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 2030年のFIFAワールドカップ(W杯)は、モロッコ、ポルトガル、スペインの共催が決定した。100周年を記念して南アメリカでも試合が行われ、3大陸6ヶ国の大会となるが、人権団体からは懸念の声も上がる。

◆FIFA W杯100周年

 4年に1度開催されるサッカーのW杯。次回の2026年はアメリカ、メキシコ、カナダの北米3ヶ国で開催されるが、その次の2030年はFIFA W杯100周年を記念し、3大陸6ヶ国で開催されることが決定した。メインの開催国は、北アフリカのモロッコ、南欧のポルトガルとスペインの3ヶ国からなる連合。そして南アメリカのウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイでも100周年記念のイベントと3試合が開催される。

 1930年に初めてFIFA W杯が開催されたのがウルグアイ。参加したのは、アルゼンチン、ベルギー、ボリビア、ブラジル、チリ、フランス、メキシコ、パラグアイ、ペルー、ルーマニア、アメリカ、ウルグアイ、ユーゴスラビアの13ヶ国のみ。全試合が首都のモンテビデオで開催された。優勝は開催国のウルグアイ。アルゼンチン、アメリカが続いた。

 2030年に開催されるW杯における南アメリカでの3試合のうちの最初の試合は、FIFA W杯が始まったモンテビデオにある試合会場、エスタディオ・センテナリオで行われる。48ヶ国の代表がトップの座を争う予定だ。

◆インフラ開発への期待、人権リスクも

 メインの開催国となるモロッコ、スペイン、ポルトガルの連合は「ヤラ・ヴァモス(Yalla Vamos!)」のスローガンのもと団結。隣接国で文化的な共通点があるとはいえ、欧州大陸とアフリカ大陸をまたがったユニークな連合に注目が集まる。

 モロッコは、2010年の南アフリカに続き、アフリカ大陸では2ヶ国目の開催国となる。男子チームのFIFAランキングもアフリカではトップとなる14位。2015年6月時点では92位までランクを落としていたが、その後右肩上がりでパフォーマンスを上げている。

 モロッコ政府はこれを機にインフラ開発を進める狙いだ。アフリカ開発銀行は2030年のW杯に向けた交通インフラ開発のために、モロッコに対して6.5億ドルの融資を行う計画を発表した。カサブランカの近く、ベンスリマンにおける大型スタジアムの新設計画もある。

 一方、人権擁護団体のアムネスティ・インターナショナルは、2030年および2034年のW杯の開催国の招致プロセスをやめるべきであると訴えた。2030年のメインの開催国であるモロッコ、スペイン、ポルトガルの3ヶ国に関しては「群衆に対する警察の過剰な武力行使、ゴム弾の不適切な使用、表現と集会の自由の制限、サッカー界における人種差別的、性差別的、同性愛嫌悪的虐待の存続など」といった人権侵害のリスクがあると指摘。

 また、2034年の唯一の開催候補国であるサウジアラビアに関しても、移民労働者を含む労働者の扱い、言論の自由、女性・LGBTQ差別などの観点において、人権リスクがあると指摘している。今月11日の発表では、2030年の開催国に加え、2034年の開催国がサウジアラビアに決定したと伝えられた。これに関しては、サウジアラビアとFIFAの癒着があったのではないかという懐疑的な見方もある。

 FIFA W杯100周年が、本当の団結と豊かさをもたらすためには、開催国の準備における透明性の担保、倫理的なプロセスの設定、そして人権の擁護が求められる。