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アマゾン、メタなどのテック企業、オープンAIのサム・アルトマンなどがトランプ就任基金への寄付を相次いで表明。その狙いとは。
◆大統領就任基金とは
大統領就任基金は、1月に行われる就任式などのイベントを実施するための資金。大統領候補者は選挙前に、選挙日と就任式の間の期間におけるプロセスについて定められた大統領政権移行法に署名する必要があるが、トランプ陣営は定められた期日から2ヶ月も遅れて署名した。この法律には、倫理規定も盛り込まれており、利益相反についても開示することが求められている。署名することで、720万ドル(約11億円)の移行予算を確保することができるが、一方で、個別の寄付に関しては上限5000ドル(約77万円)までとされている。
トランプ陣営は、署名を遅らせたことで、720万ドルの予算を確保しない代わりに、寄付額の上限や寄付者の開示などといった条件から逃れることができた。マサチューセッツ州選出上院議員のエリザベス・ウォーレンは、「政権移行資金を民間の寄付に頼るということは、納税者の負担を減らす振りをしながら私腹を肥やすためであり、コネのあるトランプ内部関係者の策略にすぎない」とコメントした(ニューズウィーク)。
◆テック企業関係者の狙いとは
今月、ジェフ・ベゾスのアマゾン、マーク・ザッカーバーグのメタ、そしてオープンAIのサム・アルトマンが相次いで、トランプ就任基金への100万ドル(約1.5億円)の寄付を表明。
すでに寄付を行ったことが伝えられているメタの最高経営責任者(CEO)のザッカーバーグは11月にトランプ次期大統領が所有するリゾートクラブ「マール・ア・ラーゴ」を訪問し、夕食をともにしたことも報じられている。メタは、ジョー・バイデン大統領の就任基金や、2016年のトランプ大統領の就任基金には寄付を行っていないとみられている。ザッカーバーグとトランプの関係は、これまでは決して近くはなかった。2017年、トランプはフェイスブックを「反トランプ」だと批判し、2021年1月の連邦議会襲撃事件を経て、トランプ前大統領のフェイスブックとインスタグラムのアカウントを一時停止にした。しかし、今回の選挙戦では関係が近づいたようだ。
企業ではなく、個人として寄付を約束したオープンAIのサム・アルトマンは「トランプ大統領はアメリカをAIの時代へと導く」としたうえで、大統領の努力をサポートする意思を表明した。
就任基金への寄付は、次期政権とうまくやっていこうとする大企業にとっては、ごく普通のことだとガーディアンは報じる。今回100万ドルの寄付を表明したアマゾンは、第1次トランプ政権の就任基金には約5.7万ドル(現在のレートで約880万円)を寄付した。バイデン政権は、テック企業からの寄付を受け取らない方針であったとのことだ。
アマゾン会長のベゾスが所有するワシントン・ポストは、以前はトランプの批判の対象であったが、今回の選挙戦では同紙が、大統領候補者(ハリス)の支持を表明しないと判断したことは、トランプを怒らせないためであったと見られている。
シリコンバレーの専門家はテック企業の狙いについて、反対の声を上げても何も得るものはないが、大々的に支持することで何か得られるのではないかという目論見があるのではないかと分析する。イーロン・マスクがトランプ政権のアドバイザーを務めるという点も、ホワイトハウスとのパイプだとも考えられているようだ。