというか。

平日は学童があったので、日曜日にも居場所ができて良かったです。父親がいないですし、私も毎週どこかに連れていけるわけではないので。家に子どもが二人いると、私が資格の勉強をするのも難しくて、そういう意味でも良かったです。

スポーツ教室に来ているのはほかの学校の子がほとんどです。そこで新しく友達ができて、違うコミュニティができています。学校で習い事の話を友達と対等にできるのもいいですね。スポーツ教室でバスケやったりテニスやったりしてるんだねって。これまでは「自分はしていないから」っていう引け目みたいなところもあったみたいで。

息子はどちらかというと町会主催のクラブ活動のほうが好きみたいです。うまくなりたいという気持ちがあるみたいで、「今日はこんなことができるようになった」とか楽しそうに話しています。元々自分からやりたいと言い出したこともあって、受け身ではない感じですね。

送迎や当番、役員制度…子どもの居場所を守るための負担

―地域のクラブ活動に参加することで、保護者としての負担はありますか。

そうですね。送迎は絶対してください、練習にも基本的に一緒についていてほしいという感じですし、「当番」というのがあって、その日は人数だったり備品の数の確認をしたりという役割がありますね。あとは、何年かに一度「役員」が回ってくるみたいで、その年は本当にその仕事に追われるみたいです。「練習は何時から何時です」とか、「雨の場合は何時までに連絡します」とか、そういう連絡を毎回するとか。時間的な負担ですね。

ただ、みなさんお互い助け合うという雰囲気があって、温かいんですよ。クラブの成果を発表する日が私の資格試験に重なってしまったんですが、息子の衣装の着付けとか全部やってあげるからって言ってくださったりして。とは言っても「当番を代わってください」と毎回言えるわけではないと思うんですが。

―ほかの大人や保護者の方は働かれている方も多いですか。

勤めで働いている人は少ない印象ですね。子ども会で役員をしたり、地域に関わっている感じで。自分もクラブ活動に参加して、という人が多いです。私みたいに昼間は外で働いて、夕方に帰ってきて、そのまま子どもを活動に連れてきて、という雰囲気ではないですね。でも、そんな中でも、こちらのことを理解してくださってありがたいなと思っています。

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ちょっと卑怯化もしれないですけど…子どもの「習い事」に対するホンネ

―団体の支援を受ける前は、習い事などについて家庭の中でどう話されていましたか。

習い事となると月々5,000円以上はするところが多いですよね。現実的には厳しいです。子どもたちが学校で聞いてきて何かやりたいという話をしたときには、「ちょっと調べてみるね、考えてみるね」というふうに言っていたと思います。

ちょっと卑怯かもしれないですけど、「習い事だとこの曜日のこの時間は決まった場所に行って決まったことをするからちょっと負担になるかもしれないよ」みたいなことを言っちゃったりもしていましたね。良い印象ばかりじゃないものを与えるというか。