東大合格者は“試験直前”をどう過ごしたのか。「どれほど慣れていても」絶対にやるべきことが

―[貧困東大生・布施川天馬]―

 冬も深まり、毎朝外出すると寒さに手がかじかむ季節になりました。年末年始といえば、あいさつ回りに忘年会など、忙しく過ごされる方も多いのではないでしょうか。

 これは学生も変わりません。来る1月18日・19日には大学入試共通テストが開催されます。これは、古くは「センター試験」や「共通一次」と呼ばれていたものの後継試験で、国立大学受験者はもちろんのこと、私立大学受験者も含めた大半の受験生が受験する国内最大規模のテストです。

◆ほとんどの受験生にとって重要な大学入試共通テスト

 この結果によって進学先がほぼ決定してしまうこともあります。例えば、国立大学受験には共通テスト受験が必須ですが、あまりにも受験者数が多い場合には、この共通テストの点数をもとにして「足切り」を行うケースがあります。

 足切りとは、点数が一定に満たない受験者を二次試験の受験資格なしと切り落とすことをいい、いくら第一志望の対策をしていても、足切りに合えば受験すらできずに門前払いされてしまいます。

 逆に、私立大学の多くは、共通テストの結果が十分優秀であれば、それをもって合格とし、入学試験を免除する仕組みがあります。

 これを採用していない大学もありますが、早稲田大学やMARCHの多くなど、たいていの大学、学部に通用します。例えば東大受験者の多くは得点率90%以上を記録するので、東大受験前に、試験会場に足を踏み入れずして早稲田大学の入学資格をゲットします。

 さて、これら重要試験においては、実力を十分に発揮しなくてはいけません。そのために前日までは入念な準備をしようと考える方も多いでしょう。

 ですが、実際に試験前日はどのように過ごせばいいのでしょうか。今回は、東京大学の学生に実際に話を聞いて分かった「試験に受かる子の試験前日の過ごし方」をお伝えします。

◆「ギリギリまで詰め込み」はNG

 東大生というとガリ勉のイメージがあるかもしれませんが、意外とそんなことはありません。むしろ、勉強程度のことをサラッとこなしつつ、勉強以外のことも結果を出している人のほうが多い。

 今回のインタビューでも、予想通り「前日のぎりぎりまで勉強していた」人は少数派でした。具体的には2人だけが「問題演習まで含めてがっつり勉強していた」と回答しました。

 ただし、彼は勉強していた理由として「そうでもしないと落ち着かないから」と答えており、直前に必要な知識を一つでも多く詰め込むためではなく、自分を落ち着かせるための方策として勉強を選択していたことがわかります。

 逆に、一番多かった答えも「勉強していた」ではありました。ただし、新しいことを本腰を入れてやるのではなく、「まとめノートを一冊だけ持ち込んで軽く復習する」とか「重要事項の再確認だけやった」程度で、最終調整で済ませたようでした。

 そのため、地方から上京して試験を受けた人たちはみんな「勉強道具はほとんど実家において来ていた」とのこと。できる受験生ほど、カバンの中はスカスカの状態で試験会場に行くのかもしれません。

◆「あえて遊ぶ」のも一つの戦略


 さすがに「遊んでいた」と答えた人は2人だけでしたが、中には全く勉強しない人もいるようです。「受験生が遊ぶなんて!」と思われるかもしれませんが、これも立派な戦略です。

 私も現役の受験生だったころ、試験一週間前にどうしても勉強のやる気がなくなって丸々一日アニメを見て遊んだことがあります。

 結局、身体的、精神的に悪いものを抱えたままで試験会場に赴くよりは、前日までにそれらを洗い流して、さっぱりした気持ちで臨んだほうが、結果は出やすい。

 試験一週間前までには「やるべきこと」を一通り終えておくべきでしょう。そうすれば、突然心身に不調をきたしても、調整だけに時間を費やす余裕ができます。

◆本番で実力を出し切るにはスケジュール管理能力が必要

 また、ほとんどの受験生が、家から(ホテルから)試験会場までのルート確認をしたそうです。試験当日になって万が一にも迷ってはいけませんから、どれほど慣れ親しんだ道であっても、念のため下見しておくことが重要です。

 結局、東大に合格するような子たちは、ほとんどが試験前日はどっしり構えて体を休めていたようです。当たり前といえば当たり前ですが、やはり「試験前日までに準備を終わらせるスケジュール管理能力が重要」と再確認できた形に。

 本番で力を発揮するためには自然体で過ごすことが一番だと本能で分かっていたのかもしれません。

 土壇場で焦らないように、常に時間的な余裕をもって臨む態度は、受験勉強で養成されたように思います。試験までのスケジュールがどうなっているか、一度ご家庭で再確認してもいいのかもしれません。

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】

1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)