i☆Ris・茜屋日海夏、無理しなくてもいいんだと気付けた瞬間

今年12周年を迎えた声優アイドルユニット・i☆Risの茜屋日海夏のソロアーティスト名義「Himika Akaneya」としての2ndシングルが発売中だ。

今作は放送中のTVアニメ『MFゴースト 2nd Season』のエンディングテーマ。1stシングルも人気作品『MFゴースト』のエンディングテーマ曲であったことで、新たなファン層が開拓できたと語る茜屋。2ndシングルの制作秘話に加えて、グループとしてもソロとしても大忙しだった2024年を振り返ってもらった。

◆役や仕事によって人格とテンションが変わる難しさ

――i☆Risでシングルリリース、映画2作品、全国ツアー、グループ史上最大キャパの周年ライブ、「プリパラ」関連のイベント。ソロ活動でもシングルリリース、舞台、イベント出演など、大忙しの1年だったと思います。

いつも先々のことは気にせず、その日その日を精一杯生きているという感じです(笑)。何年か前に、今より声優のお仕事が多くて、自分のやりたい舞台、i☆Risの活動が重なって、てんやわんやなスケジュールだった時期があって。そのときがあまりにすさまじかったので、今年は忙しくてつらい……って感じることがなかったかもしれないです。

――仕事の種類が多岐にわたるので、その切り替えも難しそうです。

そうなんです。演じる役ごとに人格が変わったり、仕事によって求められるキャラクターやテンションが変わったりするので、スケジュールというより、その切り替えができなくて、頭がごちゃごちゃになるのが大変で。

スケジュールについては、抜くところは抜くというやり方を覚えて、昔よりは自分の中で調整がきくようになってきました。

ここ最近はリリースイベントでファンの方と会うことが多くて、みんなの応援に背中を押されてがんばれるので、いつもすごく助かってます。アイドルの活動については、頑張っているというよりも、みんなに元気をもらってる感じがありますね。

少し体調を崩してしまったときに、「声が出づらくてごめんなさい」と告知してリリースイベントに出たら、みんなが「全然気にならないから、お大事に」って声をかけてくれて。無理しなくても思いが伝わってるんだと感じたし、みんなの優しさがしみました。


◆広い会場でみんなを見渡せるのが好き

――11月4日開催のデビュー12周年ライブ「i☆Ris 12th Anniversary Live -初☆アリーナMM(マジみて)‐」がありましたが、印象に残っていることはありますか?

まず思ったのは、広いのに一人ひとりの顔が見える! 2階、3階もまんべんなく見えるので、意外でしたね。

――12周年にして最大キャパでしたが、その数字はプレッシャーに感じるか、逆にやる気が出るか、どちらでしょうか。

私は見てくれる人が多いほうがラクに感じます。誰かひとりだけにレスを送るのが苦手で、なるべく平等にしたいと思っちゃうタイプで。広い会場でみんなを見渡せるのが好きですね。

――会場が広いと覚えることも増えて、さらに楽曲のマッシュアップなど新しい演出もあり、大変だったのでは?

う〜ん、そこまで負担は感じなかったですね。他の活動のスケジュールが立て込んでたこともあって、9周年ライブの「i☆Ris 9th Anniversary Live~Queen’s Message~」のときがいちばん大変だったかも。溜まってたものが弾けて、思わず「Thank you forever!」の曲中で涙が出たくらい。あのときに比べたら、ぜんぜんまだ大丈夫だなっていう感じでした。

けっこう前から大きい会場と決まってたので、自分にプレッシャーをかけて、いつもよりリハに集中できてたのもあるかもしれないです。

◆メンバー全員で抱えた悔しさをバネに


――その結果、素敵なライブになったと思いますが、振り返ってみていかがでしょうか?

自分のなかではもっとできたな……と。毎回思うことなんですけど、その悔しさをバネに次も頑張るぞという気持ちをメンバー全員で抱えてライブが終わって。次もまた前向きにやるぞ、と思えるライブでした。

――毎回、いいライブを終えても、もっと頑張るという気持ちを語っていますが、パフォーマンスに対する意識がすごく高いですよね。

K-POPが好きでライブを見ることもあって、自分のなかではそこと比べているのかもしれません。とはいえ、私たちi☆Risはそれぞれで違う活動をしながら、集まったときにはガッと集中するタイプなので、そこは唯一無二だなと思うこともあります。

来年のツアーも決まっているので、今まで以上のパフォーマンスを見せられるように頑張りたいですね。

――今年8月の「としまビールフェス」出演など、ソロアーティストとしての活動も増えていますね。

少しずつ外のイベントにも呼んでいただけるようになって嬉しいです。としまビールフェスでは、会場のみなさんが楽しそうにビールを飲んで楽しんでくれる姿を見られて良かったですね。私は仕事なので飲めなかったんですけど、ステージの準備では、ビールの缶をプシュって開ける音でサウンドチェックをしたんです(笑)。そんな感じで気負うことなく、いつものノリでライブをできました。


◆ソロ楽曲を通して見つけた「自分の得意」

――ソロの1stシングルに続き、2ndシングルも『頭文字D』の後継作品であるTVアニメ『MFゴースト』のテーマ曲になったわけですが、新規のファンが増えた実感はありますか?

世界中で愛されている作品だということもあって、MVのコメント欄に海外の方のコメントが多かったり、作品きっかけで曲を知った方がリリースイベントに来てくださったりしますね。すごく嬉しいです。

――2ndシングル「Side U (Prod. AmPm)」は『MFゴースト 2nd Season』のエンディングテーマということもあって、ゆったりしたテンポの楽曲です。i☆Risの楽曲とは雰囲気がかなり違うように感じますが、どう感じましたか?

i☆Risではテンポの早い楽曲が多いんですけど、私はもともとゆるいテンポの曲を聞いたり歌ったりするのが好きなので、こっちのほうが馴染みがありますね。

1stの「Stereo Sunset (Prod. AmPm)」は今作よりもさらに低いキーだったし、「Side U (Prod. AmPm)」も普段よりは低い音なので、私って意外とこういう音程も得意なんだと思って。i☆Risでは高音パートを任せてもらう事が多いけど、高い音を出すとしてもファルセットのほうが聞く側は心地いいのかなとか、AmPmさんのおかげで新しい発見がありました。

――ご家族や友人など周りの人の感想は聞きましたか?

両親は、このくらいのテンポとキーが心地良いので、いままで私が歌ってきた曲より聞きやすいと言ってました。幅広い年代の方に聞いてもらえたら嬉しいですね。

◆2025年一歩踏み出したいこと


――今作の歌詞は、『MFゴースト』の登場人物の恋模様を描いています。まだ付き合う前の、関係性が変わるのが怖いもどかしい様子の描写もありますが、好きなフレーズはありますか?

いろいろあるんですけど……。〈恋を知るほど 君を知るほど 近づけない〉は甘酸っぱいですよね。

あとは、Bメロの〈Side Aが始まれば 今日も君の隣 Side Bの終わりまで ただ此処にいたいの〉という、カセットテープをモチーフにした言葉。私は年上の従兄弟の影響でカセットテープに触れたことがあったので、アナログの懐かしいエモい雰囲気が出ていて好きな歌詞ですね。

――「Stereo Sunset (Prod. AmPm)」のカーステレオに続き、カセットテープをモチーフにした歌詞や演出が多いです。

MVの冒頭では映像がくるくる回る編集になっていて、カセットテープを意識した演出がおしゃれだなって思います。

小道具としてカセットコンポを持ってるんですけど、すごくかわいいんですよ。ファンの方のなかには、MVが公開されてすぐに「同じのを買った」という人がいたので、特定が早くて驚きました(笑)。


――好きな相手に対して一歩踏み出せない気持ちを歌った歌詞ですが、茜屋さんは一歩踏み出せずにいることはありますか?

心理カウンセラーの資格を取りたいと思って調べたことがあるんですが、まだ手を出せていないですね。自分は心があまり強くないので、自分のために役立ちそうなのと、お芝居のために役立つこともあるかな〜と、ずっと興味があって。来年は、ついに資格取得サイトで資料請求してみようかなと思います。

――MVの撮影場所は六本木ですかね? 駅からもほど近い街中なので、関東近郊に住んでいるファンは、わりと訪れやすい気がします。

SNSをみてたら、すでに聖地巡礼してくれた人もたくさんいるみたいです。カセットコンポに続いて、みんな特定が早すぎる(笑)。

◆元・乃木坂46の生駒ちゃんとびっくりするくらい同郷


――最後に、個人の活動では舞台出演もあり、梅棒18th“RE”SHOW『シャッター・ガイ』では今人気急上昇中のコントユニット・ダウ90000のメンバー、吉原怜那さんと共演していました。

れなちょと共演、ありましたね〜。すごく楽しかったです! そういえば、ダウの園田(祥太)さんが私のファンだったらしくて、公演を見に来てくれたみたいで。ダウ90000の世界観、すごく好きなので、客演とかで入れるならぜひ入ってみたいです(笑)。

――梅棒19th公演で茜屋さんと同様にゲストキャストを務めた元乃木坂46の生駒里奈さんが同郷とのことで、お話しする機会があったみたいですね。

昔からいつかお話ししてみたいと思っていて、舞台の現場でご挨拶してみたら、びっくりするくらい同郷だったんです。芸能界に入る前、出会う前から存在は知ってましたし、絶対にニアミスしてましたよねってレベル(笑)。もし今後共演する機会があったら、地元トークで盛り上がりたいと思います!

【茜屋日海夏プロフィール】


あかねやひみか●1994年、秋田県生まれ。女優として舞台や映画で芝居の仕事もこなしつつ、YouTuberとして『ひみちゃんねる』も運営。TVアニメ『MFゴースト 2nd Season』エンディングテーマ「Side U (Prod. AmPm)」が発売中

<取材・文/森ユースケ 撮影/尾藤能暢>