無人島にたったひとりで暮らす男性が「東京で働いていた頃のほうが孤独だった」と感じるワケ

「消極的孤独」と「積極的孤独」。孤独にも種類があることは意外と知られていない。しかし、常に“誰かの”物差しが横にある現代人にとって「ひとりになる」ことこそ、豊かな人生には欠かせない。達人たちが孤独から受け取るものとは、一体何か――?

◆自由な孤島暮らしで気づいた自分が本当にやりたいこと

「精神的には東京で働いていた頃のほうが孤独だったと思います」

喧騒のなかで大勢の人に囲まれているよりも、物理的に完全にひとりになったことで、一つ一つの繋がりが濃密になった。そう振り返るのは岡山県倉敷市の無人島である松島で、たったひとりで暮らす脇村拓嗣氏だ。

前職は東京のIT企業だが、25歳の時に倉敷市の地域おこし協力隊員に。任期中に関わった松島に魅了され、’22年春から島での生活を始めた。

「周囲1.2㎞の松島は、最盛期には約100人が暮らしていましたが、最後の島民が島を離れたのは’21年。電気や水道といったライフラインも残っていました。

最初は寂しさもあり、眠れない日が半年ほど続いたんですが、移住生活を助けてくれる人たちと出会うなかで、ひとりで過ごす時間が長いからこそ、人と会う時間がより楽しくなって。島ではやることが多すぎて、それどころじゃなかったのもありますけど(苦笑)」

◆試行錯誤の日々

移住後は大工の力を借りながら古民家を再生させ、’23年6月に一棟貸しの貸別荘「マツシマ荘」をオープン。ほかにも漁師としての顔を持つが、冬場は波が高く海に出られないことも。そういう日は島にこもって作業している。

「試行錯誤の日々ですが、周りの方々に支えてもらっています。先輩漁師の方々は、何げないお喋りの中でネットにも載ってない有益な情報を教えてくれるんです。

島での暮らしは、自由に自分で決められるからこそ、何に時間を使うかをすごく考えるようになりました。実はこういうこと好きだったんだとか、これにやりがいを感じるんだとか、人生のビジョンが見えるようになって。

例えば、ニワトリやヤギを飼ってみたいし、狩猟にも興味がある。やりたいことが山ほどあります(笑)」

ぼっち離島生活を通じて自分を再発見。都会では得られなかった人との繋がりを手に入れたようだ。

◆<ひとり、島で暮らす3つの醍醐味>

① 人間関係が密になる

② 自分のやりたいことがわかる

③ ネットにない生の情報がある

【脇村拓嗣氏】

東京のIT企業に勤めていたが、地域おこし協力隊任期中の’22年に岡山県の無人島・松島に移住。翌年、一棟貸しの古民家別荘「マツシマ荘」を開業

取材・文/週刊SPA!編集部

※12月17日発売の週刊SPA!特集「[中年孤独]の愛し方」より

―[[中年孤独]の愛し方]―