家賃2万円のボロアパート暮らしでも幸せな理由
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心穏やかに、自分のために過ごしたい。私の願いはただそれだけだった。
贅沢な日々はいらない。特別な出来事もいらない。心の豊かさと誰にも邪魔をされない自由があれば、それでよかった。キラキラ輝く宝飾品も、おしゃれな服も、上司からの評価も、親からの称賛も、シャンパンも、イケメンも、別にいらなかった。
今の自分の生活が好きだ。
誰かの目を気にすることなく、好きに生きている。起きる時間も、食べるものも、日々の行動も、誰だって私を縛ることはできない。お金はたくさん使えないけれど、逆に言えば、お金さえ使わなければ、いつまでもこの生活を続けることができる。
もちろん、もっとお金があれば生活は快適だろう。私の家にはエアコンがない。
夏はうだるように暑い。窓を開けて、扇風機をつけて、どこかでもらってきた保冷剤を使ったり、凍らせたペットボトルを部屋中に置いたりして暑さを凌いでいる。
冬は室内でも凍えてしまう。でも、寒さの方はまだマシだ。たくさん布団を重ねて、湯たんぽを用意すれば、寝床だけは最高に暖かい幸せな空間になる。
駅から20分も歩く、家賃2万円(共益費込)のボロアパートの部屋は狭いし、お風呂だってユニットバスな上にすごく小さい。
それでも私は、すごく幸せだった。親は私のことを心配するし、かつての同級生や同僚が「彼女は変になった」などと言うけれど、それももう気にならなくなった。私は、私の人生を取り戻したのだ。
私がとりわけ好きな時間は、散歩をしているときだ。ゆっくりと歩くだけで、色々なことを知ることができる。道端に咲いた花をキレイだと思ったら、立ち止まって、よく愛でて、それがどんな花なのか調べてみる。そんなことをしているだけで、時間なんてすぐに経ってしまう。
道端に咲いている花を見るために立ち止まる生活。
それこそが、私の求めているものだった。昔の自分であれば、そんなことは時間の無駄だと感じていただろう。というか、花が咲いていることにすら気づかなかったかもしれない。でも私は、こんな時間が本当に豊かだと感じる。
何もない暮らしではある。でも、ただただ自由がある。私は、それが何よりも嬉しい。
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これこそ「仕事を頑張らずにFIREする」のひとつの答え
「どう思いましたか?」
自室のソファで目が覚めると、小鉄が僕の顔を覗き込んでいた。以前と違い、穏やかな気持ちで目覚めた僕は、伸びをしてから言葉を整理して、小鉄に話し始めた。
「しっかりとした、理子さんの〝軸〟みたいなものを感じたな。自分はこれが幸せだっていうことが、すごく明確だったね。でも……」
「でも?」
「彼女を否定したいわけじゃないけれど、やっぱあの生活を一生続けるのは僕には無理だと思う。ほしいものだって色々あるし、旅行だって行きたいし」
「そうでしょうね。短期間ならまだしも、あの生活を何年も続けられる人は少ないです。羨ましいと思った人でも、実際に行えば1年も持たないでしょう。過去の飼い主でも同じように隠居生活のようなものを目指そうとして、失敗した方もたくさんいらっしゃいました」
「そうだよなぁ」
「でも、これが〝仕事を頑張らずにFIREする〟のひとつの答え、〝極端な節約〟です。FIREの状態が〝資産所得>生活費〟である以上、生活費を極端に下げることで、実現の可能性は上がります」
株式会社HF 代表取締役
ヒトデ
※本記事は『1万回生きたネコが教えてくれた 幸せなFIRE』(徳間書店)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。