株式の種類や譲渡制限の有無、株券の発行方針は、設立当初だけでなく会社の将来的な成長にも影響を及ぼします。定款作成に必要な知識として、「普通株式と種類株式の選択」「株式の譲渡制限」「株券発行の有無」について詳しく見ていきましょう。加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。
普通株式と種類株式
【普通株式】
普通株式は、最も一般的な株式の形態で、すべての株主が平等に権利を持つ仕組みです。通常、設立時には普通株式のみが発行されるケースが多く、シンプルな株主構成を維持したい場合に適しています。
〈普通株式の特徴〉
・議決権:1株につき1票の議決権が付与される。
・配当権:配当金や残余財産の分配が平等に行われる。
【種類株式】
種類株式は、特定の条件や権利を付与した株式です。種類株式を導入することで、投資家への特典を設定したり、経営権の安定化を図ったりすることができます。
〈種類株式の主な種類〉
1.優先株式
普通株式よりも優先的に配当や残余財産分配を受けられます。
2.議決権制限株式
一部またはすべての議決権を制限し、経営権の集中を図ります。
3.取得条項付き株式
会社が特定の条件下で株式を取得できます。
4.拒否権付株式
重要事項に対して拒否権を行使できる権利を付与します。
〈種類株式の活用例〉
・ベンチャー企業が投資家に優先株式を発行し、配当を優遇。
・ファミリービジネスで議決権制限株式を活用し、経営権を守る。
【普通株式と種類株式の選択基準】
・シンプルな構成を望む場合:普通株式のみを発行。
・投資家や外部資本を取り入れる場合:種類株式を活用して柔軟な資本政策を実現。
種類株式は活用次第で大きなメリットを生む一方、内容を細かく定款に記載する必要があるため、運用の負担が増加します。自社の状況に応じて適切な選択を行いましょう。
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株式の譲渡制限
譲渡制限株式は、株式を第三者に譲渡する際に会社の承認を要する仕組みです。中小企業やファミリービジネスでは、経営権を安定させるためにほとんどの場合(日本の会社の9割以上)で譲渡制限を設けます。
【譲渡制限を設けるメリット】
1.経営権の安定化
会社の方針と異なる第三者が株主になるリスクを防げます。
2.株主構成の管理
特定の株主構成を維持しやすくなります。
3.取引先からの信頼確保
経営が安定していることを示せます。
【譲渡制限の定款記載例】
「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。」
譲渡制限はすべての株式に設定することも可能ですが、特定の種類株式にのみ適用することもできます。
【譲渡制限の注意点】
・株式の流動性が低下する
投資家としては株式の売買がしにくくなります。
・柔軟な運用を確保
必要に応じて譲渡制限を緩和する規定を設けるとよいでしょう。