コーヒーの未来が危ない!「コーヒー2050年問題」を考える

このままだと将来コーヒーが飲めなくなるかも? 最近ちらほらと私たちの耳に届き始めてきた「コーヒー2050年問題」。そこでハワイ・コナにあるUCCの直営農園からの声と共に、世界的にも注目が集まるコーヒーを巡る課題への理解を深め、今、私たちにできることを考えてみたい。

小さな一歩を重ねた長期計画で20年後を見据える

開園以来35年がたつコーヒーの木もある「UCCハワイコナコーヒー・エステート」では、4年のサイクルでコーヒーの木の計画的な植え替えも行う。古木が良いとされる植物もあるが、コーヒーの場合は4年をめどに、生育の勢いが落ちて弱り、収穫量が減っていくのが理由だ。

「木々の老齢化も課題の一つ。木を若返らせるためのカットバックという剪定(せんてい)作業や、毎年順番に古い木を抜き、苗木への植え替えを定期的に進めています。将来的に農業を持続できない可能性があるからこそ、病気に負けない、健康な木を育てられるかに注力しているんです。長期にわたる計画ですが、将来にわたり安定した農業とコーヒー豆の生産が可能になると考えています。また溶岩台地の特性として、30センチも掘ると溶岩だらけ。木の生育のため今後20〜30年後を見据えて少しずつ岩を取り除く、気の遠くなるような作業を続けています」


収穫したコーヒーチェリーの一部を次世代のために苗木として育てている

ちなみに、農業によって排出される温室効果ガスなどサステナビリティーの観点から、循環型の農園管理にも注力する。例えば、更新のために引き抜いた木は農園内のチッパーで砕き、コーヒー豆を取り出した後の果肉は(チェリースキン)とともに土と混ぜ込むことで堆肥化。コーヒーの木を無駄なく再利用することで、結果、有機物がふんだんに含まれた栄養たっぷりの生育環境を作り上げている。

「土壌には、短期的に良い化学肥料も長期的にゆっくり効いていく有機肥料も大事。ちなみに洗浄など生産工程で使用した水は、敷地内で再処理を行って適切に管理しています」

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毎年の収穫作業にも繊細なこだわりを


コーヒーチェリーは、他のフルーツと違って同じタイミングで熟さない

「コーヒーチェリーは一度に熟さないため、緑色や黄色のチェリーが赤くなるタイミングを見計らうのも骨の折れる作業です。過度に成熟しチェリーがしぼんでしまうため、定期的に農園内(東京ドーム3.5個分!)を何周もして、赤くなったものだけを見極めて収穫を行なっています」


この小さな黒い点が虫食いのサイン。炎天下の途方もない作業の中、これを見極めながら収穫作業を進める

またコナコーヒーと呼べるグレードの豆を収穫するには、豆のサイズと欠点数(虫食いなど品質を損なう欠点豆の割合)も配慮しなければいけない。

「虫食いの原因はCBB(コーヒーベリーボーラー)と呼ばれる虫によるものです。ハワイでは長い間CBBの被害を免れていたのですが、2010年に初めて発見されて以来、多くの農家がCBBに苦しめられてきました。コーヒーの木になるチェリーを一つずつ確認し、広い農園で作業を行き渡らせるのは想像の何倍も大変な作業です。被害の大きいエリアにあたると1日で全体の1%ほどしか進まない日もあり、途方もない作業なんです。そこで、経験に基づく高基準を持っている収穫者(ピッカー)を国内外から呼び寄せ、質の高い赤いチェリーだけを短時間でたくさん摘めるようにしています。高スキルのピッカーは他農園とも取り合いになるので、できるだけ条件が良いよう、敷地内に宿泊施設を設けるなどして受け入れ体制も整えています」