なぜ家族が後見人になれないのか?
なぜそうなるのか。それは、 後見人に対する支払い能力があるとみなされるからです。後見される人にお金がなければ、弁護士などが選ばれることはなく、裁判所は家族を後見人にします。お金(後見人報酬)が取れるか取れないかで後見人を決めているのが実情です。
そうして決まった後見人が銀行とやり取りすることで、通帳が再発行され、暗証番号も再設定されます。しかし、それは、後見人が今後仕事をするために必要な手続きで、通帳やカードが親や家族に戻ってくることはありません。
その後、親自身が後見人に残高を聞いても、「教えない」「教えてもわからないでしょ」「知ってどうするの?」などと言われ続けることがしばしばです。
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実際に使えるのは「介護費」だけ。だがそれすらも……
当初のお金を下ろす目的であった、介護費・家の増改築費・車の購入費・孫の学費・家族経営の会社の資金繰りのうち、実際にお金を使うことができるのは「介護費」だけでしょう。その「介護費」も家族が親の預貯金から下ろせるのではなく、後見人から家族か介護施設の口座に振り込まれます。
「親のお金は親だけに使うもの」という誤解が蔓延し、「親のお金を『親の意向』に沿って使う」という制度本来の趣旨がないがしろにされているからです。
後見人報酬も馬鹿になりません。基本報酬として毎月5万円程度、毎年60万円程度、5年で300万円、10年なら600万円取られるでしょう。
保険金の受け取り、不動産売却、遺産分割などの業務が発生すれば、ボーナスとしてさらに数百万円を裁判所と後見人のタッグに取られてしまいます。後見人の報酬が増えるほど、本人の財産、ひいては家族の遺産は目減りします。
そもそも「成年後見制度を利用しないと取り引きできません」と言ってきたのは銀行ですから、「後見人報酬は顧客管理コストとして銀行が負担すべき」では、と私は思います。
宮内 康二
一般社団法人 後見の杜 代表