コーヒーの未来が危ない!「コーヒー2050年問題」を考える

このままだと将来コーヒーが飲めなくなるかも? 最近ちらほらと私たちの耳に届き始めてきた「コーヒー2050年問題」。そこでハワイ・コナにあるUCCの直営農園からの声と共に、世界的にも注目が集まるコーヒーを巡る課題への理解を深め、今、私たちにできることを考えてみたい。

「コーヒー2050年問題」って何?

コーヒーの木は、熱帯の中でも標高が高くて涼しく、降水量も確保できる土地で育つ植物。ところが、地球温暖化が続くと、栽培に適した土地が2050年までに半減するといわれている。それが「コーヒー2050年問題」の発端だ。


良質なコーヒーの木を栽培するには、標高と昼夜の寒暖差、適度な降雨量、水はけがよく肥沃(ひよく)な土壌が必須

栽培の好条件がそろうのは、赤道をはさんで北緯25度から南緯25度にある「コーヒーベルト」と呼ばれるエリア。しかし、コーヒーの木は寒さに弱く、強すぎる日光からはダメージを受け、乾燥が大敵ながら水はけのいい土壌も必要と、生育にはかなり繊細な条件が必要だ。国際調査機関のワールド・コーヒー・リサーチによると、地球温暖化による気候変動により、雨季と乾季の差がなくなり始めるエリアも出てきており、気温や湿度の上昇だけでなく、昼夜の寒暖差にも乱れが起こり、干ばつやサビ病や病害虫などの発生といった問題が起き始めているという。


CI Japan

特に世界のコーヒー豆生産量の約6割を占め、“コーヒーの王様”ブルーマウンテンなどで知られるアラビカ種が、病害虫に弱く生育が難しいため、この影響を強く受けている。アラビカ種に適した土地は2050年までに75%も失われると予想されている。

収穫量の減少や品質低下と同時に、コーヒー消費量が増加の一途をたどることで、価格競争は火に油を注ぐ状態。コーヒー豆の国際取引価格が高騰するも、農家が取引額を決められない場合もあり、さらに、栽培に必要な農薬の値上がりなども相まって、経営難と貧困により離農する農家も増えているそうだ。


CI Japan

最近では中国などのアジア地域での消費も右肩上がりで、需給バランス崩れてきていることで、高騰するコーヒーの価格の上昇は加速している。世界5大陸70か国以上で約2500万世帯が従事するコーヒーの生産現場に始まり、コーヒーを販売するショップ、また消費者にも影響が及んでいるのが現状だ。

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ハワイ島・コナの溶岩台地に広がる
「UCCハワイ」で現状を聞く

ハワイ諸島で⼀番⼤きな島、ハワイ島の⻄部にあるコナ地区でアラビカ種のコーヒーを栽培するUCCの直営農園「UCCハワイコナ・エステート」。マウナロア⼭とフアラライ⼭の斜⾯に位置するこの地区は、肥沃な⽕⼭性の⼟壌と昼夜で寒暖の差があることから、良質のコーヒー栽培に⽋かせない条件が揃った農園地帯となっている。


コーヒー栽培に格好の地。コナの街と美しい海を望む広⼤な敷地が広がる

コーヒーの力で世界を変える。そんなUCCの考えが詰まった農園は広さ40エーカー(東京ドーム3.5個分)あり、2万本の木が植えられている。ここで、農事調査室のメンバーを中心に、気候変動に着目した環境負荷の少ないサステナブルな農園の実現に向け、様々な研究に取り組んでいる。ゼネラルマネージャーの小林司さんによると、この5年で「コーヒーの2050年問題」に対処するべくさらに研究と実施を深めているという。2022年には日本の企業で初となる「GLOBALG.A.P.認証(食品安全、労働環境、環境保全に配慮した持続的な生産活動を実践する優良企業に与えられる国際基準)」も取得した。

小林さんは「火山土壌は、上質なコーヒーの木が育つために最適な土壌と言われていて、コナコーヒーと並び3大コーヒーと言われるブルーマウンテンとキリマンジャロも、こうした土壌なくしては語れません。ハワイ島の溶岩台地には、コーヒーの木に必要な栄養分がたくさん含まれています。とはいえ、斜面にある畑なので、斜面の上と下では200mの標高差があり、栄養素の偏りが発生するなど、エリア毎にその状況は異なります。そこで、ハワイ大学に土壌の分析を依頼し、肥料の量や種類などデータを基に慎重に生育を進めています」