キンカンの育て方のポイント


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キンカンは意外と簡単に栽培することができます。キンカンの植え付け適期は3月頃なので、この時期から栽培をスタートするのがベスト。気温が上がると旺盛に生育し、開花や摘果を行えば、翌年の2月〜5月中旬頃には収穫できます。ここからは、ポイントごとにキンカンの基本の育て方を解説します。

用土


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【地植え】

植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

果樹用にブレンドされた培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合土をつくってもよいでしょう。

水やり


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水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温の高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がって木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行うようにしましょう。

【地植え】

植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて過度に乾燥する場合は水やりをして補いましょう。

【鉢植え】

日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が緩慢になるうえ、表土が乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。

肥料


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【地植え、鉢植えともに】

2月、5月、10月頃に、有機質肥料を与え、土によくなじませましょう。

注意する病害虫


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【病気】

キンカンはほとんど病気の心配はありませんが、うどんこ病や炭疽病が発生することがあります。

うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になります。放置するとどんどん広がり、光合成ができなくなって、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら、ただちに病気の葉を摘み取って処分しましょう。

炭疽病は、春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビが原因で発生する伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点ができるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて枯れ込んでいくので早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していきます。水やり時に株全体に水をかけると、泥の跳ね返りをきっかけに発症しやすくなるので、株元の表土を狙って与えるようにしましょう。

【害虫】

キンカンに発生しやすい害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にもよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。

カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。

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キンカンの詳しい育て方

苗木の選び方


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苗木には、春に挿し木して休眠期に掘り上げる1年生苗、さらに一年間育成した2年生苗、2年生苗を1年間育成した3年生苗、実つきの大苗などがあります。1年生苗は一番価格が安いものの育成期間が必要で、数年は収穫を見送ることになります。2年生、3年生と苗が大きくなるほど価格が上がりますが、収穫までの期間が短く手軽に始められるのがメリットです。苗木を入手する際は、幹が太くてがっしりと締まっており、勢いのあるものを選びましょう。

植え付け・植え替え


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キンカンの植え付け・植え替え適期は3月頃です。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。

幹が1本のみまっすぐに伸びている幼い1年生苗を入手した場合は、地際から40〜50cmの高さで切り取りましょう。すると生育期に入って側枝が出やすくなります。

地植えの場合、順調に育っていれば植え替えは必要ありません。あまり育ちがよくない場合は、日当たりや風通しなどの環境を吟味し、よりよい場所に植え替えてみましょう。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから果樹用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めてから植え付けます。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。根づくまでは、支柱を立てて誘引しておいてください。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。

幹が1本のみまっすぐに伸びている幼い1年生苗を入手した場合は、地際から30〜50cmの高さで切り取りましょう。すると生育期に入って側枝が出やすくなります。

鉢植えの場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して軽く根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直しましょう。

摘果


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摘果とは、果実を間引きする作業です。果実が多く実りすぎて一つひとつの果実が小ぶりになるのを防ぎます。作業は果実が大きくなってきた頃が適期。キンカンの果実は枝の先端にまとまって数個がつくので、小さい実やいびつな実、傷がついている実などを選んで摘み取ります。1枝に1〜2個を残すのを目安にするとよいでしょう。

収穫


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キンカンの収穫適期は2月〜5月中旬です。黄色〜オレンジ色に色づいたものから順に切り取って収穫しましょう。

剪定


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キンカンは毎年剪定をして、樹高をコントロールし、風通しをよくしましょう。剪定の適期は収穫後の3〜5月です。

樹高や横への広がりを抑えたい場合、だいたいのアウトラインを決めて、はみ出している枝を分岐部まで遡って切り取ります。

また、木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」、ほかの枝に絡んでいる「交差枝」なども元から切り取ります。密集している細い枝があれば、木の内側まで日差しが届くように間引いて透かしましょう。さらに20cm以上の長い枝があれば、先端を少し切ります。

収穫用でも観賞用でも楽しい! キンカンの栽培にチャレンジしてみよう


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ビタミンCをたっぷり含むキンカンは生食でき、種なしや糖度を高めた品種など、近年では品種改良が進んで、よりおいしくなっています。受粉樹が不要で、1本で結実するのもいいですね。ぜひ庭に植栽して、極上の完熟果を味わってください。

Credit

文 / 3and garden



スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。